みどり市立笠懸小学校 渡辺正大さん 2024年11月21日(木)
11月21日(木)、教職リーダーコース2年生の渡辺正大さんの実践検討会が、勤務校であるみどり市立笠懸小学校で行われました。
この学校は、かつて在籍児童数が千人を超える県下一のマンモス校でした。適正規模化により令和4年に隣接の笠懸西小学校が開校し、現在の児童数は447名です。渡辺先生は大規模校時代と、現在との両者での勤務経験があり、教職員間に学年単位の意識が強いなど、大規模校特有の職場風土が現在の職場にも残っていることに課題意識を持ちました。そこで渡辺先生は教職員への聞き取りとアンケートを行ない、机の配置など職員室の環境要因により教職員同士のコミュニケーションが阻害されていることと、校内研修が組織力や職場風土の向上に十分な寄与をしていないという2つの課題を見出しました。そして本研究を通して、これらの課題の解決を目指したのです。
まず、職員室の改装に取り組みました。年度明けに改装作業を行うため、渡辺先生はM1の時点から準備を進め、前年度3学期中には具体的な計画を立てました。計画の立案にあたっては全教職員の協働を意識し、理想の働き方や職員室像についての協議を重ねながら進めました。改装後は「良い意味で職員室がざわざわしていて、先生方がよくしゃべるようになった」などの声が聞かれ、お互いに声を掛けやすい職場環境にすることができました。
次に、校内研修の改善にも取り組みました。個人テーマ研修では、テーマの決定において個々人の「指し手意識」が働くよう促すとともに、1学期中に1回目のサイクルを回し、夏休み中に省察、2学期には一人一授業を利用し2回目のサイクルを回すことで、継続性を意識しました。また、校内研修の全体会では、従来は連絡・確認が中心であったところを改善し、教職員の協働の場として、個々人の気付きや思いを共有する集団的対話の場とし、ワールドカフェなどの対話法やハーベスティング(写真)を活用しながら、教職員同士の積極的なコミュニケーションと当事者意識の共有を促しました。一連の改革後のアンケートでは、「学年やブロック以外の少人数の話し合いの機会が充実していた」との評価が高いなど、従来の「連絡が中心」の研修から、教職員同士が繋がり合う対話の場へと改善できたことが見とれました。
当日も、検討会と併せる形で、校内研修全体会が行われました。一人一授業の相互参観によって「個人テーマ研修」の2回目のサイクルの段階であることを受けて、各々の実践を踏まえた対話が持たれました。対話には教職大学院の院生や近隣校からの参加者も加わって、学校を越えた幅広い視点での対話が進みました。 (文責:音山若穂・田村総一・山口陽弘)
2024年11月7日、教職リーダーコース2年生の福富明子先生の公開授業と実践検討会が、勤務校である高崎市立下室田小学校で行われました。福富先生の研究テーマは「学習に困難を示す児童の理解と支援-学校内外の多様な場や人をつなぐ協働的な取組を通して-」です。
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課(2022)の推計によると、小中学校の児童生徒の6.5%が、学習面で著しい困難を示すとされています。大きな困難でなくとも、30名の児童がいれば児童一人ひとり、苦手なことや困ったことを抱えています。福富先生は2年生9名の学級担任として、児童一人ひとりの得意なことや頑張っているところ、苦手なことや困っているところを把握し、その理解をもとに、支援や指導を重ねてきました。その過程では、通級指導教室教員・養護教諭・学校支援員なども含む校内の先生方や家庭との連携が大きな支えとなってきました。また、そうした協働が当たり前に行われるような学校を目指して、教員向けの通信を発行したり校内研修に取り組んだりしてきました。
公開授業と実践検討会は、下室田小学校の「一人一授業」校内研修と要請訪問を兼ねて実施され、実習校の校長先生・教頭先生・先生方、高崎市教育委員会学校教育課の4名の先生方、近隣の小学校の先生等、合計17名が参加しました。
公開授業は国語「ないた赤おに」。村人の家で暴れる青おにを赤おにがこらしめます。青おには逃げ出し、それを赤おにが追いかけます。児童は青おにと赤おにの役に分かれて、黒板に貼られた教科書の拡大コピーで「うつまね」「あわてたようなふり」といったキーワードの意味を確かめつつ、場面を的確に劇化していきました。なお村人の台詞は、周囲で参観している先生方が、指名されて読み上げました。最後は「にげた青おに」「おいかける赤おに」の気持ちを考えてタブレットに入力、9人全員の考えを共有しました。
検討会では3人ずつのグループに分かれて、支援の良かったところやさらに考えられる支援などが話し合われました。黛哲雄指導主事からは「個別最適な学び」「ICT活用」「国語科の指導」という三つの観点から、参加者全員の学びにつながる指導講評を頂きました。さらに「今期に参観した中で、児童の内面が最もアクティブに動き、表現された授業だった。その背景には、児童にとって学校が安心安全な居場所になっていることが考えられる」との温かいコメントを頂きました。
