平田 裕之

HIRATA Hiroyuki

中央大学文学部兼任講師[哲学専攻]

最終学歴/学位

中央大学大学院文学研究科哲学専攻満期退学

専門分野

ハイデガーを中心とする現代哲学

メッセージ

 「時間」をテーマに本を書きたいと思っています。でも、「時間とは何か」と大上段に問うてしまうと、「時間」というものが狭隘化され実体化されてしまいます。この実体化に手を貸すのは、ふだん私たちが「時間」を語るときに使っている一連の隠喩、慣用句(「時間が過ぎる」、「時間が流れる」等々)です。こうして「時間の流れ」なるものが想定され、その在り処や源が求められることになります。「時間の流れ」を主観の意識に還元しようとする哲学者もいれば、或る物理現象(熱力学的時間や宇宙論的時間)に還元しようとする物理学者もいます。でも、これだと満足な答えは出てきません。

 もしも「時間とは何か」を問おうとするならば、「時間とは何か」を問わないまま、「時間」を浮き彫りにする必要があります。「時間」とはおそらく、私たちがイメージしがちな「時間の流れ」よりも、もっと多義的で複雑なものでしょう。さまざまな「時間」との私たちの日常的な関わり方を際立たせ、それらの統一的な全体図を描き出す必要があります。

 そのために特に役立つのは、ハイデガーの『存在と時間』における時間論である、と私は考えています。でも、一般にハイデガーの時間論は「根源的な時間」から「通俗的な時間概念」の「派生」を説いたものとみなされています。だから、ハイデガーの時間論について、これ以外の読み方を提示することが必要になってきます。

 そんなわけで、ここ数年は「原典講読」の授業でハイデガーの時間論を読んでいます。テキストを丁寧に読んでいくと、他の解釈の余地が残されていることに気づくでしょう。

担当講義/2024年度

Department of Philosophy / Chuo University