6BX7-PPアンプの製作

スーパースワンで音楽を楽しみながら、アンプ製作の方も金田アンプからMOS-FETコンプリ(No-NFB)+カレントミラーへと変遷していたのですが、そう言えば真空管アンプとスワンの相性を確認していなかったことに気が付きました。5~6年前に製作した6BX7シングルをあれこれいじってみました。音のやわらかさの中に張り詰めた臨場感の感じられる、なかなか良い感じで鳴ってくれました。カップリングコンデンサはSOLEN、初段と終段のカソードパスコンはBGを使い、特にVn,Pfなどのソロ演奏では独特の音色が魅力的なアンプに仕上がりました。しかし、大編成のオケなどでは、どうしても歪が気にかかります。真空管の場合は二次歪が主成分とは言っても、半導体に親しんだ耳では許容できない気持ちを持ちました。ちょうどそのころ、無線で知り合った親しい友人であるJA0KYBさんから、6BX7パラのアンプを作ったとのメール(素晴らしい出来栄えの写真を添付していただいた)をもらいました。いろいろ話をうかがったところ、少量のNFBをかけているとの事、「これだ!!」と思いました。No-NFBにこだわっていた頭を切り替えて、早速試してみました。結果は大幅な改善効果が見られ、これは真空管アンプをメインの座につかせるきっかけとなりました。しばらくこれで楽しんでいましたが、6BX7はまだ入手できるのだろうか、スペアを持っていないと「ある日突然!!」なんて事になり兼ねないと思い、秋葉で探してみました。

春日無線さんで教えてもらった「サンエイ電機」で無事入手できました。実は一本目もそこで買ったことを思い出しました。その時は\2,500也、今回は\3,000でしたが、全く同じブランド(US製)でした。スペアが入手できたので、これでしばらくは安心できると考えていたら、私の部屋の隅っこに学生時代に製作した7189A-PPのアンプから取り外した山水のOPT(W-15-8)が目に付きました。そうだ、PPの実験ができる、ケース(シャーシー)はどうしようか、できるだけ手持ちのパーツで頑張ってみようなどと考え始めました。別の友人から調達した外付けCD-ROM装置のケースが目に浮かびました。電源トランスは無線機(元々はトリオ9R59をダブルスーパーに改造したもの)から取り外しました。トランスのヒーター巻線が、200V x2 70mA(DC), 6.3V 3A, 5V 2Aだったので、整流回路は6X4が使えず5MK9 x2本で両波整流することにしました。6.3Vの方も、6BX7 2本でメイ一杯の容量です。プレート電流はPPで30mA程度にするつもりで回路を考えました。

回路は12AX7初段、12AU7位相反転、6BX7PP x2、電源部は5MK9 x2の計6本を使います。ケースが鉄板のため、工作に手間取りました。シャーシーパンチがないので、リーマとハンドニブラで穴を開けました。6BX7のカソード抵抗は620Ω、ここに16V強の電圧が発生 しているので、PPで27mA(210V)となりAB級くらいに相当します。カソードのパスコンは無し。このコンデンサを悩まずに済む点はPPのメリットです。6BX7と12AU7とのつなぎは安いフィルムコンデンサにした。

ここに投資しても結局、PPの打ち消し作用で意味が無いのではないかと思いました。初段とのカップリングは直結にできるので、音質に影響の出るところとしては12AX7のカソードに入れたコンデンサだけとなります。もちろんBGを使いました。NFBはオーバーオールで6~10dBくらいと思っていますが、220Ω/2.7kΩの割合で、SP 8Ω端子から初段のカソードにかけています。

連休の4日間をかけて、何とか完成しました。電源のリップルが取りきれなくて、急遽、チョークをノグチトランスに買いに行ったりしましたが、初めてスワンにつないだ時の感想を書いてみます。6BX7シングルの時はソロあるいは室内楽が良かった。しかし、PPにするとオケが素晴らしくなった。ミュンシュの幻想交響曲でチューバがひとりで頑張っている音が良く聞こえた。音の定位も予想外に改良されました。最初にチェロとピアノなどを聴いたときは、味のない音のように聞こえた。しかし、PPの打ち消し作用で大幅に歪が取れたためと思った。そして、 オーケストラの素晴らしさを経験してからは、手持ちの全てのCDを一枚ずつ聴いてみたくなる心境となった。低音も素晴らしい。

前面パネルにはアクリル板を貼り付けて、バリオームとネオン管をつけました。ケース底面が密閉されているのでシャーシー内の熱を逃がすために、少し隙間を作った。裏面の電源SWとソケット、それに入力端子はオリジのCD-ROM装置に付いていたそのままを使いました。こうやって、手作りの機械が我がオーディオルームにまたひとつ増えることは、とても嬉しいものです。しばらくはこの新しい環境で、音楽への触れ合いと感動が体験できそうです。3極管PPアンプは中学時代の友人のお父さんが作った2A3-PPのアンプが強く印象に残っていて、いつかは作りたいと思っていたアンプです。40年来の願いが叶ったことになります。

6BX7はサンエイ電機で買いましたが、T-ZONEの並びのビル4Fにある「クラシックコンポーネンツ」と言う店で、RCA箱入り\3,200を見つけました。もう一種、\2,500のものもありました。ここの店は何しろ真空管の品揃いがすごくて、圧倒されました。今回のPP製作のきっかけは、6BX7のスペアをたまたま買ったことにあったのですが、近々さらに2本買わなくてはと思ったりしています。