授業運営において、特にオンデマンド型の授業では、受講生に合わせた授業を実施するために学修状況の把握やフィードバックが重要となります。その一方で、これらの活動は教員の負荷が高く、特に受講生が多い授業で学生へ個別にフィードバックを返すためには多くの時間と労力を要します。
ここでは、学修状況の把握やフィードバックについて、運用負荷が低く教育効果の高い3つの方法を紹介します。
教員が学修状況を直接評価し、フィードバックするのではなく、学生が自身の活動(課題や発表、グループワークなど)を評価する活動を事前・事後学修としてデザインすることで、教員の授業運営の負荷を下げ、教育効果を高めることが期待できます。
「学生が自身の活動を評価する」という難しい活動を円滑に行えるよう配慮すること、自分で評価するところで終わるのではなく、質問や自分なりの考えを教員と共有し、それに対して教員がフィードバックを返すことで教育の質が担保されます。
以下に具体的なステップを示しますが、一例ですので、授業の内容に合わせて調整していただければと思います。
ステップ1 自身の活動を評価するための情報や評価の方法を提供する[教員]
模範となる回答を示す
評価のポイント(例:ルーブリック)を明確に示す
評価のポイントをもとに、模範となる回答を評価して見せ、どのような回答が模範となるのか、どのように評価を行うのかを示す
ステップ2 自身の活動を評価する[学生]
評価のポイントをもとに自身の活動の評価を行います。単純な理解の到達度を測るのではなく、学べている部分、不十分な部分を認識できるよう配慮することが求められます。
また、評価のポイントをもとに、相互に評価しあうペアレビューなども有効です。その場合は、複数名分の評価を行う/受けることで、より妥当な安定した評価が得られます。ペアレビューにより、他者がどのように学んでいるのかを知ることは、自身の学びを振り返る機会を提供することにもなります。
ステップ3 自身の活動の評価を元に質問や感想を作成し、教員と共有する[学生]
活動の評価をもとに、自身の理解状況を振り返り、理解が不十分だと考えるポイント、授業への質問や感想、そして評価の活動自体の難しさや質問について教員へ報告します。
ステップ4 提出された質問や感想に対してフィードバックを行う[教員]
学生の学修状況の評価の元に、個別にまたは全体としてフィードバックを行います。
全体として理解が十分でない部分を授業内で補足したり、教員から高く評価できる考え方やコメントを紹介することでどのような学びが推奨されるかを全体で共有します。
学生が自身の学びを評価することは難しい活動ですが、このような学生が自身で評価する活動を繰り返し行うことで、初めは困難だった自己評価も次第に円滑に行えるようになります。また、このような活動が有効に機能するためには、学生からの「評価の活動自体の難しさや質問」を元に学生の状況に合わせて調整することも有効です。このような自身で学びを評価する活動を繰り返すことで、学生自身が学びをマネージする力が涵養されます。
フィードバックを個別ではなく、相互の学びに寄与する形式で全体へ返すことで、運用負荷が低く、教育効果の高いものにすることができます。
同じ課題に対して、どのような回答のバリエーションがあるのか、どのような回答や考え方が高く評価されるのかなどを学生にとって意味のある形で整理して共有することで、それぞれの活動の共有が自身の学びを振り返るためのリソースとなったり、授業の方針を分かりやすく伝える情報として機能します。
自身が取り組んだ活動についての全体フィードバックは、学生にとって理解しやすい情報ではありますが、個別のフィードバックと異なり、自分とは関係のない情報だと判断されてしまう可能性があります。集めた回答をカテゴリーに分けて整理したり、全てを列挙するのではなく、特徴的なものを選別して情報量を絞るなどの工夫、それらを教員が意味づけて示すなどの工夫が有効です。
また、学生の提出物の共有には、個人情報やプライバシーへの配慮が求められます。事前に履修者間で共有することの了解を取り、共有して欲しくない場合のルールなどを決めておくと円滑に進みます。
ICTを活用することで、学修状況の把握やフィードバックの負荷が軽減されます。また、学修活動の管理や保管、学生間のやりとりや情報共有を円滑に行うことが可能となります。
1)テスト管理機能を活用する
kyonetのテスト管理機能により、到達度を評価する試験や、繰り返し回答するドリル学習など、学生が自身の学修を評価する活動や、自学自習する環境を用意することが可能です。
準備は大変ですが、一度作成したものは、他の授業にも転用でき、改変することも容易です。
※テスト管理機能画面 右上「?」ボタンからも使い方(簡易版)を確認できます。2)課題管理のフィードバック機能を活用する
kyonetの課題管理機能には、同じフィードバックを特定の学生に返す「フィードバック一括登録」機能と、作成したフィードバックを登録し、簡単に再利用できる「フィードバックのテンプレート」機能が実装されています。これらを組み合わせて利用することで、個別にフィードバックを返す負荷を大きく軽減できます。
※課題管理機能画面 右上「?」ボタンからも使い方(簡易版)を確認できます。