EU 公式文書記号
EUの公式文書は多岐にわたり、またその文書ひとつひとつに記号がつけられています。ここでは、まず文書量と検索ニーズが多い欧州委員会(本サイト内「国連/EUの機関構成」参照)の公式文書の記号を中心に説明します。次に、機関横断の法令検索サイトEUR-Lex(本サイト内「EUR-Lex(EU法情報)参照」で利用される統一の記号体系(CELEX number)を説明します。公文書記号の概略をつかむことで、EUに関連する文献サーチのスピードを速めることができます。
欧州委員会その他機関の文書記号
- EU官報 (Official Journal of the European Union)
Official Journal of the European Union(EU官報)は、EU公用語で毎日発行されています。EUの活動(法令・告示)を伝える公式の広報手段です。
【大区分:法令編と告示編】
EU官報は、"L"と"C"の2つのシリーズに大別されます。
”L”はLegislationの略で法令編です。規則(regulatioin)、指令(directive)、決定(dicision)などの法令が掲載されます。
"C"はCommunicationsの略で告示編です。法令制定までの関連情報(欧州委員会の提案など)や会議議事録、EU各機関からの告示(職員公募など)、欧州司法裁判所の判決、公共調達など内容はさまざまです。
【小区分】
シリーズ"L","C"を細分化するために3つのサブシリーズ記号が利用されることがあります。
"A"はannexの略で、 職員募集や公共調達関連の情報が掲載されます。例:OJ C 035 A OJ(官報), C(告示), 035(号), A(annex)
"I"はisolatedの略で、 官報番号に融通性をもたせるために作られた記号で、当該週に発行準備がされている後の官報番号を振り替えずに、必要な官報を適宜差し込んで発行する場合に利用されます。例:OJ L132 I OJ(官報), L(法令), 132(号), I (Isolated)
"M"はMalteseの略で、 マルタ語の特別編などが掲載されます。例:OJ L 118 M OJ(官報), L(法令), 118(号), M (Maltese)
シリーズとサブシリーズを図式化すると次のようになります(図1参照)。
図1
(注)EU官報サブシリーズ("Annex", "Isolated","Maltese")の各日本語名称は、国際機関資料室が本パスファインダーのために記述した暫定的な日本語訳です。
【例】 OJ L001
OJは、Official Journalの略で欧州委員会が発行する「官報」を意味します。
Lは、Legislationを意味する「法令シリーズ」です。
001は、号数で「第1号」を意味します。
したがって、OJ L001は、次のように読みとれます。
官報 法令シリーズ 第1号
※注意
LシリーズとCシリーズは、それぞれ別個に号数がふられていきます。さらには、新しい年ごとに号数がふられなおすため、たとえば官報”OJL001”は複数存在することになります(図2参照)。
ただし、EUR-LEXの検索結果画面や官報には文書記号の隣に発行年月日が記載されているので、その日付情報で見分けがつきます(図3参照)。
2. OJ(官報)以外の文書記号
欧州委員会にはOJ(官報)以外にも別の文書記号があり、またその他のEU機関にも独自の文書記号があります。次にその一例を示します。
COM
欧州委員会が発表した文書の記号で、提案した法案や政策方針、白書(White Paper)・緑書(Green Paper)などがあります。
【具体例】COM/2018/340 final
*Proposal:提案は、立法過程の最初の段階です。欧州委員会からのこの提案は、最終的に欧州議会とEU理事会の署名によりDirective(指令)として法制化されました。なお、ここに例示したプラスチック指令は、パスファインダーの別の箇所でEU立法過程の例として解説してるので参考にしてください。
☞2.テーマ検索ーEUR-Lex(EU法情報)-立法過程のたどり方
PE
欧州議会のレポートや決議などがあります。
ST
EU理事会の会議議題・声明などがあります。
【具体例】ST 5391 2021 INIT**
**このAgenda: 会議議題は、パスファインダーの別の箇所でEU理事会の会議議題として解説してるので参考にしてください。
CELEX number(EUR-Lex内の統一文書記号)
1.CELEX numberとは
これまで説明したとおり、EUR-Lex内で検索できるEUの公式文書は、各機関の文書ごとに固有の記号体系があります。一方で、各機関の文書に統一的な文書記号をつけた仕組みもあります。これがCELEX numberです。機関横断型の文書記号体系 "CELEX number"には2つの利点があります。
文書検索を迅速に実行でき、統一記号から文書内容も推察できる
