2024年2月5日
東北学院大学教職員各位
東北学院大学
学長 大西 晴樹
本学教職員の皆様におかれましては、日頃より学生の学修支援にご理解とご協力を賜り心より感謝申し上げます。
さて、昨今の生成AI技術の飛躍的進歩には驚かされるものがあります。この技術は我々に多くの有益な力を与えてくれるものと期待する一方で、教育研究においてはその適切な利活用方法を日々模索している状況です。
生成AIの利活用に関しては、2023年6月8日付公示「生成AIに関する学長メッセージ」において学生に対し、その時点で考え得る限りの留意事項を簡潔に示しましたが、この度は学年待つを迎えるにあたり、教育指導を行うお立場の皆様に改めて前述の文書を及びいただくことをお願い申し上げると共に、よく質問をいただく事項についてまとめ、お示しするものです。
なお、本学では、近くGoogle LLCが提供する生成AIサービス「Google Bard(試行運用中)」を学内(g.tohoku-gakuin.jpならびにg.tohoku-gakuin.ac.jp)でも使用可とする準備も進めております(これについては別途ご連絡申し上げます)。
つきましてはこの文書を参考にしていただき、卒業研究や期末試験、レポート作成において、学生が生成AIを正しく利活用できるようご指導いただければ幸いです。
生成AI技術は非常に進歩が早いため、その動向に十分注視していただき、教職員間でも相互に活発な情報交換を行ってくださいますようお願いいたします。
学生には生成AIによって提供された内容を、そのまま自分の学術的な成果物として提出することのないようにご指導ください。このような行為は学生の思考力や成果物としての独自性を損なうだけでなく、剽窃(ひょうせつ)と見なされる可能性があり、学術的な不正行為にあたります。AIの出力はあくまで参考材料として利用し、学生自身が独自の分析や考察にもとづいて成果物を作成することが重要です。
例えば、卒業論文をはじめとした学術論文、レポートやエッセイの作成において、文章校正などに使用することはかまいませんが、論文等の成果物の本質的な内容を生成AIに作成させ、出力をそのまま利用することは明らかに不正行為となりますので、学生には自分自身の思考や分析を適切な方法により成果物に反映させるよう、注意喚起をお願いいたします。
生成AIが提供する情報は必ずしも正確とは限らず、時に誤った情報を含むことがあります。AIは過去のデータを基にして、要求に応じたもっともらしい回答を生成しますが、これは常に事実に基づくとは限らず、事実に基づいていたとしても誤った内容を出力することがあります。したがって、信頼できる文献や情報源により、AIからの出力の正誤を必ず確認し検証するよう、学生にご指導ください。
例として、生成AIによって関連研究の調査、論文の要約、データ処理などを行う場合には、AIの出力が正確であると仮定せずに、自身の手による調査、内容の精査、処理の妥当性の検証が必須であることを、あらかじめ学生にご説明ください。
基本的には、これまでの教育・指導方針と何ら変わらないと考えます。要するに、すべての大学生が一律に「すべての学問分野において微に入り細を穿つ不完全な学修相談相手を手に入れた状態になった」ということですから、それが人間であれ、生成AIであれ、正しい学び方、利用の仕方を理解させ、そのような存在を前提に今までどおりご指導いただければよいと考えます。
生成AIに情報を入力する際には、個人情報、機密情報、未公開の研究内容、著作権で保護されている素材を入力しないよう学生にご指導ください。これらの情報は、AIの学習に使用され、意図せず情報漏洩のリスクを生じさせる可能性があります。特に、個人情報や未公開の研究データの取り扱いには十分な注意が必要です。
例えば、自分の個人情報を生成AIに入力した場合、その情報がネット上に公開され、プライバシーの侵害につながる可能性があります。同様に、未公開の研究データを入力すると、それが外部に漏れることで、研究成果の流出、盗用や著作権違反に繋がる可能性があります。
AIが学習に利用したデータの偏りやAIが情報を生成する仕組みなどに由来して、AIの出力には不正確な情報や偏見が含まれることがあります。学生には、AIによる情報の妥当性や公平性を常に確認するようご指導ください。
例えば、特定の文化や社会に関連するトピックについての出力が偏った視点に基づいていたり、数値やデータの取り扱いを間違えたり、入力した内容と整合しない結果を出力することがあります。このため、学生には、AIからの情報を常に批判的に評価し、多角的な視点からの検証を促してください。
生成AIによって作られたテキストや画像などの出力には、意図せずに第三者の著作権を侵害する内容が含まれている可能性があります。これらの出力を学生が自身の成果物として使用する際、著作権などの権利侵害の問題を慎重に考慮し、確認するようご指導ください。
例えば、AIが生成した画像やテキストが、既存の著作物と類似している場合、それを利用することで著作権侵害となる恐れがあります。レポートや論文、プレゼンテーションでの使用においては特に注意が必要です。
文科省: 大学・高専における生成 AI の教学面の取扱いについて(周知)
https://www.mext.go.jp/content/20230714-mxt_senmon01-000030762_1.pdf