110403

2011年4月3日

陸前高田市 酔仙酒造――被害状況調査

陸前高田市に足を踏み入れたのは、2011年4月3日。全てが根こそぎ流されてしまうという痛ましい惨状が明らかとなりました。地面は津波で流されたガレキに覆われ、海砂が舞うなかで、3棟の登録有形文化財建造物を有した酔仙酒造の場所には、たしかに、酒蔵の香りが漂っていました。ここに、昭和5年に建てられた近代建築群として「酔仙酒造購品及び用度品倉庫」(地上4階建・土蔵造・瓦葺)、「酔仙酒造守衛所」(地上1階建・木造・スレート葺)、「酔仙酒造本社事務所」(地上2階建・木造・金属板葺)がありました。この一帯でかろうじて残存していたRC造の建物上部にはガレキが積もり、突出した建築部材には酔仙酒造の樽が掛かっていました。津波の計り知れない規模と破壊力が伝わるとともに、誇り高き文化を襲った被害の爪痕が伝わる光景です。

是澤紀子(名古屋工業大学大学院 准教授)