従来、対面の授業をオンライン上で行うためには、授業で扱う著作物について権利者の許諾が必要となっておりました。この問題を解決するために、平成30年に著作権法改正があり、授業目的公衆送信補償金制度が設けられました(本学申請済み)。この制度を利用することにより、オンライン授業で対面の授業と同様に許諾なしに著作物を扱うことが可能となりましたが、「対応していないもの」と「検討中のもの」があり、注意が必要です。
また、対面授業でもkyonetやGoogleドライブ等、ネットワークを介して教材を共有する際には同様にご配慮いただくようお願いいたします。
教育のDXを加速する著作権制度~授業目的公衆送信補償金制度について~P7
■対応していないもの
・38条で規定されている「公表された著作物を上演・演奏・上映・口述する行為」
著作権法第38条1項
営利を目的とせず,観客から料金をとらない場合は,公表された著作物を上演・演奏・上映・口述すること ができる。
ただし,出演者などに報酬を支払う場合はこの例外規定は適用されない。
■検討中のもの
・コピーやアクセスの制限をかけられた著作物の複製又は公衆送信利用(Blu-ray Disc/DVD などの映画の著作物等)
・著作物レンタルや、デジタルサービス、コンテンツ配信契約、有料放送、有料音楽配信等のうち、教育利用であるか否かに関わらず複製、公衆送信して利用することが禁止されているもの
SATRAS:改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版):P20
上記の「対応していないもの」と「検討中のもの」については許諾なしに著作物を扱うことができませんので、抵触しないようご対応ください。
対応方法としては、第32条で規定されている「引用」の形式をとっていただく必要がございます。(個別に承諾を得る方法もありますが、現実的な対応ではありません。)
著作権法第32条1項
公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。
引用における注意事項
(1)すでに公表されている著作物であること
(2)「公正な慣行」に合致すること(例えば,引用を行う「必然性」があることや、言語の著作物についてはカギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること。)
(3)報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
(例えば,引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや,引用される分量が必要最小限度の範囲内であること、本文が引用文より高い存在価値を持つこと)
(4) 「出所の明示」が必要(複製以外はその慣行があるとき)
※美術作品や写真、俳句のような短い文芸作品などの場合、その全部を引用して利用することも考えられます。
※自己の著作物に登場する必然性のない他人の著作物の利用や、美術の著作物を実質的に鑑賞するために利用する場合は引用には当たりません。
※翻訳も可
なお、文化庁に確認したところ、オンライン授業における著作物は、同時双方向型とオンデマンド型で取扱いの違いはなく、同様に扱えるということです。
また、引用は、条文にあります通り、報道、批評、研究等広く適応されるものであり、文化庁では引用に当たるかどうか個別の判断は行わないということでした。
<ポイントの整理>
・オンライン授業では同時双方向型、オンデマンド型で同じように許諾なしに著作物を扱うことができる。
・オンライン授業では映画等、映像作品を許諾なしに上映することはできない。
・対面授業では公表された著作物を上演・演奏・上映・口述することができる。
・市販されているDVDなど、複製・公衆送信の禁止が示されているものやNetflixなどのサブスクリプションサービスで提供されている映像作品は検討中であり、現在オンライン授業では許諾なしに利用できない。
・著作権法第32条1項で規定されている「引用」の形式をとることで、許諾なしに著作物をオンライン授業で利用することができる。
・対面授業でもkyonet等で教材をネットワーク上で共有する場合は同様の配慮が必要となる。
※前提として、許諾を必要としない著作物の教育利用は、「必要と求められる限度において」、「著作権者の利益を不当に害しない」場合に限定されておりますのでご配慮ください。