挨拶

領域代表 :鈴木 雄太

京都大学

白眉センター 特定助教

遺伝子操作技術の発展に伴い、タンパク質の機能や構造を設計するタンパク質工学は目覚しい発展を遂げました。大きな成果の1つとして、酵素機能を劇的に向上させる「分子進化法」が2018年ノーベル化学賞に選出されています。また、構造生物学の飛躍的な進歩によって得られたタンパク質の構造情報によってRationalデザインに基づく「構造機能設計」「触媒機能設計」が可能となり、様々な高次構造体や人工酵素が生み出されています。タンパク質工学を次の段階へと押し上げるには、個々に高度に発達してきた3つの方法論を再統合する必要があります。しかし、これらの最先端の知識・スキルは、個々人が独自に学んで活用できるほど汎用的なものではありません。


本領域は、3つの方法論を用いて異なる視点からタンパク質デザインに取り組んできた若手研究者で構成されます。私は博士研究員として、アメリカでタンパク質構造体の研究に取り組んでいました。時を同じくして、岡本(A02班)、寺坂(A03班)も海外の研究室で異なる方向性のタンパク質工学に従事していました。面識はないものの、私は当時から彼らの研究成果に注目していました。その後、それぞれが国内でポジションを得たこともあり、2019年に知り合う機会を得ました。この出会いを機に、タンパク質工学のめざすべき方向性について討議を重ねる中で、生命現象の機能的要素の再現、さらにはそれを超える高次機能を発現する「構造変化と機能発現が連携した高次機能性タンパク質集合体の構築」という共通課題を見出しました。

この課題の解決には、3名の知識・スキル全ての統合が必要不可欠であるという共通認識の下、次世代のタンパク質デザイン学理『SPEED』の提案に至りました。単なる「技術提供という共同研究」ではなく、「異なる研究のバックグランドから共通する研究課題を見出し、共に挑む共同研究」を通じて、タンパク質工学の発展に寄与できるよう尽力します。

我々は若い駆け出しの研究者であり、本支援をもってはじめてこの研究をゼロから始動することができます。 国内外の同世代PIたちと伍するため、この研究を我々の基盤とすべく、研究活動に邁進します。2年半の研究期間において、本領域の目標である次世代タンパク質デザインの学理『SPEED』の構築をめざします。将来的には、さまざまな研究分野と横断的にチームアップすることで、高次機能性タンパク質集合体による細胞機能制御や人工細胞の構築、あるいは自己修復バイオマテリアルなどへ展開していきたく考えております。そのため、本研究期間においても、領域の枠にとらわれず、幅広い研究分野の国内外の先生方との情報交換・連携・共同研究を推進できるよう尽力していきます。皆さまのご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

京都大学 白眉センター 鈴木雄太