設立趣意書

設立趣意書

自然と人の協働作業により創られた里山の豊かさが、新たな生態系保全の対象として人々に認識され始めたのは比較的近年のことです。海上の森は、平成17年(2005年)に開催された愛知万博の原点となった里山環境保全の象徴的な存在として知られています。愛知万博が「愛・地球博」と称され、「自然の叡智」をテーマとした環境博としての枠組みを備えたのは、市民・行政・有識者などが一体となった「愛知万博検討会議(海上地区を中心として)(平成12年開催)」等による海上の森の保全計画策定を通じた議論が大きく寄与したと考えます。

愛・地球博を通じて市民や自治体の環境意識が急速な高まりを見せ、その前年の平成16年に「海上の森の会(現在、同NPO法人)」が設立され、終了一年後の平成18年には「あいち海上の森センター」が設置されました。里山保全に関わる、前者は市民の側からの自発的なアクションであり、後者は自治体の側からのアクションと捉えることができます。愛・地球博の瀬戸愛知県館であったセンターと海上の森の会は、その後も協働して海上の森において自然とのふれあい、楽しみ、交流する拠点として、里山の歴史文化や生態系などの学びの場を提供し、里山の保全に取り組んできました。

一方、愛・地球博の理念を継承し、実践・発展させる愛知県の事業の一つとして「人と自然の共生国際フォーラム」が平成19年より毎年開催され、本年、第10回目を迎えました。愛知万博から10年目の節目も過ぎ、また本年が最終回となるフォーラムについて、振り返ると共にその将来を展望すべき時期に来ています。

たとえば、第9回フォーラム宣言をみると、『私たちは、里山が人と自然をつなぎ、地域づくりの場として重要であることや、自然を持続的に利用する生き方の大切さを学んできた。また、森林・里山から里海まで、自然が密接なつながりを持ち、人間の活動が与える影響を十分に考慮して行動することの大切さを再認識した。豊かな自然を次世代に引き継ぎ将来にわたる環境保全のため、持続可能な社会の実現に向けた取組について議論した結果、市民と行政・企業の連携により愛・地球博から10年の取組を未来に向けて継承し、人と人、人と地域、人と自然とのつながりが実感できる明日を創造する』としています。

市民、NPO団体、企業、学校及び地方自治体の協働により、海上の森を舞台として、それぞれの地域コミュニティの仲間が集うあいちの拠点、交流の場となり、自然が持つすばらしい仕組みを学び、人と自然が共生する社会創りに向けた議論の場として、「人と自然の共生国際フォーラム」がこれまで担ってきた事業を定着させることが求められているのです。

以上のような経緯を踏まえ、「あいち海上の森フォーラム」を設立し、海上の森の里山保全に係る運動と市民への環境に関わる啓発事業を今後継続して実践するとともに、それらの経過や成果を愛知から世界に向けて発信します。

平成28年11月26日

あいち海上の森フォーラム設立総会参加者一同