学校の困り事って、何があるでしょうか。多種多様な問題があり、ずっと昔から困ってますよね笑。ずっと困ってきた割に、これといった解決策もないままなんとかしのいできた、というようなことがたくさんあります。
その最たるものとして「引継ぎ問題」があります。だいたい、どの学校へ異動しても、前任者からの引継ぎが完璧にうまくいくことはほぼなく、新任者が訳も分からず引き継がされるということが往々にしてあります。どんなに長文の引継書が残っていても、書面だけでは分からないことがほとんどであり、やはり引継ぎっていうものはどうやってもうまくいかないものだ、という印象があります。私自身の過去の仕事を振り返っても、引継ぎがうまくいかないどころか、引継ぎがゼロだったことが多々あります。
 そもそもなぜ学校では引継ぎがうまくいかないのか。私は「属人化問題」がそこに横たわっていると思います。属人化、すなわち「この仕事は、〇〇先生にしかできない」という状態。これにより、その担当教職員が異動すると、残った人間にはその人が何をやっていたのか全く分からないという悲劇が起こります。異動しなくても、属人化した業務を担当する人が風邪で休んだだけでも、その業務は数日ストップします。急ぐ場合など、休んでいるその人に無理矢理電話して方法を聞き出す、なんてことすらあります。管理職でさえそれがどんな業務内容なのか把握することは困難であり、本当に止まってしまう。こういうことが学校現場ではよく起こります。
  昔は逆に「その先生は素晴らしい特殊才能を持っている、さすがだ」という好評価にさえなっていたフシがありますよね。しかし今風の組織的な観点で見れば、何も良いことはありません。属人化がよきものとされたのは、昭和や平成初期の話です。
  こういった問題をDXで解決できないでしょうか?
 そこで今ちょっと考えているのが、属人化業務あぶり出しスプレッドシートみたいなものを作れないだろうか、ということ。各担当者が抱えている細かい業務をすべて羅列し、全員がその羅列を見る。そして自分がその業務をどれだけ知っているか、認識の度合いを回答する。そこで認識率が低い業務は「属人化率高め」、多くの人が認識していれば「属人化ではなく標準化している」と見なすことができます。
  こうしてあぶり出した各業務の属人化率から、どの業務が特定個人だけのものになっているかを見える化し、それを重点的に解消していく。こうすると、引継ぎ問題も少しは解決できるのではないでしょうか。
たとえばこのような「困り事」を解決する手段としてGWSを使う、という発想は、DXにつながると言っていいと思います。特に見える化はGWSの得意とするところであり、教職員の業務遂行状況をデータ化・見える化することは比較的簡単にできます。そこから業務の効率化や削減を考えたり、平準化も考えることができるはずです。そんなに難しい仕組みは必要なく、単純なフォームやスプレッドシートだけでもいろいろなことができそうです。ですから、DXというのはICTスキルの高低はあまり関係なく、それよりも「どこに目をつけるか」というセンスが問われるのだと思います。
 これは、生徒の学びのDXでも同じですよね。学びに関するさまざまな困り事、問題点をどうすれば一発で解決できるか、というところから発想がスタートし、そのためにGWSのどのツールを使えばうまくいくか、というところからDXにつながっていく。そんなイメージだと思います。
  GWS導入が軌道に乗ってきて、次に何をするかという段階にさしかかると、センスが問われるということです。なかなか厄介ですが、私は学校の外にヒントが転がっていると思っていて、いろんなオンラインセミナーに出て情報を仕入れたり、本を読んだりしています。GWSを使う技術そのものよりも、「どのようにGWSを使うと困り事が解消するか」を考える技術の方が、今後重要になるのではないでしょうか。
R6(2024).8.28 北海道羅臼高等学校長 古屋順一