過去のセミナー(2022年度)
2023年1月12日(木)11:30〜12:30(9号館)9102教室
伊藤悦子(理化学研究所)
量子の世界を計算する―古典計算機と量子計算機を使って―
2022年12月12日(水)16:35~18:05(9号館)9201教室
吉村太彦(東京大)
宇宙の進化はどこまで解明されたか
2022年12月15日(木)11:30〜12:30(24号館)24201教室
竹内万記(神戸大)
標準模型の謎と余剰次元模型
2022年12月8日(木)16:35〜18:05(9号館)9205教室
田中今日子(東北大)
系外惑星の発見と宇宙塵の生成から惑星形成への進化
2022年12月1日(木)11:30〜12:30(24号館)24201教室
広島渚(富山大)
暗黒物質の世界
2022年11月24日(木)16:35〜18:05
新穂みちる(お茶の水女子大・東京工業大)
ニュートリノ観測実験JUNOを用いた暗黒物質の探索
2022年11月17日(木)16:35〜18:05
山本恵(広島工大)
フレーバー物理への招待 −新しい素粒子像を探る手がかりとして−
新物理を探る手がかりとして期待されているのが、クォークやレプトンの種類を区別するフレーバーに関わる物理量です。フレーバー物理は新物理による影響を受けやすいことが知られており、フレーバー物理現象の中にその兆候が見出せるのではないかと研究されています。実際、CERN(スイス)やKEK(つくば)などにおける加速器実験で、標準模型から僅かにずれているデータが報告されており、新物理の兆候かもしれないと注目を集めています。
このセミナーでは、フレーバー物理のレビューをはじめ、最近の状況と進展を紹介し、フレーバー物理で探る新物理の可能性についてトークしたいと思います。また、フレーバー対称性に注目した有効理論的アプローチと、検証可能性についても議論したいと思います。
2022年 10月 20日(木)16:35〜18:05
出川智香子(お茶の水女子大)
「新物理抑制メカニズムを持つ複素シングレットスカラー拡張模型における電弱相転移」
2022年 8月 5日(金)14:55〜16:25 川名清晴(Seoul National U., South Korea) 「強い一次相転移と残存物の物理」
2022年 7月 22日(金)14:55~16:25 西脇 健二(Shiv Nadar U., India)「波束量子力学のススメ」
ここで、粒子と粒子の散乱現象に目を向けてみましょう。古典的な粒子・粒子散乱は、勿論古典的な力学で記述され、皆様も馴染み深いと思います。さて、では量子的な粒子・粒子散乱を記述するためには、どの様な波を使用すればよいのでしょうか?量子力学における従来の計算方法では、平面波(単一の振動数を持ち、特定の方向に伝搬する波)として粒子を記述します。これは、粒子の典型的な性質の一部--あるエネルギーを持ち、特定の方向に進む--を満たしていますが、エネルギーが空間のある領域に局在化されているという粒子の重要な性質は満たされていません。即ち、従来の計算は近似計算であり、重要な効果が抜け落ちている可能性があります。
この難点は、粒子を表現する波として空間局在化したもの(波束)を採用すれば、原理的に全て解決されます。本公演では、技術的な詳細を極力廃する形で、波束を利用した量子力学での完全な粒子散乱の記述の意義と、その応用(平面波としては理解困難だが、波束としてなら理解可能な物理現象)に関して、一から詳しくお話させていただきます。
2022年 7月 1日(金)14:55~16:25 郡 和範(KEK)「インフレーション宇宙における原始ブラックホールと2次的重力波の生成とその観測可能性」
理論的に、宇宙のはじまりの時期のインフレーションにより、密度ゆらぎが作られたことが予想されています。インフレーションを引き起こす未発見の素粒子であるインフラトン場の量子ゆらぎが、後の宇宙で密度ゆらぎとなるという理論モデルです。大きなスケールでは、その密度ゆらぎを種としてダークマターと物質が潰れることにより銀河や銀河団が形成されました。それぞれの銀河の中では多くの恒星と恒星系が形成され、現在の宇宙の姿を形作っています。この密度ゆらぎは、宇宙マイクロ波背景放射の3°Kの温度のゆらぎとしても観測されています。
その一方、未検証である小さなスケールの大きな密度ゆらぎを起源として、原始ブラックホール(PBH)と2次的重力波が作られたことが理論的に予言されています。PBHの質量は様々で、軽いものはホーキング放射を出して蒸発して消えてしまいますが、重いものは現在まで残っていてダークマターの候補となります。また、その一部は上記のブラックホール連星を形成する可能性があります。
これらの理由により、小さなスケールでのPBHと重力波の形成の研究は、宇宙誕生の謎を解く鍵となる可能性が指摘されています。その理論モデルを素粒子論と宇宙論の両方の立場からわかりやすく解説します。
2022年 6月 24日(金)14:55~16:25 中村 真(中央大)「ブラックホールで探る非平衡系の相転移」