10月に入りました。そして本日10月1日(火)、道教委主催の「第2回リーディングDXスクールオープンセミナー」がオンラインで開催され、私も参加しました!
  このセミナーは、文部科学省の「リーディングDXスクール」に指定されている学校から、各校におけるDXの取組状況を発表し、先進的で身近な事例として多くの学校でノウハウを活用するためのもので、6月に1回目、そして本日2回目が開催されました。羅臼高校のDXを進める上で欠かせない情報源となっております。
今回のオープンセミナーは今年度のリーディングDXスクールである旭川市立西御料地小学校、旭川市立緑が丘中学校、北海道帯広柏葉高等学校の3校からの実践発表がありました。私ごとですが、以前旭川工業高校に勤務していたことがあり、西御料地小・緑が丘中のすぐ近くの緑が丘東地区に住んでいました(両校とも旭工のすぐ隣)。なんとなく親しみのある両校からの発表ということもあり、毎回興味深く拝見しています。また、帯広柏葉高校の実践は、すぐに羅臼高校にも導入可能なものが多く、今後大いに参考にさせていただこうと思っています。
さて、今回の実践発表の中で強く印象に残ったワードは「学びが自走する楽しさ。子どもの充実感」、「チャットによる端末上での子ども同士の対話が課題解決につながる」、「個別最適な学びをDXで実現したことで、授業が早く進むようになり生徒の理解度が向上した」、の3つです。まさに、学びのDXとは何かということをこれほど端的に表す言葉はないだろう、というくらい貴重なコメントでした。結局、DXの目指す最高の到達点は、子どもたちの学びの変革です。ここを目指すことがDXの真骨頂であり、日本中の学校が今求められている喫緊の課題でもあります。無理のないように進めなければならないDXですが、一方でスピードも求められています。いつまでも検討段階で止まっているわけにはいかない。走らせながら考えていく形にしないと、なかなか結果が見えてこないものなんです(DXに限ったことではありませんが)。
 上の図は、緑が丘中学校の発表スライドです。子どもに学びを預ける授業。これですよ、DX的感覚というのは。
  チョーク&トークの授業は、もう時代遅れだとよく聞きます。しかし、私も含めて何十年もチョーク&トーク授業をしてきた身としては、反論もしたくなるわけです。ICTがなくたって、生徒とのキャッチボールはいくらでもできるし、それで間に合っている。実績も上げてきた。だからICTとかDXというものは自分の授業にはいらない…。そう考える教員も、まだまだ多いのではないでしょうか。私もまだそう思っている自分が正直ちょっといたりします。
 しかし、古い形式の授業ではもうどうにもならない、ということが今日のセミナーでもはっきり述べられていました。端的に言うと、昔からのチョーク&トーク授業というのは、どんなに工夫したとしても所詮「一斉授業」なんです。一斉授業なので、全員が同じスピードで学び、先生の説明の通りの学習活動になってしまいます(そうではない例も多少はあるでしょうが)。要するに、あらかじめ教師によってデザインされた授業に子どもたちが乗っかっている、というスタイルになるわけです。実は少し前まで、授業のデザインの必要性が強く言われていました。観点別評価が導入されはじめた20年くらい前に、さまざまな研究会で授業のデザインが取り上げられ、「デザインって何?」ということを私たちは学んできたわけです。そこでは、子どもたちを惹きつける優れたストーリー性があり、しかも評価の観点が分かりやすい授業が「価値の高い授業デザイン」だと評価されてきました。
  一方、今文部科学省が言っている「個別最適な学び」は、子ども一人一人に最適な指導方法・到達目標を分析しながら、子どもたちが自律的かつ協働的に学んでいき知識を構成していくというものであり、教師があらかじめデザインできない形式の学びであるわけです。ここに大きなパラダイムシフトが隠れています。まさに、今日の緑が丘中学校の発表にあった「子どもに学びを預ける」という、一昔前の感覚では全く考えられないような発想が必要なのです。だから、もはや紙と鉛筆、チョーク&トークではとてもじゃないけれど追いつかないので、今すぐにでもDXが必要だ、ということになるわけです。要するに、ごく簡単に言ってしまうと「一斉授業をいつまでするんですか?」という問いになるわけです。今求められている個別最適な学び・協働的な学びは、一斉授業ではほぼ実現できない。授業の複線化という考え方が必要不可欠です。
もう一つ、授業へのチャット導入も興味深い実践です。羅臼高校は教職員の方にチャットを導入し、本格的に動いていますが、やってみての印象としてDXの核となるのはチャットではないか、という感触があります。これを子どもたちの学びの中に取り入れ、教師が見守る中子どもたちが自律的なチャット上でのやり取りでお互いの学びを共有し合い、知識を体得していくということが、すぐそこに見えています。私はDXによる学びの変革で、集団の中で構成されていく知識(社会的構成主義の観点での知識)が子どもたちの中に形成され、個々が自分を客観視する目を養えると考えています。このような学びの実現に、チャットはうってつけです。教科書の内容をベースとして、チャットによるエクスペリエンスの共有と、そこから形作られる構成的な知識や経験は、そのまま「協働的な学び」になると思うからです。こういう学ばせ方によって、子どもたちはきっと「学ぶって実は楽しいんだ!」と気づくはずです。これは、チョーク&トークの一斉授業では全く実現できません。
羅臼高校ではこの後、学びのDXを本格始動させるべく、さまざまな戦略を打ち出します。DXとは、単に何かが楽になるためのものではなく、これまで考えられなかったような劇的な変革を生み出すものだ、と私は信じています。そうでなければ、楽しくないですよね笑。
せっかくやるんだから楽しく、そして劇的に学校を変えちゃいましょう!
今、ちょうど旬です。「生サンマは今味わおう」ですよ、みなさん。
R6(2024).10.1 北海道羅臼高等学校長 古屋順一