教育・学習データ利活用ポリシーの策定について
東北学院大学学長 大西 晴樹
大学等高等教育には教育・研究・経営を支援するさまざまな情報システムが導入され、各システムには教育・学習データが蓄積されているが、その多くが個人情報であるということから、各機関ではその利用に慎重にならざるをえず、個人情報保護法でうたわれた適切な利活用と流通には二の足を踏んでいる状況である。
そこで、大学等高等教育におけるICT利活用を促進することを目的とする大学ICT推進協議会(AXIES)では、教育・学習データの利活用の推進を図るため「教育・学習データ利活用ポリシー」のひな型を提供し、各機関においてポリシーを制定する際の参考として示している。以下に示す案はそのひな型を基に関連法令や学校法人東北学院・東北学院大学の関連規程との整合性を踏まえて作成したものであり、新入生を含めた全学生に対して教育・学習データの取り扱いに関する同意を得る必要がある。
1.東北学院大学教育・学習データ利活用(EDU: Educational Data Utilization)宣言
東北学院大学は、(日本を代表する・地域に貢献する)高等教育機関として、日々の教育や学習に関するデータを安全な方法で取得・保持・分析し、客観的データに基づく教育改善や学生等の学習支援を図るととともに、データ利活用から得られた叡智を公開し、国民と人類の福利に貢献します。
2.東北学院大学教育・学習データ取扱8原則
東北学院大学は、以下の原則1に従い、個人情報保護法などの関係法令を遵守しプライバシーを尊重するとともに、教育・学習データを個人情報として取り扱い、その権利者の意向を最大限配慮して運用します。
1 利用目的を明示し、目的外には使用しません。
2 利用方法とその結果を明示します。
3 いつでもデータ利活用に関する同意を取り下げることができます。
4 個人情報保護法などの関連する法令を遵守します。
5 いつでも自分のデータにアクセスできるようにします。
6 データの分析結果の公表については個人が決して特定されないようにします。
7 データに適切な安全管理措置を施します。
8 研究成果やデータの共有によって、人類の福利に貢献します。
3.東北学院大学における教育・学習データの利活用に関するガイドライン
(背景)
教育の情報化の進展に伴い、LMSやeポートフォリオ等に蓄積される教育・学習データを利活用し、教育・学習を支援する研究(ラーニングアナリティクス)や機関としての特徴を分析するIR(インスティテューショナルリサーチ)が活発に行われている。しかしながら、個人情報を含む教育・学習データを適切に扱うための指針は存在せず、各機関において手探りで行われているのが現状である。したがって、教育・学習データの利活用を進めるためのガイドラインの策定が必要となっている。
(趣旨)
東北学院大学は、一機関の教育の改善のみならず、我が国の高等教育、ひいては人類の福利のため、関連法令の遵守のもと、教育・学習活動において情報システム等に蓄積された個人情報を含むデータ (以下「教育・学習データ」という。)を有効に利活用するためのガイドラインを以下のように定める。
(目的)
1. 教育・学習データは、その分析や可視化などにより教育・学習を支援するため用いられるものであり、これ以外の目的には利用しない。
(体制)
2. 上記の目的を達成するために、東北学院大学は教育・学習データの利活用及びその研究利用や共有を推進するデータ管理責任者(東北学院大学学長)を置く。
(教育・学習データの取得)
3. 東北学院大学は、学生並びに教職員(以下「データ主体」という。)に、取得する目的ならびにデータ項目を明示し、かつ同意を得た後に教育・学習データの取得を行う。データ主体はいつでも同意を取り下げることができるものとし、取得するデータ項目に変更がある場合にはその旨を通知するものとする。
(教育・学習データの管理)
4. 取得した教育・学習データは個人情報であり、個人情報の保護に関する法律などの関係法令、プライバシーポリシー、情報セキュリティポリシー、研究データ管理など学校法人東北学院・東北学院大学の関連規程に従い、適切に管理する。加えて、「東北学院大学における教育・学習データの管理に関する基本方針」とその体制を定めるものとする。
(教育・学習データの利活用)
5. 東北学院大学は、教育・学習データの閲覧、分析を含む利活用の方法をデータ主体に明示するものとし、変更がある場合にはその内容をウェブサイト等で告知するものとする。
(研究成果の公開)
6. 教育・学習データを利活用して得られた知見等は、我が国の教育活動並びに人類の福利に貢献するように公開する。なお、 研究発表を行う場合は、学校法人東北学院・東北学院大学の研究倫理に関する規程に従うものとする。
(その他)
7. 本ガイドラインに定めるもののほか、教育・学習データの利活用に関し必要な事項は、東北学院大学において定めるものとする。
