Research
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リポソーム等の人工細胞は医薬用カプセルとして応用される一方、脆弱性に課題があります。近年、自己組織化したDNAミクロゲルによるネットワーク構造を人工細胞に付与し力学的補強が可能であることが報告されました。現在、DNAネットワークの骨格構造と人工細胞の力学特性の相関の定量化を吸引測定によって行っており、将来的には人工細胞の力学的制御を目指しています。
高分子液滴や脂質ベシクル、生細胞などのソフトマターの力学特性は、基礎科学から応用分野に至るまで極めて重要です。これらの特性を評価するためにマイクロピペット吸引法をはじめとして様々な手法が用いられてきましたが、従来の解析は物質の均一性や線形弾性を仮定しているため、より複雑な変形、とりわけ生細胞やゲルカプセルのようなシェル構造体が示す非線形応答に対しては評価が困難でした。本研究では、曲げと面内伸張の両方を考慮した物理的に裏付けられた解析モデルを提案し、実験データとのフィッティングを通じて、これらの物理パラメータを同時に定量化することに成功しました。
Masuda, K., & Yanagisawa, M. (2025). Analytical model and experimental validation for nonlinear mechanical response of aspirated elastic shells. arXiv. https://arxiv.org/abs/2504.21283
クマムシは乾燥すると極限環境ストレスに対して耐性を示すことで知られている生物であり、乾燥ストレス曝露中に特異的なタンパク質が細胞質中に大量発現します。このタンパク質はヒト培養細胞に発現させるとストレス依存的に線維化することが示されているので、人工細胞中での再現実験を行い、タンパクの線維化が細胞にもたらす力学的影響について明らかにしました。
Tanaka, A., Nakano, T., Watanabe, K., Masuda, K., Honda, G., Kamata, S., ... & Kunieda, T. (2022). Stress-dependent cell stiffening by tardigrade tolerance proteins that reversibly form a filamentous network and gel. PLoS biology, 20(9), e3001780.