早いもので、もう9月もなかば。前期の反省のシーズンとなりました。羅臼高校では4月の管理職チャット立ち上げを皮切りに、これまで「教職員チャット」「決裁専用チャット」「目安箱フォーム」「日報・日誌スプレッドシート」「会議レジュメ・議事録スプレッドシート」を取り入れ、すべて軌道に乗ってきました。また羅臼町内の教育関係を結ぶDXの準備も進行中で、現在羅臼町教育委員会で運用ガイドライン案を作成してもらっています。こちらも年内には試験運用まで漕ぎ着けたいと考えています。
さて、10月から早くも後期。次の羅高DXは、本丸である学びのDXに本格的に着手します。今のところ私の構想としては、タイトルのとおり「生徒DXer」を育てる方法をどう確立するかということと、以前の考察ノートにも書いた組織マネジメント改革、「リング・マネジメント」の導入、の2点を大きな目標としています。
学びのDXは、すでにリーディングDXスクールでの事例が多数あり、手法としては確立してきています。あとはやるかやらないか、という段階まで来ている。本校でもすでに一人一台端末活用の授業を行っていますが、内容面でのブラッシュアップを図って行きたいと思います。これに関しては、最初から理想像を追い求めるというよりは、トライアンドエラーの中で羅臼高校スタイルを見つけていく、という地道な展開が大事だろうと思います。したがって、先行事例は参考にしつつも、それを羅高方式としてどう落とし込むかという部分に時間をかけたいです。羅臼町では幼小中高一貫教育が進んでいますので、他校種ですでに実践している学びのDXを取り入れることも比較的容易にできます。いろんなチャンネルから情報を得て、本校生徒の学びとはどうあるべきかというプロット自体から、もう一度練り直すようなイメージで進めます。
 DXの本当の勝負は、校務DXではなく学びのDXです。これをどう面白く進めるかが、鍵を握っています。そのために考えたいのは、生徒自らがどう学びをDXで変革するか考える「生徒DXer」を育てるという方法。私は、生徒が個別最適な学びをするためには、究極的には生徒自身が自分の学び方を変革するしかないのではないか、と常々思っており、そのためには生徒にDXそのものを学ばせて、自分の学びのスタイルを自分でトランスフォーメーションさせる、という指導が面白いのではないかと考えています。というのも、生徒は勝手にDXみたいなことを編み出す能力があるからなんです。学校祭での演劇の脚本をクラスルームで配信し、タブレットでそれを見ながら役者の生徒が演技の練習をするということが7月にあり、その光景に私は衝撃を受けました。これは面白い!と。
  私としては常に「面白さ」を追究したいのです。面白くないと、続かないですからね。
リング・マネジメントは、簡単に言うと「車座マネジメント」です。従来の教職員→教頭→校長という1本の線だけの決裁システムをやめて、役職に関係なく教職員全員がフラットな輪になり、意見を出し合いながら学校経営をみんなで考えていく、というイメージです。これを実現するために、校務DXによって部長主任の負担を軽減させ、学校経営について思いを馳せてもらう時間を創出しようとしています。これまでの「校長に説明するための議案づくり」から脱却し、「教職員個々が学校経営を考え、校長をびっくりさせるような斬新な議案づくり」に転換します。このために、すでに校長決裁をチャット化し押印を廃止しましたし、教頭や部長主任判断の場面をできる限り増やして校長は事後承諾する、という方向性も打ち出しています。もちろん最終責任はすべて校長が負いますが、それが故に校長に忖度・斟酌した提案とならないよう、私自身が泥を被る覚悟を決めて進めています。これはKX(校長トランスフォーメーション)と銘打って、一番最初の取組として据えています。
ここまで半年の取組について、うれしいことに多方面から好意的な評価をいただき、さまざまな機会で発言させていただいております。正直、4月当初はとりあえずチャットでもやるか、くらいの認識でスタートしたものでしたが、自分でも想像していなかった展開になってきており、教職員の働き方改革が進んできていたり、意思決定の手順が簡略化されるなど、徐々に成果が出てきました。これをもっと推し進めて、羅臼高校方式DX・働き方改革というひとつの型ができればいいな、と思っています。ホームページでもすべて情報発信しますので、どの学校でも真似していただけますし、逆にみなさまからアドバイスをいただいて、それを取り入れることもあり得ると思っています。羅臼高校は何の研究指定も受けていないごく普通の学校ですが、逆に何でも挑戦できてしまう柔軟性があります。ごく普通の学校がどうDXや働き方改革にチャレンジするか、ということをぜひみなさんにも見てもらいたいと思っています。
これからも走っちゃいますよ~🏃
R6(2024).9.12 北海道羅臼高等学校長 古屋順一