4.東北学院大学で使用する教育・学修関連システムにおける個人情報を含む教育・学習データの取り扱いに関する同意書
東北学院大学は、学校法人東北学院個人情報保護規程(利用目的の通知等)第14条に基づき、東北学院大学で使用する教育・学修関連システム(LMS、e-ポートフォリオ、教務システム等)における個人情報を含む教育・学習データを下記の通り取り扱います。
記
1. 利用目的
個人情報を含む教育・学習データを分析し可視化することにより、東北学院大学の教育・学修を支援するために利用し、これ以外の目的には利用しません。
2. 利用ポリシー
東北学院大学EDU宣言、教育・学習データ取扱8原則に従います。
3. 取得するデータ項目
職員番号/学籍番号、氏名、年齢、性別、学部、学科、履修科目名、本学教育・学修関連システムへのアクセス履歴、本学で管理している小テストや課題の提出ならびに評点情報、データ項目に変更がある場合にはすみやかに本学のウェブサイト等でお知らせします。
4. データの管理
取得した教育・学習データは個人情報であることに留意し、関連法令、学校法人東北学院・東北学院大学の関連規程に従い管理します。データ管理責任者は学長とし、問い合わせ窓口は東北学院大学学務部学修支援課とします。
5. データの利活用
原則として、管理している教育・学習データの閲覧と分析ができるのは東北学院大学教職員に限ります。
6. 分析結果の公開
教育・学習データの分析により得られた知見を対外発表などにより公開することがあります。その場合は学校法人東北学院教育職員倫理規程、東北学院大学における研究活動上の不正行為の防止、対応等に関する規程に従うものとします。
上記の取り扱いに同意しない場合は、「東北学院大学で使用する教育・学修関連システムにおける個人情報を含む教育・学習データの取り扱いに関する同意の取り下げ願い書」に必要事項を記入・押印の上、学修支援課の窓口(五橋キャンパス講義棟2階)に提出してください。なお、「東北学院大学で使用する教育・学修関連システムにおける個人情報を含む教育・学習データの取扱いに関する同意の取り下げ願い書」を提出した場合には、東北学院大学で使用する教育・学習関連システム(LMS、e-ポートフォリオ、教務システム等)の一部機能が利用できなくなる等、授業の履修において、他の学生と同じ教育指導が受けられない場合があることをご理解ください。
5.東北学院大学における匿名加工情報の利活用に関するガイドライン
(背景)
教育の情報化の進展に伴い、LMSやeポートフォリオ等に蓄積される教育・学習データを利活用し、教育・学習を支援する研究(ラーニングアナリティクス)や機関としての特徴を分析するIR(インスティテューショナルリサーチ)が活発に行われている。このような情報をもとに匿名加工情報を作成することが考えられるが、その研究利用のための指針は存在せず、各機関において手探りで行われているのが現状である。したがって、教育・学習データを匿名加工情報として利活用を進めるためのガイドラインの策定が必要となっている。
(趣旨)
東北学院大学は、一機関の教育の改善のみならず、我が国の高等教育、ひいては人類の福利のため、関連法令の遵守のもと、教育・学習活動において情報システム等に蓄積されたデータ(以下「教育・学習データ」という。)から作成した匿名加工情報として有効に利活用するためのガイドラインを以下のように定める。
(目的)
1. 教育・学習データから作成される匿名加工情報は、その分析や可視化などにより教育・学習を支援するため用いられるものであり、これ以外の目的には利用しない。
(体制)
2. 上記の目的を達成するために、東北学院大学は教育・学習データの利活用及びその研究利用や共有を推進するデータ管理責任者(東北学院大学学長)を置く。
(教育・学習データからの匿名加工情報の作成)
3. 東北学院大学は、教育・学習データをもとに匿名加工情報を作成するときは、特定の個人を識別すること及びその作成に用いる教育・学習データを復元できないよう、教育・学習データを加工しなければならない。
(匿名加工情報の管理)
4. 東北学院大学は、匿名加工情報の加工方法等情報(匿名化手法および個人情報を復元できる情報)の漏えいを防ぐための措置を含め、東北学院大学のプライバシーポリシー、情報セキュリティポリシー 、研究データ管理など学校法人東北学院・東北学院大学の関連規程に従い、適切に管理する。さらに、「東北学院大学における教育・学習データの管理に関する基本方針」とその体制を定めるものとする。
(匿名加工情報の作成時の公表)
5. 東北学院大学が匿名加工情報を作成したときは、匿名加工情報取扱事業者として、その作成の事実ならびに第三者提供の対象となるデータ項目ならびにその提供の方法を公表しなければならない。
