私たちの住む天の川銀河に無数に存在する星々は水素分子を主成分とする冷たい分子ガスが集まることによって誕生しました。分子ガスは電波によって直接見ることができます。我々の研究室ではでは天の川銀河の比較的近傍にある銀河(=近傍銀河)の分子ガスを電波を通して詳細に観測することで、星がどのように誕生するのか解明しようとしています。また、データ科学を応用した、電波望遠鏡が受信したデータの解析に関する研究も行なっています
銀河の中で、いつ・どこで分子雲から星が生まれるのか、そのプロセスにはまだ多くの謎が残されています。天の川銀河には中心・渦巻腕・棒状構造といった構造があり、これらがガスの運動に影響を与えることで、星が生まれやすい場所と生まれにくい場所を作り出していると考えられています。私たちは、天の川銀河と同じタイプの棒渦巻銀河を対象に、野辺山45m望遠鏡やALMA望遠鏡を用いて分子ガスを観測し、銀河の構造が星形成に与える影響を調べています。最近では過去の観測データを統計的に解析し、棒部で星形成が抑制されていることを明らかにしました。
e.g. Maeda et al. 2025, ApJ, 981, 156、Maeda et al. 2023, ApJ, 943, 7
星形成活動を求めた17個の棒渦巻銀河の分子ガス分布の画像。等高線は星形成活動の強さを示しています。
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銀河同士の衝突は、銀河が進化していく上で重要なプロセスです。衝突が星形成を促進するのか抑制するのか、その仕組みはまだよくわかっていません。私たちは野辺山45m望遠鏡やALMA望遠鏡を用いて衝突銀河の分子ガス観測に取り組んでおり、最近ではコンパクト銀河群にも着目しています。その一例「ステファンの五つ子」銀河群をALMA望遠鏡で観測した結果、衝撃波構造の周辺では星が活発に生まれる一方、その近くの領域では星の生まれる効率が渦巻銀河の1/100程度しかなく、星の生まれやすさに大きな違いがあることがわかりました。
e.g. Yamamoto et al. 2026, ApJ, 1005, 114、Maeda et al. 2025, ApJ, 990, 221
(左)「ステファンの五つ子」銀河群(①~⑤)の可視光画像に、一酸化炭素分子が放つ電波を等高線(オレンジ色)で重ねたもの。等高線が高い場所ほど電波が強く、多くの分子ガスが存在している。
(右)一酸化炭素分子の電波が放つ周波数情報から推定した、分子ガスの三次元空間構造を疑似カラーで示したもの。色が赤い場所で最も分子ガスが多い。地球から見て奥行方向に対しても、広く分子ガスが分布している。
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電波望遠鏡が受信しているのは、「天体からの電波信号」と「地球の大気が放つ電波(大気放射)」が混ざり合ったものです。大気放射は天体信号よりずっと明るく刻々と変化するため、従来のON-OFF観測でも取りきれない「うねり」のようなムラが残ることがありました。そこで私たちは、天体を短い時間間隔で撮り続けて時系列データを取得し、大気放射などの「共通して現れるパターン(相関雑音)」を行列分解によって取り除く、データサイエンス的手法に取り組んでいます。これにより、従来よりも高い感度で天体からの電波信号を捉えることを目指しています。
(左)従来法(ON-OFF法)による衝突銀河の分子ガス解析結果。うねりが強く、天体信号がわかりにくい。
(右)行列分解を用いた新手法による同データの解析結果。うねりが消え、天体信号がはっきりと見える。