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原子分解能ホログラフィー研究会は、2008年11月1日にSPring-8利用者研究会の1つとして発足しました。SPring-8研究会をベースとしていますが、活動範囲はそれを超えて、電子線や中性子線も使った普遍的な原子分解能ホログラフィーの研究分野の拡大を目指しています。原子分解能ホログラフィーは歴史の浅い測定法ですが、従来の原子構造測定法では見ることのできない新たな構造情報が得られます。以下に、そのいくつかを例示します。

1) 不純物の構造状態の同定 結晶中の不純物周囲の構造の直接観測をすることができます[1]。どのサイトに入っているのか、クラスターを形成しているのか、置換しているのか、といった情報が難しい解釈なしに得られます。

2) 局所格子歪みの評価 例えば、原子半径の異なるドーパントが置換された場合、周辺の格子がどのように歪むのでしょうか?もちろん、周辺原子は動径方向にも変化しますが、それ以上に角度方向に大きく変化します[2]。他、混晶系材料の格子歪みの評価に対しても取り組んできました[3]。

3) 触媒や表面キャラクタリゼーションへの応用 触媒の活性中心の観測や半導体表面の構造評価は光電子ホログラフィーの得意とするターゲットです[4]。また、原子数層の超薄膜において、原子層単位で電子状態と磁性情報(スピンと軌道量子数)が測定できることも発見しました[5]。

4) 界面構造のイメージング 表面散乱の一つであるCTR(Crystal Truncation Rod)散乱のパターンを詳細に解析することにより、界面構造をイメージングすることができます。界面はドーパントと同じく材料の性質を左右する重要な活性点(面)であり、その特殊な界面構造を分かりやすく評価できます[6]。

5) ナノ構造体3D原子イメージング 電子回折イメージングという手法を用いると、カーボンナノチューブなどのナノ物質の3D原子像を得ることができます。生体材料のイメージングに有望視されていますが、欠陥の評価にも対して、強力な手法となり得ます[7]。

このような新しい原子配列情報に、研究者が自由にアクセスできるようにプラットホームを整えていき、原子分解能ホログラフィー(もしくは関連手法も含めて)が構造解析における1ツールとして利用できるようにしていくのが、本研究会の目的です。ホログラフィーのシミュレーションや原子配列の可視化理論[8]が自由に利用できるようにソフトウエアの開発と公開も行っています。この局所原子構造情報は太陽電池や蓄電池の改良、触媒の性能向上、半導体の省電力化、磁性媒体の高密度化などの幅広い分野に対し、その発展の大きな力になると考えています。興味のある方は、是非、会員に登録して下さい。