ある文書と別の文書のつながりを統一記号で判断できる
2.CELEX numberの基本構造
下の図4のとおり、CELEX番号は4つの項目(記号)に分かれています。緑色で表記される部分は、"Sector"(セクター)で、文書の大分類を表します。次の黄色は、"Year"(年)で、文書の発行年を示します。その隣の青は、"Doc Type"(文書タイプ)で、大項目の"Sector"(セクター)をさらに区分する識別子です。末尾につく黒は、"Doc Nr." (文書番号)です。
図4
CELEX番号の基本的な仕組み
EUR-LexWebサイト Frequently asked questions より抜粋して日本語を追加
https://eur-lex.europa.eu/content/help/faq/intro.html#top (最終確認2021年5月17日)
現在は次のサイトに同様のCELEX number説明ページがある(22年7月)。The CELEX number in EUR-Lex
3.CELEX番号一覧と利便性
CELEX番号の一覧は下の図5の通りです。この図では、実際の文書(32000L0060 EU Water Framework Directive)を例示しています。この例をもとにCELEX番号を詳しくみてみましょう。
CELEX番号の利点は、文書番号からその内容が推測できることです。この例では、最初の数字(Sector)が"3"であることから、 "Legislation"(法令)であること、また文書タイプ(Doc type)が"L"であることから、EU法令のひとつ"Directive"(指令)であることがわかります。
図5
CELEX番号 一覧表
この一覧表は、 The CELEX number in EUR-Lex を整理して一部に日本語を追加したものです。
記号一覧の詳細版は、次のWebサイトを参照してください。Types of documents in EUR-Lex(CELEX番号の詳細一覧)
例示したCELEX”32000L0060”は、他の文書記号としても次のような表記があるため、文書検索を複雑にしかねません。CELEXはその点を克服し、統一記号を利用することで、文書検索を容易にします。
【CELEX番号以外での表記例】
<欧州議会・EU理事会>
Directive 2000/60/EC (法令制定時の番号)
欧州議会とEU理事会に承認されたときに本指令は、Directive 2000/60/EC of the European Parliament and of the Council of 23 October 2000と表記されています。
<EU官報>
OJ L 327 (官報掲載時の番号)
EU官報では、本指令は"OJ L 327, 22.12.2000"(2000年12月22日号)に記載があります。
【CELEX番号を利用した文書統合】
また、本指令”32000L0060”は、その関連文書として"02000L0060"があります。CELEX番号のもうひとつの利点は、統一記号を利用して複数文書のつながりを記号から把握できることです。
冒頭のSector記号"0"は"Consolidated acts"(統合編)***を意味します。つまり、冒頭のSectorの数字を"3"から"0"にかえることで、この文書記号は、”2000 L 0060”(2000年・指令・文書番号0060:EU Water Framework Directive)の改正の過程を示す統合文書であること示す仕組みになっています。
***図5のとおり"Consolidated acts"(統合編)には、Sector記号”0”がつきます。”0”記号の文書では、法令のその後の改正内容も含め、現行法とそこにいたる過程を確認できます。
【例】
32000L0060 (法令制定時の公式文書:EU Water Framework Directive)
02000L0060 (その後の改正を含めた統合編:EU Water Framework Directive)
このコーナーの作成にあたっては、次のWebサイト・資料を参考にしました。
European Union, EUR-Lex online tutorials EU公式YouTubeサイトで、EUR-LexやCELEX numberについて音声と動画で解説している。
European Union, CELEX number of EUR-Lex documents CELEX番号の解説がされている。
European Union, EUR-Lex home Frequently asked questions EUR-Lex内にある「よくある質問集」がある。
国立国会図書館, リサーチナビ, EU(欧州連合)ドキュメント・パブリケーション(日本語)
駐日欧州委員会代表部,『EU資料利用ガイド 』, 2006年, (国際機関資料室 EU/01(B)/E ) EUの仕組みや主な出版物・文書検索の方法が解説されている。