学会創立20周年記念事業セッション

【学術委員会企画】

「スペキュラティヴ」文化研究

――「面白すぎる!」文化研究を目指して――

話題提供:鳥塚 あゆち(青山学院大学)

モデレーター:湊 邦生(高知大学)・岡部 大祐(順天堂大学)

ファシリテーター:田崎 勝也(青山学院大学)・河野 秀樹(目白大学)

はじめに:多文化関係学会創立20周年に向けて

本企画は多文化関係学会創立20周年に向けた記念事業の一環として行われる連続シンポジウムの第1回であり、記念事業全体のキック・オフ企画としても位置づけられるものです。そこで、本企画自体のご紹介の前に、この記念事業の趣旨についてご説明させていただきます。

多文化関係学会は2021年に設立20周年を迎えます。この節目を記念すべく、今年度(2018年度)から2021年度にかけて行われるのが、今回の記念事業です。しかし、本事業は学会創立20年という「過去」を振り返り、記念することにとどまるものではありません。「100年ライフ」という言葉が定着しつつある中、学会創立100年となる22世紀をも見据えた上で、本事業は多文化関係学と学会の将来を切り拓こうとするのが、この記念事業です。このような上記の目的を達成するため、本事業は、(1) 今後10年(2031年まで)の学会活動のヴィジョンを明確にし、(2) そのヴィジョンに沿った枠組みを提示し、(3) (1)と(2)に則ったプロトタイプ研究を提出し、評価を行う、という3つのステップで、4年の期間で実施されるものです。

連続シンポジウム(特に2018年度シンポジウム)について

今年度から行われる連続シンポジウムは、本事業の基幹を成すものです。連続シンポジウムは、2021年度までの毎年の年次大会において、以下のテーマで実施していく予定です:

2018年度(思索):スペキュラティヴ文化研究――「面白すぎる!」文化研究を目指して――

2019年度(責任):文化研究の社会的意味を問う――多文化関係学は誰に、何を与え、誰を、何を危険にさらすのか――

2020年度(独創):多文化関係学をつくる文化ツールを想像・創造する――多文化関係学のための方法論はあるか?――

2021年度(未来):侵犯する場としての多文化関係学――「サードプレイス」から「縁側」へ――


第1回となる2018年度シンポジウムの目的は、革新的な研究を生み出す源泉である「文化」探究の「面白さ」を共有し、議論し、それらをより「面白くする」方法を創造することです。そのために、今回のシンポジウムでは、文化研究に携わるさまざまなパネリストが講演を行う形式を採りません。むしろ、このシンポジウムで行われるのは、今年度のキー・ワードとして掲げた「思索」(speculation)です。ここでは話題提供者、モデレーター、フロア全てが参加して、文化研究の多様かつ現実に起こり得る可能性について、自由な想像を交えながら検討していきます。そして、それらの可能性の中で、より面白いもの、より楽しいものの方向性について、ともに「思索」を深めていくことになります。

そのために、シンポジウムでは話題提供者の鳥塚あゆち先生(青山学院大学)を「火付け役」としてお迎えしました。鳥塚先生はラテンアメリカ地域研究をご専門としており、ペルーの高山に位置する共同体に住みこみ、リャマやアルパカを飼っている牧畜民の調査を行われています。シンポジウムでの「思索」は、先生のご研究やその「面白さ」について語っていただくところから始まります。

日本のほぼ対極に位置するフィールドについての語りを出発点に、シンポジウムはフロアでの「思索」に移ります。ここではモデレーター、ファシリテーター、参加者が入り混じったスモール・グループ・ディスカッションを行います。多種多様なフィールド・イシューで文化研究に携わる人々が、ぜひ共有したい研究、発展可能性のある研究について、ときには独断や妄想も交えて語り合っていきます。こ

これらの「思索」によって、本シンポジウムは「面白い」研究の想像を奨励し、新しい研究の創造への端緒となることを目指しています。これは学会内外での文化への自由な探究をバックアップするものであるとともに、学会創立者の一人である故石井米雄博士(京都大学、神田外語大学名誉教授)の発案とされる「ホラロジー」の精神を継承するものでもあります。

4年間の記念事業、さらにはその先に続く多文化関係学会の将来に向けたキック・オフとして、このシンポジウムが「すべき」研究よりも「したい」研究へのドライブとなれば幸いです。研究について語り合うことに、キャリアや職位は関係ありません。どのような立場であれ、これから進めていきたい研究がある方、その「思い」を共有してみませんか。お待ちしております。

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