過去のセミナー(2023年度)

2024年1月19日(金)16:35〜18:05(6号館6111教室)
梁 正樹埼玉大学
消えた反物質の謎:ニュートリノで迫る物質の起源

 この宇宙に反物質が存在しないことは現代物理学における重要なテーマのひとつであり、ニュートリノ物理はさまざまな側面から宇宙論的に重要な役割を果たす。本講演では、反物質やニュートリノの基本的な性質をレビューしながら、ニュートリノによる物質生成の可能性を議論する。最後に、この物質生成と大統一理論との非整合性に対する最近の研究を紹介する。

梁正樹.pdf
240119梁_東女セミナー.pdf

2023年12月15日(金)16:35〜18:05(6号館6111教室)
縣 秀彦国立天文台/ 総合研究大学院大学
基礎科学と平和外交について―国際天文学連合の10年戦略を読み解く―

国際天文学連合 (IAU:InternationalAstronomicalUnion) は、国際協力を通じて天文学の発展を図ることを目的として、1919年に設立された非政府の世界組織である。日本は1920年に国家会員として加盟し、個人会員数も世界第3位である。IAUは2009年の世界天文年以降、天文学者向けの活動から社会への貢献も視野に入れた成長戦略に舵を切り、国際協調、インクルージョン、発展や教育などの項目を目標に掲げた10年戦略を実行し、SDGsや世界平和にも寄与しようとしている。これらの活動を紹介し、基礎科学における国際協調の重要性など今日の国際社会安定のため果たしうる役割について議論する。

縣秀彦.pdf
東京女子大(縣)20231215.pdf

2023年11月17日(金)16:35〜18:05(6号館6111教室)
仁尾 真紀子理化学研究所 仁科加速器科学研究センター
電子の磁石としての強さを決めて、物理法則を検証する

2021年に引き続き、2023年8月に米国フェルミ国立研究所からミュオン粒子の異常磁気能率(g-2) 測定値の続報が公表されました。この値は、2006年の米国ブルックヘブン国立研究所の測定値と矛盾がなく、不確かさは半分の0.20 ppm (10^{-6}) までになりました。2021年発表の素粒子標準模型に基づく世界的な合意としての理論値とは5σ以上離れていますが、新物理の兆候とは言えません。理論値のうち、ハドロンの寄与について多くの新たな進展があり、理論値自体が混沌としているためです。

 一番軽い荷電レプトンである電子のg-2も、2021年に新測定値が公表され、0.12 ppb (10^{-9}) の精度にまで到達しました。理論値を求めるためには、これと同精度の微細構造定数αが必要ですが、2018年に0.20 ppb、2020年に0.081 ppb の値がそれぞれ得られ、電子g-2でも新物理を探索できる可能性が高まっています。

 これらのレプトンg-2での精密検証の現状を紹介するとともに、検証を可能にしている量子電磁気学(QED)計算における私たちの仕事と展望についてお話させていただきます。

仁尾真紀子.pdf
仁尾さん2023.pdf

2023年10月20日(金)16:35〜18:05(6号館6115教室)
坂東 昌子(愛知大・NPO法人あいんしゅたいん)
21世紀の科学者像と女性の役割−人生を振り返って

私が「知的人材ネットワーク あいんしゅたいん」というNPO法人を佐藤文隆さん(大学以来の同級生)と「2人で140歳だなあ」といいながら立ち上げて、もう10年以上になります。NPO事務所は、京都大学に近接する民家で、すぐ外を歩く人と笑顔で挨拶しています。狭いですが、おしゃべりの好きな仲間がよく集まります。なんといっても面白いのは、おしゃべりから思わぬ発展があり、いろいろな活動をする場になってきたことです。未来の夢を語り、それが行動になるというのは、ひょっとしたら女たちの特性かも知れませんね。高年齢層(私が一番年寄りか!)と今まさに子育て中の世代、それにNPOで企画している親子理科実験教室のアシスタントをしてくれた大学院生や学生、それに今ではこの実験教室の卒業生も一緒におしゃべりする機会が増えました。そのうえ近所の子供たちを、お母様が連れてきて「原子のことを教えてください」と10人ほどきたりしています。もちろん、時には男性もやってきますが。 私は、大阪の商人の娘で、当時は「女が大学にいったら嫁の貰い手がなくなる」と言われた時代でした。高校の時、先生に将来の相談をしたら「今の社会だけ見ていたらあかん。社会は変わっていくんだからあなたたちが変えていけばいい」と励ましてくれました。また小学校から同級生だった夫が、一緒に大学に行こうといってくれました。こうして大学に行きましたが、大学院に行くときも、父から「もう十分勉強したから満足やろ」とか言われましたが、母は「行きたかったら応援する」といつも励ましてくれました。今の皆さんから見ると考えられないかもしれませんねでも、父からは「自分は粗末な生活をしても周りを助けるのが大阪商人大阪商人の魂だ」というのがとても好きでしたけど。 確かに、女性はなかなか男性と同等の地位にはなれなかったけど、へこたれないで、自分の環境の中で最善を尽くして周りを変えているたくさんの女性たちがいます。社会はじっとしていない、変えられるものだという経験をたくさんしました。そんな私の経験をお話ししたいと思います。そして、男も女も生き生きと暮らせる時代を作っていけるよう、皆さんも元気で頑張ってほしい、そんなメッセージが届けられたらうれしいです。
坂東昌子.pdf
坂東さん東京女子大F.pdf

