早稲田オープンカレッジ(2013)
ゲーム理論とマーケットデザイン入門
社会を分析・デザインする新しい経済学を身につけよう!
最終更新日:2015年11月8日
お知らせ
第八回講義のスライドをアップしました。テーマは制度設計の基礎理論である「メカニズムデザイン」ですが、行動経済学・行動ゲーム理論に関する参考文献もご用意してます! 2013/6/26
第七回講義のスライドをアップしました。今回もボリュームたっぷりです! 2013/6/20
第六回講義のスライドをアップしました。今回はボリュームたっぷりです! 2013/6/9
第五回講義のスライドをアップしました。当日になってしまい申し訳ありません。 2013/6/5
第四回講義のスライドをアップしました。 2013/5/28
第三回講義のスライドをアップしました。 2013/5/19
第二回講義のスライドをアップしました。 2013/5/12
ゲーム理論のおすすめ書籍をアップしました(一番下です). 2013/5/8
初回講義のスライドをアップしました。 2013/5/5
到達目標
本講座では、戦略的な状況を分析する「ゲーム理論」の基本的な考え方および具体的な使い方をマスターして、複雑な経済・社会の動きを掴む眼を養うことを目標とします。後半では、ゲーム理論を応用して現実の市場・制度設計を行う「マーケットデザイン」分野の最新成果についても学び、理論を現実に役立てる発想法を磨きます。
講義概要
「ゲーム理論」は、自分にとって最適な行動が相手の行動に影響を受ける「戦略的な状況」を分析するための数理ツールです。世の中の経済の動きを分析する「経済学」は、このゲーム理論の登場によって、1980年代以降に大きな変貌をとげました。
本講座では、前半(五回分)でこのゲーム理論の主要トピックについて学びます。ゲーム理論はいまや経済学を超えて、経営学、政治学、社会学、心理学、言語学、生物学、計算機科学など、幅広い分野で積極的に応用されています。本講義を通じてゲーム理論の基礎を身につければ、身近な戦略的思考から様々な経済・社会問題に至るまで、今までとは違った視点で物事を捉えることができるようになるでしょう。
後半(三回分)では、ゲーム理論を現実の市場や制度の修正・設計に応用する新しい分野「マーケットデザイン」について扱います。マーケットデザインはその実践的な特徴に加えて、2012年度にノーベル経済学賞を受賞したことで現在大きな注目を集めています。ぜひこの講座を通じて、経済学のフロンティアを感じ取って頂ければ幸いです。
講義テキスト
テキスト:天谷研一『図解で学ぶゲーム理論入門』日本能率協会マネジメントセンター, 2011. Amazon
ゲーム理論で扱う重要なトピックが、それぞれ見開き2ページで分かりやすく解説されています。本講座では、1〜5章と7章を教材として用います。
参考図書1:ジョン・マクミラン(瀧澤・木村訳)『市場を創る バザールからネット取引まで』NTT出版, 2007. Amazon
市場の機能と失敗、それを克服するマーケットデザインについて、様々な事例研究と経済理論を縦横無尽に駆使しながら分かりやすく解説した名著。マーケットデザインの入門書としてはもちろん、経済学を深く理解するための座右の書としてお勧めです。
参考図書2:安田洋祐他『日本の難題をかたづけよう』光文社新書, 2012. Amazon
私が担当した第1章「社会を変える新しい経済学 マーケットデザインの挑戦」で、マーケットデザインの概要と、その基礎理論であるメカニズムデザインの考え方を丁寧に解説しています。手前味噌で恐縮ですが、第八回目の講義の参考文献として特にお勧めです。
この他のおすすめ書籍についてはページ下をご覧ください!
