0.建築遺産再生研究推進体 RAH(2011-12年度)

今般の東日本大震災により、多くの尊い人命が失われたとともに、社会と文化の受け皿となる都市・建築も甚大な被害を受けました。地域のシンボルとして維持・活用されてきた歴史的建造物も例に漏れず、沿岸部・内陸部を問わず存亡の危機に瀕しているものが多々見受けられます。

この事態を受け、私たちは「建築遺産再生研究推進体」という組織を期間限定(2011年度)で立ち上げ、関係諸機関と協同で歴史的建造物の再生を目的に活動を行いました。

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○『建築遺産 保存と再生の思考――災害・空間・歴史』

(東北大学出版会、2012)

"Disaster, Space and History :

Theories of Architectural Preservation and Regeneration in Japan"

東日本大震災から一年。建築の行方は?

「災害・空間・歴史シンポジウム」の記録と新たな<視点>を一冊にまとめました。

『建築遺産 保存と再生の思考—災害・空間・歴史』

野村俊一・是澤紀子 編

定価3,465円(税込) 四六判 540頁

ISBN978-4-86163-189-4 C3052

(2012年3月刊行)

東北大学出版会

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東日本大震災により歴史的建造物の多くが被災した。被災地では、保存と再生に関わる日常に潜んでいた問題が一気に噴出した。そもそも歴史的建造物は、古くて価値があれば自ずと残るという単純なものではない。さまざまな社会背景や関係者の意志が絡み合い、相矛盾する問題にまみれている。はたして、被災地では何が起きているのか?歴史的建造物の存在意義とは一体なにか?

建築史学・文化財保存学・建築論・地震工学・日本史学・日本思想史学・美術史学の専門家や建築家とともに、歴史的建造物の保存と再生に関わる問題について議論した、連続シンポジウムの記録。過去から未来へ建築と都市をデザインするための、六つのキーワード。

《目 次》

・野村俊一「保存と再生をめぐるさまざまな課題を解きほぐすために」

第一章 「理念」 復興の眼差し

・後藤 治「宮城県気仙沼小々汐地区の民家・尾形家を事例として」

・足立裕司「過去の震災から何を学ぶか――災害後にできること」

・質疑応答

・<視点>光井 渉「災害前にすべきこと、災害後にできるかもしれないこと」

第二章 「文化」 更新される歴史と文化財

・佐藤憲一「有備館の歴史を再検討する」

・永井康雄「郷校・有備館の建築について」

・大川 真「有備館の人材育成と儒教文化」

・質疑応答

・<視点>藤川昌樹「被害と復興の構図――災害時の歴史的建造物をめぐって」

第三章 「手法」 修復の創造性

・窪寺 茂「建築遺産継承の手法論――私たちが実践できる道を求めて」

・伊郷吉信「災害復旧の技術をめぐって――建築家からの視点」

・質疑応答

・<視点>西澤泰彦「建築の保存・再生の源泉――感動を味わう楽しさ」

第四章 「空間」 過去の読解とその作法

・佐藤弘夫「時を湛えた空間――歴史学における「空間」の発見」

・長岡龍作「行為と感応の場としての「空間」――表象の読み方を考える」

・藤井恵介「日本建築史における「空間」概念――研究史的検討、有効性と限界」

・質疑応答

・<視点>田路貴浩「空間から建築体へ」

第五章 「活用」 潜在する再生力

・矢野和之「保存と活用の相克――オーセンティシティの確保と登録有形文化財の役割をめぐって」

・花里利一「文化財的・工学的・社会的――構造の視点から保存と活用を考える」

・質疑応答

・<視点>清水真一「災害時の保護制度――歴史的建造物の保存と活用を考える」

第六章 「産業」 自活するコミュニティ

・高橋恒夫「震災前・震災後における岩手県陸前高田市今泉集落と気仙大工」

・斎藤善之「三陸沿岸地域における歴史的景観と生業――大規模イエ経営体と危機対応」

・質疑応答

・<視点>青井哲人「明治・昭和三陸津波後の「復興」と漁村社会」

用語解説

あとがき

・是澤紀子「建築遺産をめぐる知恵を共有し、継承するために」

・野村俊一「白黒思考を超えた眼差しを」

謝辞

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○「災害・空間・歴史シンポジウム」のお知らせ(終了しました)

詳細はこちら

聴講エントリーはこちら

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建築遺産再生研究推進体

Regeneration of Architectural Heritage(RAH)

■活動内容

・被災した文化財建造物の保存・修復・活用

・そのための技術開発とモデル提案

・研究者、歴史的建造物の所有者、周辺地域住人、建築家・工務店向けのシンポジウム・セミナー開催

■活動履歴

・「文化財ドクター派遣事業」:

日本建築学会、文化庁、日本建築家協会との協同による、文化財建造物の被災状況調査

日本建築学会 建築歴史・意匠委員会 災害調査特別研究WG

東日本大震災被災文化財建造物復旧支援事業(文化財ドクター派遣事業)について

・被災した文化財建造物の応急修理

ex.「世嬉の一酒造」での取り組み

・文化財建造物マップ作成

ex.宮城、岩手、福島の国宝・重文・登録有形文化財

ex.津波浸水域歴史的建造物

・署名活動

ex.「東京駅の屋根、東北産スレートでの復元を願って」

■協同関係機関

・日本建築学会 建築歴史・意匠委員会 災害特別調査研究WG

・文化庁

・(財)日本ナショナルトラスト

・JIA日本建築家協会

ほか