冬季休業期間となりました。私は毎年、この時期に古いデータの整理などを行います。自分に関するものはすべてPDFデータ化して保管しており、紙は全くありません。しかしデータも時折整理しておかないと、何かが欲しいときに探し出すのが難しくなります。私は仕事用のGoogleアカウント(hokkaido-cドメイン)以外にも、私用のGoogleアカウントをいくつか持っており、それぞれ仕事に活用しています。以前は外付けHDDでデータ保管していましたが、すべてクラウド化しました。
さて、そんな作業の中、昔何かの研究協議会でもらった教頭向けの資料が目にとまり、見てみるとこう書かれていました。多分10年くらい前のものだと思います。
<校長に対する心得>
①報告・連絡・相談(ほうれんそう)の徹底に努め、一心同体の姿勢を貫くこと。
②校長の意図するところを正しく推し量り、先取的に取り組むこと。
③校長に対する情報操作をしないこと。
④逐次、教職員の動静や服務の理由を把握し報告すること。また、家族の健康の状況の把握にも努めること。
⑤各種会合、学校行事や集会等における校長の役割及び出番について、当日再確認すること。
⑥校長から指示された事項の処理状況や結果はすみやかに報告すること。
⑦可能な限り校務分掌の会議に出席し、その状況を校長に報告すること。
⑧校長不在時の問題等は、緊急性、波及性、重大性を見きわめ連絡し指示を受けること。
<校務の整理に関する事項>
①決定・決裁事項は、教頭として納得した上で校長に具申すること。
②校務処理の伺いは「どうしたら良いか」ではなく「こうしたいが如何でしょうか」と、教頭の考えや意見を持って行うこと。
③めくら判は決して押さないこと。校長に不適切を指摘された場合には、教職員の責任にしないこと。
④教頭の出張などは、校長の決裁を得てから出欠の報告をすること。
⑤職員会議における答弁は、可能な限り教頭が行うこと。校長の答弁は修正がきかない。
⑥朝の管理職打合せにおいて、一日の日程及び校内の主要な動きを再確認すること。
<姿勢・態度に関する事項>
①校長を立てて、教頭は悪役に回ること。教職員の前で校長の批判をしないこと。
②校長室への出入りは可能な限り正装で行うこと。教職員にも理解させること。
③電話中は入室を控えること。かかってきた時は原則退室すること。
④来客、校長へのドアの開閉は教頭の気配りと心得ること。
⑤校長が教頭席に来て話しかけるときは、起立することが望ましい。
⑥出張、外勤などで学校を留守にするときは、校長への挨拶を怠らないこと。
⑦出勤は校長より早く、退勤は遅くするのが基本と考えること。
少し前の資料なので、今とはマッチしないことも含まれていますが、上記のようなことが長年教頭に指導され、教頭はそれを守ろうと頑張ってきたのだと思います。しかし現在、教頭のなり手が減り、毎年教頭不足が大きな問題となっています。
このサイトのファンの方はすでにお察しのことと存じますが、私が今羅臼高校で取り組んでいる様々な改革は、上記のような古い考え方を極力排除し、新しい価値観で学校経営・運営をしようとするものです。特に教頭の心理的負担の軽減は喫緊の課題だと考え、できそうなことはどんどんやってきました。校務DXの中には、教頭と校長の接続部分のDXも含まれており、実は本校におけるDXの最も大きな成果は、教頭の負担軽減なのではないかと私は自負しています。(実際に教頭に聞いてはいませんが😁)
さて、上記の色文字で下線を引いた部分が、私が取り組んだ教頭の業務改革に当たるものです。ひとつずつ見ていくと…
<校長に対する心得>
①一心同体の姿勢を貫く → これは正直キモいです😆。校長と教頭が違った考え方でいいじゃないですか。むしろ違ってないと危険ですよ。一心同体なんてやってたら、校長の間違った主張だけが独り歩きして、学校に損害をもたらす危険があります。
②校長の意図するところを正しく推し量り → そんな面倒なことをしなくても、校長から教頭に意図をちゃんと伝えますよ。推し量る能力は、先生方に対して発揮してください。校長への気遣いは無用。
⑤校長の役割及び出番について、当日再確認 → そんなものは校長が自己管理すべきです。
⑥処理状況や結果はすみやかに報告 → チャットに書いてくれれば十分です。
⑦可能な限り校務分掌の会議に出席 → 先生方だけでフリーに話し合わせた方がいいですよ。つねに管理職が監視するような学校じゃ、窮屈でしょ?