<ゲーム理論編>(第1〜5回)のスライド
第一回 戦略的状況とは何か 5/8
自分にとって最適な行動が相手のとる行動に依存する「戦略的状況」を理解し、それを分析する数理ツールである「ゲーム理論」の考え方の土台を勉強します。
【キーワード】
戦略的状況/戦略的相互依存関係
(静学)ゲームの定義
囚人のジレンマ
利得表の見方
最適戦略(支配戦略)
第二回 ナッシュ均衡 5/15
ゲーム理論で登場する最も重要な「解」(結果の予測・解釈)の概念である「ナッシュ均衡」をしっかり学び、いくつかの単純なゲームを実際に分析してみます。
【キーワード】
ナッシュ均衡とは何か
様々なゲームのナッシュ均衡
フォーカル・ポイント
複数均衡と経路依存性
支配される戦略の逐次消去
第三回 ビジネス競争のゲーム 5/22
ビジネスにおける代表的な企業間競争である価格競争、製品差別化、数量競争を分析します。確率的に行動を選ぶ「混合戦略」の考え方についても学びます。
【キーワード】
ホテリングの立地ゲーム
最小差別化の原理
ベルトランの価格競争ゲーム
クールノーの数量競争ゲーム
ゼロ和ゲームと混合戦略
【参考資料】
2次関数と独占・寡占市場(尾山・安田編『改訂版 経済学で出る数学』第二章)
第四回 ゲームを後ろから解く 5/29
意思決定のタイミングが参加者によって異なる「動学ゲーム」の解き方を学びます。予め将来の行動を制約する「コミットメント」の利益についても分析します。
【キーワード】
混合戦略ナッシュ均衡
信頼性のない脅し
バックワード・インダクション
ツェルメロの定理
コミットメント
第五回 長期的関係と協力の発生 6/5
長期的な関係を説明する「繰り返しゲーム」の理論を学びます。一度きりの関係では達成できない協力行動が、アメとムチによって実現できることを理解します。
【キーワード】
繰り返しゲーム
有限回と無限回
割引因子
トリガー戦略
フォーク定理
<マーケットデザイン編>(第6〜8回)のスライド
第六回 マッチングの理論と実践 6/12
2012年度のノーベル経済学賞を受賞した「マッチング理論」の基本的な考え方と、現実の制度設計(=「マーケットデザイン」)への実践例について勉強します。
【キーワード】
マーケットデザイン
安定マッチング
ゲール=シャプレー(GS)メカニズム
交換問題とコア
トップトレーディングサイクル(TTC)メカニズム
【参考リンク】
「相思相愛」を実現する極めて具体的な方法(東洋経済オンライン)
お金を使わずに幸せに?物々交換の賢い仕組み(東洋経済オンライン)
【参考文献】
第七回 オークションの理論と実践 6/19
マッチング理論と同じく、周波数オークションなどの現実の入札制度のマーケットデザインで活躍する「オークション」の理論とその実践例について学びます。
【キーワード】
公開入札と封印入札
1位価格と2位価格
収入同値定理
VCGオークション
検索連動型広告
【参考資料】
周波数オークション設計の課題(日本経済新聞、経済教室、2012年5月31日)
【参考文献】
ジョン・マクミラン『市場を創る バザールからネット取引まで』(NTT出版)
第八回 メカニズムデザインの考え方(変更の可能性アリ) 6/26
マーケットデザインの基礎理論である「メカニズムデザイン理論」の初歩を、有名な「ソロモン王のジレンマ」という問題を通じて勉強します。冒頭で今まで7回分の講義についても要点をおさらいします。スライドの最終ページでは、行動経済学・行動ゲーム理論を学ぶための参考文献として、オススメ書籍10冊をご紹介しました。ぜひご参考ください!
【キーワード】
遂行可能性
ナッシュ遂行
ソロモン王のジレンマ
マスキン単調性
マスキンの定理
【参考文献】
社会を変える新しい経済学 マーケットデザインの挑戦(『日本の難題をかたづけよう』光文社新書)
ゲーム理論関連のおすすめ啓蒙書(下に行くほど難易度が高めです)
*松井彰彦『高校生からのゲーム理論』ちくまプリマー新書, 2010.
山岸俊男『「しがらみ」を科学する:高校生からの社会心理学入門』ちくまプリマー新書, 2011.
梶井厚志『戦略的思考の技術 ゲーム理論を実践する』中公新書, 2002.
ディキシット=ネイルバフ『戦略的思考をどう実践するか エール大学式ゲーム理論の活用法』阪急コミュニケーションズ, 2010.
ジョン・マクミラン『経営戦略のゲーム理論 交渉・契約・入札の戦略分析』有斐閣, 1995.
*伊藤秀史『ひたすら読むエコノミクス』有斐閣, 2012.
川越敏司『はじめてのゲーム理論』講談社ブルーバックス, 2012.
鈴木光男『ゲーム理論の世界』勁草書房, 1999.
ゲーム理論関連のおすすめテキスト(下に行くほど難易度が高めです)
渡辺隆裕『ゼミナール ゲーム理論入門』日本経済新聞出版社, 2008.
*武藤滋夫『ゲーム理論入門』日経文庫, 2001.
梶井厚志・松井彰彦『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』日本評論社, 2000.
神戸伸輔『入門 ゲーム理論と情報の経済学』日本評論社, 2004.
岡田章『ゲーム理論・入門 人間社会の理解のために』有斐閣, 2008.
川越敏司『行動ゲーム理論入門』NTT出版, 2010.
坂井豊貴『マーケットデザイン入門』ミネルヴァ書房, 2010.
*ロバート・ギボンズ『経済学のためのゲーム理論入門』創文社, 1995.
グレーヴァ香子『非協力ゲーム理論』知泉書館, 2011.
岡田章『ゲーム理論 新版』有斐閣, 2011.
*印は特におすすめです
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