(匿名加工情報の第三者提供)
6. 東北学院大学が匿名加工情報の教育・学習支援を目的とする第三者への提供を行うときは、第三者に当該情報が匿名加工情報であることを明示し、提供する事実ならびに匿名加工情報に含まれるデータ項目ならびに提供方法を公表するものとする。
(識別行為の禁止)
7. 東北学院大学および教育・学習支援を目的とする第三者は取り扱う匿名加工情報から特定の個人を識別するために他の情報と照合してはならない。
(研究成果の公開)
8. 教育・学習データから作成された匿名加工情報を利活用して得られた知見等は、我が国の教育活動並びに人類の福利に貢献するように公開する。なお、 研究発表を行う場合は、学校法人東北学院・東北学院大学の研究倫理に関する規程に従うものとする。
(その他)
9. 本ガイドラインに定めるもののほか、教育・学習データから作成された匿名加工情報の利活用に関し必要な事項は、学校法人東北学院・東北学院大学において定めるものとする。
6.東北学院大学における匿名加工情報の作成及び第三者提供について
東北学院大学は、個人情報の保護に関する法律や学校法人東北学院個人情報保護規程(仮名加工情報の作成等)第31条ならびに同規程(匿名加工情報の作成等)第32条等に基づいた適正な加工方法に基づき、特定の個人を識別することができない匿名加工情報を作成し、我が国の高等教育政策や大学生等の実態調査に用いるために、教育・学習支援を目的とする第三者に匿名加工情報を提供することがあります。
作成および提供する匿名加工情報に含まれる情報の項目は以下の通りです。
性別、年代、学部、東北学院大学で使用する教育・学修関連システムへのアクセス履歴、教育・学修関連システムで管理している小テストや課題の提出ならびに評点情報。
匿名加工情報の第三者提供方法は学校法人東北学院個人情報保護規程(仮名加工情報の作成等)第31条第4項ならびに同規程(匿名加工情報の作成等)第32条第4項に基づき、次の通りとします。
匿名加工情報のデータを暗号化後、提供先が運用管理するサーバへのアップロードまたは、外部記録媒体を郵送する方法で提供します。
東北学院大学における教育・学習データの管理に関する基本方針
1.基本的な考え方
東北学院大学(以下「本学」という。)は、教育・学習活動において情報システム等に蓄積された個人情報を含むデータ、すなわち、教務、授業設計、成績、アンケート調査、記述情報、課題情報、教材への接触情報、教育・学修関連システムへのアクセス情報、教育環境及び健康・生体情報等(以下「教育・学習データ」という。)を保護するための方策を講じる。
本学情報セキュリティポリシーに基づき、教育・学習データの影響度や重要度に応じて複数のセキュリティ対策を施すことで、漏えい防止に務める。
また、外部からのサイバー攻撃や内部不正に対して、技術的、人的及び組織的な対策を講じ、データ主体である学生及び教職員の権利や利益を損なわないよう努める。
2.データを保護するための対策
(技術的対策)
情報漏えいが起こる原因は、サイバー攻撃(外的要因)と不正持ち出し(内的要因)に大別される。本学では、これらの脅威に対して以下の技術的対策を講じる。
・ サイバー攻撃による被害を防止するため、本学の情報システムに対してセキュリティ対策を行う。また学内外から監視を行い、早期検知と迅速な対応に努める。
・ 不正持ち出しを防止するため、教育・学習データを保存する各情報システムに利用者認証機能を設け、当該データにアクセスできる者を制限する。
(人的対策)
セキュリティ対策をより強固なものとするには、技術的対策に加えて人に対する対策も必要となる。本学では、この課題に対して以下の人的対策を講じる。
・ データ主体に対して、個人情報の保護に関する法律などの関係法令、学校法人東北学院・東北学院大学の個人情報の取扱いに関する規程、情報セキュリティに関する規程などの関連規則の周知および情報漏えい防止に必要な知識を修得・維持するための教育・啓発等を必要に応じて実施する。
(組織的対策)
技術的対策及び人的対策を確実に実施するため、本学におけるセキュリティ維持のための組織体制を整備する。
・ 情報セキュリティインシデントの発生時に迅速かつ円滑な対応を図るため、学校法人東北学院情報セキュリティインシデント対応チーム(CSIRT)を置き、情報セキュリティインシデントの認知時における報告・対処等に対応する。
・ 各部局における情報システムの管理・運用に関する業務を所掌させるため、情報システム部局責任者(以下「部局責任者」という。)を置き、学校法人東北学院情報セキュリティ委員会ならびに関連委員会(学校法人東北学院事務情報システム管理運営委員会、学校法人東北学院総合ネットワーク管理委員会等)が部局責任者をサポートし、施策の実施状況や有効性の確認、改善を支援する。
学生のみなさんへ
教職員のみなさんへ
その他