2025年、明けましておめでとうございます。本年も羅臼高校ではさまざまなDX、働き方改革を進めますので、引き続きご指導・ご助言をいただきますようお願い申し上げます。
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今日1月14日に放送スタートするTBSの新ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」のテレビCMが流れています。個人的にとても楽しみにしているドラマなんですが、その30秒CMの中に「働き方を選ぶ。それは人生を選ぶこと」という文言が出てきます。そして次の言葉が心に刺さってきます。
「ライフだの、ワークだの、いちいち分けるなっつーの。ぜーんぶひっくるめて、人生でしょう?」
うん!これこれ。
長い間なんとなく引っかかっていたモヤモヤが、この言葉で一気に吹っ飛びました😆
ワークライフバランス、という言葉をあちこちで目にしますが、確かに言われてみればワークとライフって切り離せないものですよね。誰しも、職業選択をする段階で自分の人生設計みたいなものをある程度考えているわけで、こういう生き方をしたいからこの仕事をしたい!と思って今の仕事をしていますよね。
この言葉が意味するところは、単に「ワークの時間を減らしてライフの方を充実させよう」ではなく、「ワークとライフのそれぞれが相乗効果であなたの人生を輝かせるようにしよう」ということだと思います。ただ、そのための前提として「職場の心理的安全性」や「自分の思い描いたこと(ミッション)を誰かに忖度することなくできる環境」が必要だろうと思います。今、どの職場でも働き方改革を進めていますが、仕事にやりがいを感じながら楽しく進められることが何より重要です。そのためには、壊すものは完全に壊して新築し、残すものは補修工事をしてリニューアルする。そんなイメージでの学校経営を校長は考える必要があるだろうと思います。
さて、羅臼高校DX2025では、重点的に取り組むテーマをいくつか決めようと考えております。今のところ頭にあるのは、次のようなものです。
・教頭業務のさらなる削減とやりがいの向上(生成AIを大胆に活用した教頭支援DXの推進)
・教職員のウェルビーイングの向上と可視化
・チャットを核とした生徒の学びの深化
・学校課題の整理や将来検討をDX手法で進める
・DXによる「価値創出」を考える
まず最初に取り組みたい(実はもうすでに着手し始めている)ことは、教頭の働き方改革の深化です。すでに羅臼高校では校長~教頭間のやりとりの大半をクラウド上で行っており、デジタルドメインな形での共同業務を日々進めています。併せてKX(校長トランスフォーメーション)も躊躇なく行い、教頭が校長に忖度しなければならないような昔ながらの空気感をゼロにしました。2025年はさらに「校長と教頭がより深い部分での意見交換をデジタルで行い、学校経営を共同で担う」ことを実現します。具体的には、FigJamのようなオンラインツールを使ったブレインストーミングによる意見交換を校長・教頭間に導入し、一番最初のアイデア段階から共同作業にするわけです。こうすることで、今以上に教頭が校長の腹を読む必要がなくなり、最初から明確に学校経営の方向性を共有できます。これが軌道に乗れば、教頭の精神的な負担を軽減しつつ経営判断の「練習」ができ、教頭が将来校長になった時に困らないようなスキルアップにもつながると考えられます。同時にKXもVer.2に上げて、そもそも校長は学校の何に寄与する存在なのかというところから、もう一度立ち位置を再確認します。世界的な潮流を見ながら、これから10年後、20年後にも存続できる高校づくりのために校長がなすべき役割を、根底から見直したいと思います。
この手法は教頭に限らず、教職員全体に対しても有効だと考えられます。日常的なブレストによる意見交換と情報共有を経て職員会議へつなげる、というワークフローが確立すれば、校長の経営方針や考え方がより明確に全体に伝わり、逆に先生方の考え方を校長が理解する場ともなり、かつ職員会議の効率化にもつながりそうです。「全員がデジタルを使って最初から経営参画するSociety5.0型組織マネジメント」を目指し、すでに実践中のリングマネジメントと一体化して実践しようと目論んでいます。
また、受信メールを印刷して回覧し、教頭席の後ろの棚に簿冊を保管する、という古い慣習を一刻も早く全廃したいと思います。ここも完全デジタル化を進め、スプレッドシートなどを活用して回覧自体を電子化。本校ではすでにチャットでの電子決裁を動かしていますので、回覧など簡単なことです。文書規定との整合性等の問題もありますが、関係機関と協力しながら実現できるよう、動こうと思います。教頭席の後ろの壁は、カフェのようなおしゃれな空間にすべきですね😁だいたい、学校の職員室って華のない殺風景な場所です。私は、本当はフリーアドレス(その日の気分で好きな座席で仕事する)をやってみたいんですけれどね。紙を全く使わない業務形態にしてしまって、固定の机という概念をなくしてしまいたいものです。校長も、校長室にばかりいないで、フリーアドレスの座席にたまには座ってみてもいい。その代わり、カフェコーナーを充実させて、そこで簡単なプレゼンなんかもできるようにする。そんな職員室が実現する日は・・・まぁ来ないでしょうねぇ…
チャットを核とした生徒の学びの深化は、先行事例がいくつか出始めてきて、その教育効果も見えてきつつあります。本校では2年生の見学旅行でチャットを使いましたが、それをそのまま授業用に転用して、まずは2年生でいろいろな実験をしてみたいと思います。学びのDXの大きなテーマとして「授業を生徒に預けてみる」という目標がありますが、チャット活用により生徒にとっては情報の入手経路が先生からとチャットからの2系統になり、先生だけが説明して終わる授業からの脱却が期待できます。最終目標は個別最適な学び・協働的な学びということになりますが、そこへ向かうベクトルとしてチャットによる複線的授業を実践したいですね。学年主任と連携して取り組もうと思っています。
また今年整理してみたいのは、価値の創出という部分です。DXを進めることで何がどう改善されているのか、ということを今一度見直し、今までになかった価値(教育的価値や、教職員のウェルビーイングに資する価値)を生み出すことにつながっているのかどうか、客観的な視点を入れながら解析してみたいと思います。ここまで検証することで、単に時短だけの働き方改革に陥らせず、中身を伴ったものにできると考えています。
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話は変わりますが、年明けにたくさんの方とお会いする機会があり、いろいろなお話しを聞くことができました。その中で、ある若い教頭先生の話がとても印象に残りました。その方は、経験が浅いながらもしっかりと仕事に向き合う、かなり理想的な教頭先生なのではないかと感じさせられるお人柄なんですが、校長対応でとても苦労されたとのことでした。「あなたを徹底的に鍛えます」とその校長は宣言し、毎朝7時に「校長レク」(起案内容についての教頭から校長への細かいレクチャー)をさせ、教頭先生はそのために前日の夜遅くまで準備をし、レクの朝も早朝出勤しなければならないという、私に言わせれば「間違いの極み」と言うべき実態があったようです。こういう校長に当たってしまった教頭は、本当に悲劇としか言いようがありません。鍛えなければならないのは、もはやそこじゃないんですよ。時代錯誤ですね。
校長の意識改革こそ、学校にとって最も喫緊の課題です。
R7(2025).1.14 北海道羅臼高等学校長 古屋順一