蒲原宿から見る富士山
蒲原宿のすぐ北には丘陵が迫っている。蒲原宿の出口である東木戸まで来ると、丘陵が途切れ、富士山を東に望むことができる。ここから東に進むと、旧東海道は、山道になる一部を除いて薩埵峠まで、いよいよ富士山の絶景が連続する区間がはじまる。つまり、蒲原宿東木戸は、富士見という観点で見ると極めて特殊な、ここしかありえない、という位置に設置されている。
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現在の東木戸跡では道がSの字にくねっており、旧東海道の宿場町の端部の面影を残している。したがって、東木戸の位置は当時のままではないかと思われる。現在は建物がたち並び富士山の展望はなかなか厳しいが、”なんということでしょう”、東木戸跡の前の旧東海道の路上で、半径1mほど、富士山がかろうじて見える場所が今でもある。公民館の屋根の上に顔を指す富士山を左から遮っているのは、大磯宿北側の丘陵の末端だから、ここより西(宿場側)では富士山が前山に隠されることがわかる。
旧東海道を人が行き交った往時、蒲原宿を出て東に向かうと、まさに蒲原宿の東側出口である東木戸の位置で富士山の展望が開けたことになる。
現在では旧東海道からそんなに富士山は見えないから、東海道を歩くだけではこのことに気づかない。地元民ではない人間が、半径1mほどの「富士山が見える場所」を見つけるには、「富士山が見える境界」であることが宿場町の富士山側の出口の特徴(「宿場町出口近くまでは、旅人に先を急がせないために富士山が見えない」方が本質だろうか?)ではないかという思い込みと、展望シミュレーションによる事前の調査検討がなければ、難しいと思う。(交通量は多くないとはいえ、写真撮影時には車の通行に気をつけましょう)
東木戸の前は道がSの字にくねっており、江戸時代の宿場出口の特徴を備えている、ここが往時の場所そのままの東木戸である可能性は高い。
50mほど南の道から富士山が見えそうな場所を探して撮影した。ここより南は軽金属工場がある「富士見町」という町。
JR東海道線新蒲原駅のホーム東端からの展望。あと一歩で富士山が見えない位置である。ホームからギリギリ富士山が見えない、という例も、実はいくつか見つかっている。その話題はまたいずれ。
2023/1/13(写真も) 眞田則明