合同会社Good shotの顧問をお願いしている、元デ杯選手、
武鑓正芳コーチ。
レッスンを通して、武鑓コーチが伝えたいと思っている
熱い思いを、インタビュー形式で語っていただきました。
---------- まず、テニスとの出会いを教えてください。
故郷の岡山で、父が言っていたゴルフ場に、テニスコートが隣接していたんです。
小学生4年生ごろにその壁打ちで遊んでいたら、コーチから「坊主やってみるか」と声を掛けて
いただき、レッスンに通うことになりました。父はゴルフをやってほしかったみたいなんですけど。
----------- 「コーチから声が掛かる」ということは、当時から見込みがあったんですね。
いや、そんなことはないです(笑)。
ただ、やんちゃ坊主だったので、礼儀を教えてもらえることもあって、当時は剣道に打ち込んで
いて、まずまずの戦績もあげていました。小学校高学年になると、テニスの方が面白くなって
しまい、剣道の師匠に頭を下げに行き、テニス1本に絞りました。
今でも、練習前の道場の感じなどは好ましく思い出していて、機会があったらやってみたい
スポーツです。木刀もまだ持っています(笑)。
---------- 中学生時代は、どんな環境で練習していたのですか。
当時岡山県の国体選手だった「天満屋テニススクール」の
石川武平コーチと、オンコートからロードワークまで
二人三脚で練習していました。
中国大会は、三連覇していますが、全国では勝てませんでした。
「勝てなかった」ということが高校時代へのモチベーションに
繋がった部分もあります。
---------- テニスの名門柳川高校へ進学するきっかけは。
中学3年生で柳川高校から声を掛けていただきました。ただ、初めて夏休みに練習に参加した時、
「コート3面うさぎ跳び」があって。もちろん、最後までできるはずもなく、途中で脱落です(笑)。
悔しかったので、進学を決めてから、うさぎ跳びの練習もした上で、入学しました。
---------- 柳川高校での一番の思い出を教えてください。
1年生の時は、団体メンバーとして、ダブルスに起用されました。なので、とにかくスマッシュを
叩き込まれました。ボールを出す先輩は交代しますが、打つ1年生は最長で3時間交代無しで打ち
ます。今では考えられないスパルタですが、おかげで、スマッシュだけはどこからでも、何本でも、
打てる自信がつきました。
---------- 大学進学で上京された時はどんなお気持ちでしたか。
進路や進学先に迷いが無かったわけではないのですが、高校で
既に親元は離れていたので、ナショナルチームの練習に入る予定
があったり、とにかく先のことを考えていました。
---------- 東海大学時代の一番の思い出を教えてください。
思ったよりも、競技と授業受講の兼ね合いが難しく、苦労した
ことを覚えています。
---------- 東海大学大学院に進学されるきっかけは。
大学より薦めてもらい、進学を決めました。同時にプロ登録もしたので、学生プロとしての
船出でした。
---------- プロ転向1年目で、「全日本プロ」のタイトルを手にされましたね。
決勝が、アメリカ帰りで、同じくプロ1年目の松岡修造くんとでした。
---------- プロ活動での一番の思い出を教えてください。
プロ活動中は、1年の3分の2は海外でツアー生活でした。住民票を実家の岡山に置き、日本での
生活拠点も作らず、ホテル住まいで、遠征に次ぐ遠征です。
でも、そのおかげで、「世界は思っているよりも近い」「日本の常識だけが通る訳ではない」と、
視野を広く持つことができました。
---------- プロ活動後半から、コーチとしてのキャリアも始まりましたね。
プロ活動後半の自分のプレーの場は国内だけと決めて、オファーのあったプロのサポートをして
いました。特に、澤松奈生子さんは2年ほどサポートさせていただきました。
---------- 技術論で欠かせない「1000分の4秒」との出会いについて教えてください。
現役時代、ボルグ、マッケンロー、ベッカー、エドバーグ、レンドル等、多種多様な選手を
見ました。エドバーグとは、セイコースーパーテニスで来日した際に、練習したことがあります
よ(笑)。その多種多様なプレーに触れるうちに、「早く引く」「膝を曲げる」「腰を落とす」など、
自分が今まで意識してきたことが、全選手共通ではないなと違和感を感じました。全ての選手に
共通する技術論があるはずだと。
そのころ、スポーツ学会に属していたこともあり、目にした
論文に「打点の瞬間はおよそ1000分の4秒」だとありました。
全選手に共通していることは「これだ」と思いました。
どんなフォームでもいい。そのプレーヤー、プレーヤーの
打ちやすい形で、そのわずかな瞬間をとらえているにすぎ
ないんだと。
---------- コート上でよく声かけされる「どこで」「どう」について教えてください。
「どこで」は打点の位置のことです。「どう」は面の向き、ストリングの使い方、回転の掛け方の
ことを伝えています。
そのことだけを意識して、打ってほしいからです。他のこと、例えばフォームや、狙いたいコース
に気を取られないで、です。
---------- プロと一般のプレーヤーの違いは何ですか。
プロと一般のプレーヤーでは、体力や筋力の差はありますが、技術としては全て地続きだと思って
います。
もちろんゲームになれば、経験値がモノを言う場面もありますので、その差はあります。
ただ、技術論としては、同じです。その精度が、高いか低いか。プロともなれば、高くて当然です。
---------- 「同じことばかり言っている」と言われることに
ついてはどうですか。
ボール出しのボールでも、全く同じではないですよね。
ラリーになれば、なおのことです。
その日の体調、気候、様々な要因で、同じに見えるラリーも
全て違います。
違うボールに対して、注意することは同じです。
でも、ボールを追うことに夢中になると、そのポイントを忘れてしまうことがあります。
そこで、コーチの仕事です。根気強く、忘れないように、言い続けます。
---------- コート上で一番大切にされていることは何ですか。
プレーヤーの方の、打点をチェックしています。それが一番大切だからです。
そのために、私と打っていただく際には、他のストレスが少ないように、ボールをコントロール
し続けています。
それができるように、日々のトレーニング、筋トレはもちろんですが、ダブルニ―ジャンプ20回を
欠かしません。
---------- あなたにとってテニスとは何ですか。
丸いボールは、ラケットで打った通りに正直に飛んでいきます。
その様子に、いつも救われるような気持ちになります。
生涯続けていきたい、続けていただきたいスポーツです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました