結晶の格子歪(ひず)みの評価

図1 純粋結晶(a)と混晶(b)の格子の違い。混晶材料では、赤色の第3の元素を添加することで歪みが生じる。

図2 ホログラムより再生した純粋結晶ZnTe(a)と混晶Zn0.4Mn0.6Te (b)のZn周辺の3次元原子像と閃亜鉛鉱型結晶構造(c)。再生した3次元像の強度がMn添加によって弱くなることを説明するために考案した「機関車車輪モデル」の模式図(d)。この話は、欧文科学雑誌Physical Review B 80, 134123 (2009) に掲載されました。

3つ以上の元素が混ざってできている混晶材料では、母材に加えた第3の添加元素の影響により、2元素のみからなる純粋な結晶(2元素のみから混晶材料)に比べて格子が大きく歪みます(図1)。このような格子歪みは、材料の電気特性などに大きな影響を与えます。しかし、これまでは、その歪みを引き起こす原子配列の乱れ具合を評価する手段がありませんでした。


 私たちは、希薄磁性半導体Zn0.4Mn0.6Te(混晶材料)と、その標準試料ZnTe(純粋結晶)のZnの蛍光X線ホログラムを測定しました。図2(a) (b)はホログラムより再生したZn元素周辺の3次元原子像です。矢印(↓)で示す中心から1番目(①)と5番目(⑤)の強度が弱くなっていることがわかりました。このことから、その原子位置が大きく揺らいでいることが予想されます。これを説明するために「機関車車輪モデル(図2(d))」を考案し、シミュレーションしたところ、実験と良く合うことがわかりました。