最後に本学より佐藤浩一教授がお礼を申し上げ、閉会しました。
(文責:佐藤浩一・坂西秀昭・山崎雄介)
2024年10月10日,教職リーダーコースの中島繁教諭による実践検討会が,勤務校である太田市立本町中学校で開催されました。中島先生の課題研究テーマは「中学校における「多忙」の解消と「多忙感」の軽減のための業務改善―ICTを活用した学習指導・校務の実践―」です。
藪塚本町中学校は県内でも有数の大規模校であり,部活動が盛んで強いという良い面も多いのですが,その反面部活指導のための業務量が全般に多いこと,大規模校で生徒数が多く,外国籍児童も多いことによる授業以外の負担がかなり重く,時間外労働時間はかなり多いものとなっています。
そもそも教職は,有休取得日数は大企業と比較してむしろ多いのに,しばしばブラック職種扱いされる傾向にあります。これは時間外労働時間が多いこと,有休取得日数自体は多いものの,フレキシブルには取得しにくいこと,またその内容が直接的な授業以外の業務が多いことがあることに着目しました。それらをICTの活用によって解決することを目
指し,学習指導・校務を支援するという実践的な研究をされています。そのため,学習指導への支援として,①自動採点システム(リアテンダント)の活用,②デジタル教科書の活用を学校全体に促されています。また校務への支援として,③保護者への配布物のデータ配布化,④不登校生徒や保護者とのオンライン授業配信も促されています。いずれも,
中島先生がそのためのファシリテーターとして,ソフト活用のための下準備をされて,校内研修の主体となり,実際のソフトの利用を中島先生が中心となって行い,それを先生方に指導していく役割を果たされてきました。それ以外でも『中島通信』を発行されて,ICTを利用をさらに促すことで,校内の業務改善を促す中心的存在となっておられます。
公開授業には,今後リアテンダントなどの自動採点システムの導入を考えている近隣の校長,教頭,管理主事などの先生方が参加するとともに,置籍校の校長ほか管理職,校内のほとんどの先生,本学からも教職大学院の院生3名,教職大学院の田村総一教授,指導教員の山口,川野,太田市教委からは石川大輔管理主事が出席しました。当日は川野教授による司会のもと,中島先生のこれまでの研究の歩みが三十分以上にわたり丁寧に発表され,その後,出席者から活発で熱心な質問が出されました。特に,石川管理主事から,本研究が有益であるというお褒めの言葉を頂戴しました。
指導教員としては,この実践活動が実証的にも効果があることを検証していただきたいと存じます。特に「多忙」については,時間外労働の短縮で目に見える成果が現れてもら
うことを期待しますが,「多忙感」の解消についても,いくつかの心理学的手法で尺度測定をしており,それらにもよい結果が出てもらうことを祈念しています。
中島先生はもともと優れた教師としての力量がある方ですが,この実践活動に大変な努力を傾注されてきました。それを置籍校の学校全体に広げるとともに,できるだけこの知見を他の学校にも広げてもらえるとありがたいと思っています。この二年間,中島先生の学びに多大な支援をしていただいた藪塚本町中学校の皆様に深く感謝いたします。
(文責:山口 陽弘)
2024年10月9日、教職リーダーコース2年生の櫻井康平先生の実践発表と実践検討会が、勤務校である富岡市立高瀬小学校で行われました。櫻井先生の研究テーマは「子どもたちのエージェンシーを高める委員会活動—教員からの自律性支援による児童・生徒のAARサイクル活性化を通して—」です。
生徒エージェンシーは、「変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力」(秋田他,2020)とされ、群馬県においてもその育成が重要視されています。
櫻井先生は、エージェンシーを育むために、児童・生徒の自律的な委員会活動を支える自律性支援を行い、見通し(Anticipation)・行動(Action)・振り返り(Reflection)のAARサイクルを自分たちで回せるようになることを目指して指導を行ってきました。
2023年度は、富岡市立南中学校の生徒会本部役員を中心として各委員会に対して実践を行いました。富岡市立高瀬小学校に異動となった2024年度には、5年生と6年生の企画委員会の児童を主な対象として実践を行いました。企画委員会は、学校全体の行事などを企画すること等を主な活動内容としています。
実践発表と実践検討会には、実習校の校長先生・教頭先生・先生方、富岡市教育委員会事務局学校教育課指導主事の茂木友香里様、近隣の小中学校の先生方、本学教職大学院生等、合計14名が参加しました。事前の櫻井先生からの研究説明に続いて、企画委員の児童たちによる後期企画委員会の初回の活動が行われました。企画委員の児童たちは、前期の委員からの引き継ぎの後、4グループに分かれAARサイクルの「見通し(A)」を意識して後期の目標をどのようにするかについて話し合いました。また、この話し合いには、学校を構成するメンバーの一人として各グループに1~2名の教員が参加しました。時間の都合上、目標を時間内に確定させることはできませんでしたが、児童たちと教員が互いに意見を出し合い、どのような目標にするか検討している姿が見られました。
