淡水生態系を対象にした 基礎生態学

湖沼生態系の変動環境に対するプランクトンの適応の解明

湖沼生態系は、富栄養化や外来魚の侵入など人為的な影響や、明瞭な季節変化や極端気象などの自然的な影響を受けており、さまざまな環境変動が起きています。そのような変動環境に対して、プランクトンはどのように応答しているでしょうか。環境の変化にうまく適応することは、プランクトンの生存にとって重要ですが、その実態を野外調査や室内実験により解明する研究をしています。

Daphnia pulex

湖沼での野外調査

実験生態系を用いた生態・進化ダイナミクスの研究

生物の個体数はどんなパターンで変化し、それはどんな生物学的メカニズムで説明できるのでしょうか。自然環境ではいくつもの要因が複雑に影響するため、野外で見られる個体数変化のパターンを説明することはとても困難です。そこで、人工的に小さな生態系を実験室内につくりだし、その中で起こる現象を詳しく調べることにより、個体数変化の原理を探る研究をしています。

プランクトンのミクロコズム・実験生態系

自然再生やグリーンインフラに関する 保全生態学

自然がもたらす多様な機能・生態系サービスの評価

生態系と生物多様性は、さまざまな恩恵を人間社会に与えています。食料や淡水などの供給サービス、気候の調節や大気・水の浄化などの調整サービス、レクリエーションや癒しなどの文化的サービスを持続的に利用するために、人間活動の影響や生態系管理のあり方を検討することが必要です。自然がもたらす多様な機能の現在と将来の評価を、学際的な研究アプローチを用いて研究しています。

J-ADRES: 自然の恵みと災いからとらえる土地利用総合評価

社会ー生態システムにおける地域文化の役割と継承

生態系・生物多様性と人の社会・経済・暮らしは、一体的な社会―生態システムのなかで、密接に関連しています。地域の生態系管理や生物多様性保全にとって地域の文化(知識や技術など)はどのような役割を果たしているか、逆に、地域の自然と人のかかわりを通してどのような地域の文化が育まれてきたか、学際的な研究アプローチを用いて研究しています。

福井県 三方五湖周辺の水辺の暮らし
滋賀県 比良山麓の石文化

Eco-DRRやグリーンインフラの社会実装

生態系がもつ多様な機能を活用する防災減災の手法(Eco-DRR)や、自然が持つ多様な機能を活用して持続可能な社会と経済の発展に寄与するインフラや土地利用計画(グリーンインフラ)を、社会に実現するための取組みを進めています。地域住民や官民の実務者などの多様な関係者と連携して、超学際的な研究アプローチにより実践的に取組んでいます。

福井県三方五湖で取組んでいる自然護岸の再生

治水と生物多様性保全を両立する霞堤

Eco-DRRの研究は総合地球環境学研究所の実践プロジェクトとして進めています。