学校の様々な教育活動と、教師と子どもの学校生活、地域社会との連携協働などについて、教育学や心理学の立場から専門的に探究し、教育実践の在り方を展望します。あわせて、教育と子どもの成長を俯瞰できる広い学識と深い理解に基づき、学校教育の枠にとらわれない視点から教育や学校の経営を見渡すことのできる、高度な実践的力量を備えた教育者を育成します。
この領域には,一般の大学でいう「教育学」と「教育心理学」の教員が集まっており,学級経営や教師論,制度や社会環境,学習や発達の心理的側面,さらには教育の基盤となる哲学までをも含む,幅広い問題領域をカバーしています。事実上,現代の子どもと教育に関連するあらゆる現象が,私たちの研究対象となり得るといってもいいくらいです。
では,どうして教育学と教育心理学の教員がいっしょにまとまっているのでしょうか。それは,狭い学問領域の専門性にこだわらず,院生のもつ多様な問題意識に柔軟に対応できるように,と考えたからです(下の「学校経営・学校心理領域になるまでの経緯」参照)。
研究の手法はそれぞれの分野・領域で違っていますが,教育学も心理学も,扱っている研究対象は比較的似通っています。そのため以前から,入学当初,「自分の研究テーマは,教育学なのか心理学なのかよくわからない」と迷う院生が見受けられました。実際,教育学でも心理学でも研究可能な場合が案外多いものです。さらに,隣接する学問分野からのアドバイスをもらえることは,研究の視野を広げるのに大きく役立ちます。
そこで私たちは,「専門志向より問題志向」という大きな方針を掲げ,学問分野の垣根をできるだけ低くして,院生が問題へのさまざまなアプローチを自由に選択できるよう,また選択したあとも両方の学問分野から刺激を受けることができるよう,研究教育体制を整えてきました。
この中から,「学校教育と子どもの発達を広い視野から俯瞰できる」教育者を育成しようとしています。
教育をめぐる様々な事象を大局的にとらえ分析する研究者の視点と,子ども一人ひとりに寄り添って共感し理解する実践者の視点の両方を持ちつつ,近未来を鋭く洞察していち早くアクションを起こすことができる,そんなナマズのひげのような先見性と批判精神を備えた教職員こそが,変化の激しいこれからの学校現場には求められています。そして私たちがめざしているのも,そうした教職員を育てることなのです(↓つづく)。
『鳥の眼,虫の眼,鯰(ナマズ)ひげ』―
このフレーズは2011年度「実践場面分析セミナー」での橋本定男先生の講義に由来しています(生徒指導総合・学校心理科目群当時)。
“一般的には,「鳥の眼,虫の眼」のあとには「魚の眼」が来るのですが,「潮流を読んで流れに乗る」ような,あるいは「時代に流されて生きている」ような教員ではダメです。近い将来起こるであろうことを,いち早く察知して警鐘を鳴らす,そんなナマズのひげのような先見性と批判精神を備えた教員こそが,変化の激しいこれからの学校現場には求められているのです。”
橋本先生のこの名フレーズは,そのまま私たち教員スタッフ全員の願いでもあります。研究者の視点と実践者の視点の両方を持ち,最先端の教育的課題に立ち向かっていける。そんな教職員を育てていくことを,私たちはめざしています。
※参考文献:佐藤郁也(2002)『フィールドワークの技法』新曜社
※リンク先にて、以下の項目ごとに説明しています
・教育経営プロフェッショナル育成プログラムについて
・修了証について
・教育経営プロフェッショナル育成科目について
※大学創立から、現在に至るまでの変遷です
1978(上越教育大学創立)
創立当初は,4つのコースで学校教育専攻を構成していました。4コースそれぞれに,教育学と心理学の教員が入っていました。
2000(いわゆる12年度改革に伴う大幅な組織再編)
学校教育専攻は,旧教育方法コースを拡大発展させた学習臨床コースと,旧生徒指導コースを拡大発展させた発達臨床コースの2コース体制となり,旧学校教育専攻所属教員の多くは,発達臨床コースに移行しました。発達臨床コースには生徒指導総合と心理臨床の2つの分野があり,当時は独立して運営していました。
2004(臨床心理士養成を専門とする臨床心理学コースが心理臨床分野から独立)
残る学校心理の教員が生徒指導総合の教員と合流して発達臨床コースを構成することになり,ここから教育学(生徒指導総合)と心理学(学校心理)での協同運営体制がはじまりました。
2008(教職大学院設置に伴う組織改編)
発達臨床コースと学習臨床コースがいっしょになって,学校臨床研究コースとなりました。「発達臨床」という名称がなくなってしまいましたが,「生徒指導総合」と「学校心理」の科目群は,変わらず協同運営体制を維持していました。
2016(新しい教育課題〔当時〕に対応する改組)
学校臨床研究コースが大きく変わり,生徒指導総合と学校心理科目群も,新たに「道徳・生徒指導コース」と「教育連携コース」の2コースに組み替えられました。ただし学部は変わりません。
2019(教科教育以外のコース・領域の教職大学院移行)
教育連携コースは,2019年4月から教職大学院に移行し,名称も「現代教育課題研究コース 発達と教育連携領域」に変わりました。学部も、年度進行により「発達と教育連携」となりました。
2022~現在(教職大学院全体の改組)
教職大学院全体の改組に伴い,「現代教育課題研究コース 発達と教育連携領域」は、現行の「学校教育実践研究コース 学校経営・学校心理領域」となりました。ただし学部は「発達と教育連携」のままです。