2023年7月7日(金)16:35〜18:05(9号館9204教室)
Elisa G. M. Ferreira(Kavli IPMU)
Title: How did the universe begin?

Abstract: We know we live in a universe that is expanding. As time passes by and the universe expands, it gets bigger, colder, and less dense. This means that in the past the universe was smaller, hotter, and denser. All we see and are today came from this initial stage. The model that describes the evolution of our universe from this initial hot and dense phase is called the Big Bang model and compiles our understanding of our universe. However, this initial stage of the evolution of the universe is still a mystery to us and cosmologists have many theories to describe it! In this talk, we are going to discuss the early universe and the models developed to describe the initial evolution of our universe. We are going to discuss the main paradigm, called inflation, and explain how it gives us the universe we observe today. We are also going to discuss alternative models of the evolution of the early universe like bouncing cosmologies, where our universe did not have a beginning but came from a phase of contraction before our current expanding phase, and emerging universes. We are going to discuss the progress and efforts in cosmology to constrain these models and unravel the mystery of the beginning of our universe.
Elisa G. M. Ferreira.pdf
EarlyUniverse_TokyoWomen_ElisaFerreira_final_compressed.pdf

2023年6月23日(金)16:35〜18:05(9号館9204教室)
長尾桂子(岡山理科大)
加速された暗黒物質の特徴的なシグナルの検出とそこから見える物理

MeVスケールよりも軽いダークマター粒子は、直接検出実験では検証が難しいと考えられてきた。しかし近年、宇宙線との散乱による加速を考えることで、これまで考えられてきたよりも軽い質量領域まで検証できることが明らかになってきた。加速された軽い暗黒物質は銀河系の中心方向から地球に到来するため、到来方向の検出によって加速された暗黒物質に特徴的なシグナルを捉えられると期待できる。本研究では、方向検出が可能な暗黒物質直接検出実験を利用した方向的な特徴の検証と、それから示唆される暗黒物質の物理について議論する。
長尾桂子.pdf
20230623nagao.pdf

2023年5月26日(金)16:35〜18:05(9号館9204教室)
Maura E. Ramirez-Quezada(東京大学)
Compact Stars: a window to new physics

Due to their high densities, compact stars present themselves as ideal candidates for studying novel interactions in the universe. The core of such stars exists under extreme conditions that remain unattainable through experiments conducted on Earth. In this talk, I will discuss two means of investigating new physics through the observation of compact stars, namely: The capture of novel particles at the centre of compact stars, and the production of novel particles at the centre of compact stars. Additionally, we shall provide a concise overview of the current status and future prospects of employing compact stars for the purpose of exploring new physics.
Maura E. Ramirez-Quezada.pdf
MERQ_SeminarTWCU.pdf

2023年5月19日(金)16:35〜18:05 (9号館9204教室)
木邑真理子(理化学研究所)
ブラックホールはなぜ光る?突発天体と降着円盤

宇宙には、ある日突然明るくなる突発天体が数多く存在する。ブラックホール・中性子星・白色矮星といったコンパクト天体周囲の降着円盤は、ガスが持つ重力エネルギーを大量の光や噴出流として効率良く開放する、あらゆる突発天体の中心エンジンである。降着円盤の研究は、コンパクト天体と普通の星から成る連星系で進んできた。しかし、近年の時間軸天文学の発達により、シンプルな理論モデルでは説明できない多様な突発現象が次々と観測され始め、それらを統一的に説明できるモデルの構築が求められている。本講演では、コンパクト天体へのガス降着がどのようにして大量の放射エネルギーを生み出すかを解説し、大統一モデルの構築に向けた、多波長観測・数値シミュレーションによる最新の研究を紹介する。
木邑真理子.pdf
seminar230519.pdf