その後、協議会の参加者が2グループに分かれて協議を行った後、茂木指導主事様から指導助言をいただきました。教員と児童の課題意識が共有されていることや、学年を越えて児童同士が交流できるようにしたいという企画委員会の前期の振り返りを活かした目標案の方向性について、肯定的な評価をいただきました。
最後に本学 佐藤浩一教授がお礼を申し上げ、閉会しました。
(文責:鈴木豪・川野文行・佐藤浩一)
2024年9月30日(月)に教職リーダーコースの廣瀬裕紀さんの実践発表(公開授業)及び実践検討会が勤務校の伊勢崎市立境小学校で行われました。
廣瀬さんは「多様なニーズをもつすべての児童が主体的に学習に向かうために-UDLガイドライン・DLAを活用したチームによる児童理解からの授業づくり-」をテーマに実践を重ねてきました。研究では様々な困難さを持つ児童を理解するために,その児童と関わる立場の異なる教員がチームとなることの重要性を示し,多面的な児童理解に基づく「すべての児童にわかりやすい授業」の実施を目指してきました。理科専科として児童と関わる廣瀬さんは,特に特別な教育的支援を要する児童や海外にルーツに持つ児童が通常学級で学習するにあたり,担任と連携しながら特別支援教育コーディネーター,日本語教室指導担当教員,養護教諭,心理士,教育支援員等とのチーム会議を行い,困難さが異なる児童一人一人の理解に努めてきました。2学期はさらにここで得られた児童の個別の困難さに加えクラス全体が持つ困難さをUDLガイドラインの観点から捉え,そこから具体的な支援を実践していくこととしました。
実践発表では3年生の理科「音のせいしつ」の単元において,音の大きさとものの震えの関係を見出す授業を公開しました。事前のアセスメントから「音」や「震え」に対する経験や理解が児童間で大きく異なることが明らかになったため,前時までにクラス全員でトライアングル,音叉,太鼓,音が出るおもちゃなど様々なものに直接触れる共通経験の中で「音が出ている時ものは震えている」ことを理解しました。その上で本時ではトライアングルに貼った付箋の震えを見る実験により児童が大きい音が出た時と小さい音が出た時のものの震え方の違いを考察することをねらいとしました。クラス全体に向けては言葉による混乱を減らすために授業内で使用する日本語表現を統一したり,児童が自分に合ったワークシートを選べるように複数の種類のワークシートを用意したり,実験で使用した楽器だけでなく他の楽器でも試す時間が設けられたりと様々な支援の工夫が盛り込まれました。さらに,個別にもUDLの観点から言葉掛けの内容やそのタイミングなどの支援が計画されました。これらの支援の中,児童は意欲的に実験に取り組み,時間の中で音の大きさとものの震えの関係に気がつくことができていたようです。授業公開には校内外を含め35名の先生の参加がありました。
授業後に行われた実践検討会には伊勢崎市教育委員会教育研究所「自らの学びづくり研究班」に所属されている先生と教職大学院の院生計6名と校長先生,教頭先生,伊勢崎市教育委員会学校教育課の三井指導主事にご参加いただきました。群馬大学教職大学院の教員としては小林,新藤,大島が参加しました。研究の説明後に行われた授業についての協議では廣瀬さんの支援の細やかさやその意図の明確さが確認され,児童のさらなる困り感とその困り感に寄り添う手立てについて活発に意見が交わされました。三井指導主事には廣瀬さんの授業におけるきめ細かいアセスメントとそれに基づく柔軟な学習方法や教材提供を評価していただきました。また廣瀬さんが取り上げている課題が市全体の課題であるというお話もいただき,研究の意義を再確認する機会となりました。会の最後には小林客員教授が謝辞を述べました。
同日放課後に行われた伊勢崎市教育委員会の計画訪問に基づく授業検討会では,勤務校の先生方が「個別最適な学び」「協働的な学び」の2点から廣瀬さんの授業についての検討が行われました。児童が意欲的に実験に参加するための廣瀬さんの学習環境の設定や,児童がさらに考えを深めるための時間の使い方など検討の内容は多岐に渡りました。研修には伊勢崎市教育委員会より吉田児童支援係長,諏訪教科等指導員も参加されていました。吉田係長からは校内研修の観点からも廣瀬さんの授業が一人一人を大切にする授業であったことなどについて評価をいただきました。さらに諏訪教科等指導員からはICTを利用することで「協働的な学び」がさらに促される可能性についてもご示唆をいただきました。
実践の公開,検討会にご協力いただきました伊勢崎市立境小学校の青野校長先生,中野教頭先生をはじめとする境小学校の先生方,当日参加していただき,深い議論を交わしていただいただいた先生方に深く感謝いたします。
(文責:大島みずき)