○令和7年6月9日(月) 全校朝礼で「所作」についての話をしました。
大相撲の先場所での優勝で横綱に昇進した大の里関。彼は制限時間前に受け取り、自身の汗をぬぐったタオルを毎回綺麗に折りたたみ、一礼して係の人に返すことで有名です。どうせ洗濯機に入れるので、折りたたむ意味はあまりなくほとんどの力士はそのままタオルを係の人に渡しています。なぜ彼はそんなことをするのでしょう。「所作」とは行動や行為を少し堅苦しく表現した言葉ですが、彼の「所作」はまず周囲の人の心を穏やかにしますし、それが勝負前の自分の緊張をほぐし平常心を取り戻すためのルーティンなのかもしれません。また、先日終わった沖縄への修学旅行で、ホテルの部屋の忘れ物チェックをしていると、ある部屋を見て驚きました。燃えるゴミがゴミ箱にきちんと捨てられていたのはもちろん、ペットボトルのラベルがはがされ、空き缶とともにきちんとわかりやすい場所に並べられていたのです。すべてのゴミをゴミ箱にとりあえず捨てるだけで充分なのですが、掃除係の人がゴミ箱に手を入れて分別する手間をかけないように、その部屋の生徒たちがペットボトルや空き缶を分けて整然と並べていたことに心が洗われる思いでした。このように「そこまでやらんでええやん」と思えるような「所作」にもそれなりの意味があるように思います。それは周囲の人を気持ちよくさせることはもちろん、自身の「心を整える」ために大切なことなのかもしれません。6月はなかなかメンタルを安定させることが難しい時期ですが、「ロッカーの整理整頓」や「靴を丁寧に並べてみる」「日頃気がつかない所を掃除してみる」などの「所作」を大切にして「心を整えて」みてはどうでしょうか。
〇1年生が下校途中に荷物をくくるゴム紐が、自転車のチェーンにからまり困っているという救助要請がありました。現場へ行くと、すでに一緒にいる友達がチェーンの油で手を真っ黒にしながら悪戦苦闘の最中でした。でもそばには工具のドライバーが置いてあり、聞くとご近所の方が貸してくださったようです。わたしも「これから、オペを始める!」とか言ってちょけながら生徒たちとワイワイ話しつつ、ゴムをはずそうと試みました。すると背後から笑い声が。「校長先生のパ○○見えた!」どうやらしゃがんでいる間にわたしのズボンがずれていたようです。すぐにでもズボンを引き上げたいのですが、私の手もすでに真っ黒で「どうしよう」と思っていたら、工具を貸してくださった近所のわたしより少し「先輩」の女性が「わたしが、やったる!!」と後ろからわたしのズボンを「グイ!」と引き上げてくださいました。周囲はみんな大爆笑です。わたしも恥ずかしいやら、何とも言えない気分でした。でも一緒に帰っていたクラスメートはみんなそこに残って手伝ってくれたし、印象に残ったのはある生徒が「日本に生まれてよかったあ!」としみじみ語ったことでした。その女性が心配して手伝ってくださったことがよほどうれしかったのでしょう。大げさかもしれませんが、このような日本の道徳心の高さは、日本の小中学校時代の教育が大きく貢献していると思います。後日、女性のお宅にお礼に伺うと「いつも中学生の子らが通学時に元気にあいさつしてくれるのが、とてもうれしいんですよ。」とおっしゃっていただきました。思わぬアクシデントでしたが、おかげで心温まるひとときを過ごすことができました。
〇教育実習が5月26日(月)より始まりました。本校の卒業生1名が実習をおこないます。長い間教員をしていると、教え子たちがたくさん教員になり、久しぶりに出張先で再会し立派に勤めている報告を受けたりすると素直にうれしく思います。教員の過酷な労働環境が知られるようになって久しくなりますが、それでもなお教員を目指そうとする若者がいてくれることは、わたしたちにとっても何よりの励みになっています。理想と現実のギャップが激しい職種であることから、着任1年で辞めてしまう教員も少なからずいると耳にします。しかし一方で、日々の子どもたちの成長を目の前で実感できるとてもやりがいのある仕事でもあります。是非がんばってほしいですね。ちなみに今年度から、わたしの教え子の一人が「教員」ではなく「教頭」になりました。これではわたしも歳をとるはずです。(泣)
〇今年度の生徒総会が5月9日(金)に開催されました。今年の生徒会本部役員を中心に一部の校則について変えていこうという動きを見せてくれています。原案を見せてもらいましたが、読み込んでいくと非常によく考えて練られたクオリティの高いものでありました。越えるべきハードルはたくさんありますが、「自由と責任」について主体的に考えるこのアクションには頼もしいものを感じています。