<校務の整理に関する事項>
②「どうしたら良いか」ではなく「こうしたいが如何でしょうか」と、教頭の考えや意見を持って行う → 考えても分からないことを無理に「こうしたい」なんて言わなくていいですよ。それを考える時間がもったいないです。どうしていいか困ったら、素直にどうしたらいいでしょうかと聞いてください。校長だって大した結論は用意できませんから、一緒に悩みましょう。「教頭に経験を積ませるために、教頭案を考えさせる」という校長がいますが、結局校長案になるんですから時間の無駄。この種の負担は一切無くします。そもそも、土台の作り方が分からなくて困ってるのに、建物を建てろと言われてもね😆経験というのは、そういう形式的なことじゃないんです。
⑤答弁は、可能な限り教頭が行う → 校長が答弁した方が手っ取り早い。もし校長答弁に誤りがあったら、後で校長が頭を下げて修正すればいいだけのことです。校長がそれをしないからおかしくなるんです。小さなことは教頭答弁でいいですが、大きなことは最初から校長が答弁します。教頭は板挟みにならないでください。
⑥朝の管理職打合せ → チャットで十分。やめましょう。
<姿勢・態度に関する事項>
①校長を立てて、教頭は悪役に回る → むしろ逆です。校長が悪役で泥を被るべきです。教頭は校長が突っ走るのを後方支援してください。校長は、校務分掌の中で一番底辺の「土」です。教頭はその上に載る「基礎」、先生方はその基礎に載る「家」、生徒はその家に住む「住人」。
②校長室への出入りは可能な限り正装で行う → 時代錯誤です。かえって恥ずかしいからやめましょう。
⑤校長が教頭席に来て話しかけるときは、起立することが望ましい → 私の方が教頭席横の椅子に座って話しかけますから、起立しないでください。軍隊じゃないんだから。
⑥学校を留守にするときは、校長への挨拶を怠らない → チャットで連絡してくれればOK。毎日一緒に同僚として仕事してるんですから、そんなめんどくさい虚礼は一切不要です。
⑦出勤は校長より早く、退勤は遅くする → そんな時代もありましたね。いつ来て、いつ帰ろうが、教頭の自由です。できれば校長に関係なくどんどん定時退勤してくださいね。
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いかがでしょう。羅臼高校で進めている教頭の働き方改革は、クラウド活用が大前提となっていることが読み取れることと思います。GWSを教頭・校長間に導入することで、意思疎通の制限がほとんどなくなり、随時いろいろな情報交換ができるようになります。どちらかが出張中でも、チャットでいつでもどこでもやり取りできますし、本校ではチャット決裁を導入しているので、すべてがチャット上だけで完了します。要するに、従来職員室の教頭席でなければできなかった業務が、クラウド活用により教頭の自宅でも出先でも随時できるようになるわけです(これは校長も同じです)。これにより、緊急対応も迅速にできますし、何か急ぎの案件や、うっかり失念していて期限ギリギリになってしまった場合なども、学校に行かずしてすべてクラウド上で解決してしまいます。
逆に言えば、このようなクラウドを基本とした教頭業務の整理をすると、古くさい「校長への気遣い」的なものが邪魔になるわけです。だから羅臼高校ではまず、校長トランスフォーメーションという考え方を実行し、クラウド化によるDXが進むようにしました。
さて、この教頭業務改革は次年度もさらにレベルアップを図るべく、現在戦略を練っているところです。昇任の教頭先生がよく来る本校ですが、もしそうなった場合に備えて、昇任教頭が初めての教頭業務に当たるのをDXで支援できないか考えております。すでに構築したものをベースに、教頭業務DX-ver.2(教頭支援パッケージ)をこの冬休みにゆっくり考えますよ😁
R6(2024).12.24 北海道羅臼高等学校長 古屋順一