量子コンピュータ

雑感(一般向け)

特別感謝→ 文字起こし:Notta.ai 

@大阪/23年8月講演

カッコ内は、講演中に突発的に喋って分かりにくくなったものをカッコで括ったり、意味を後で補ったものです。

皆さんこんにちは。理化学研究所の量子コンピュータ研究センターにいる田渕と申します。今日よろしくお願いいたします。ちょっとですねどんな話をしようかなって迷ったんですけれど、量子コンピュータはとりあえず面白いよと。面白いっていうのさえ伝われば、今日は成功だと思いましょう。

はいちょっと私の自己紹介から始めます。私出身が岡山県でして岡山県の倉敷市というところで、石油化学コンビナート中で生まれています。そこでは石油化学であったりと製鉄があったりと、すごい工業の盛んな町です。私は興味持ったのはああいうコンピュータですね。デジタルコンピュータで小さい頃から昔の古いハチハチを与えてもらって、10年もの前のコンピュータを与えられた私はこれで機械語のプログラムを組んでました。そこから高専というところに行って、コンテストプログラマをずっとやってました。ああいうACM系ですとか高専のコンテストプログラムをずっとやっていて、論理回路とかにも興味があって高専の方ではですね超伝導デジタルロジックと言われる(日の目を見なかった)超伝導回路をやってました。

どうしてもプログラマーなんで、もう速いこと計算することが命だったんですけれど、ある数学の先生が、いやいやなんかそんなことやっても仕方がないと。もっと速いコンピュータがある、頭の中にって言われて。それが量子コンピュータですね。量子コンピュータっていうのは普通のコンピュータとは違って、たくさんの可能性を一度に探索することできる。夢のコンピュータではあるけど、どこにもない。っていうようなものを教えて頂いてて。それだったらもうプログラムなんかでもやってしゃあない。もうそれで量子コンピュータをやるんだと、探したのがなんか大阪大学です。

大学でしばらく34回生をやっていて、そうこうしてるうちにアルバイトの話も来て東大阪の宇宙開発協同組合というところで、まいど1号っていうのが2009年にローンチしたんです。私はその打ちあがる直前に入ったんで、まいど2号(また日の目を見なかったんですけど)、その2号の開発をやっておりました。そういうバイトやったり、電気屋さんのバイトをやってたんですけど、ちょっと電気屋さんといっても22キロボルトの変電の話なので普通のバイトではなくて、ああいう特高の機器を試験するようなとこでバイトやってたり、大阪大学の方では量子コンピュータの研究ですね。量子コンピュータの研究をやっていて、毎日液体窒素や液体ヘリウムを汲むような日を過ごしていました。

2012年から東京に行って、ちょっと量子ビットで遊びながら研究しばらくやって、2016年からですね国の予算を頂いて、量子コンピュータ作っていいよっていう、ことを仰られたので作りましょうっていうので、量子コンピュータの研究を続けて今に至るというところです。量子コンピュータに出会ってから約19年かかって、この3月の国産量子コンピュータの実機っていうとこまでやっとたどり着いたと。この量子コンピュータにはいろいろドラマがあって面白いんですけれど(またそれは別の機会に)。

たくさんいろんな記事に取りあげられて量子コンピュータはできたと、いうのはまだこれはプロトタイプのモデルあって、まだ何かができるってわけじゃないんですね。そんな話を今日ちょっとあのしたいかなと思っています。

量子コンピュータとは何かというこれ聞かれるのが一番難しい質問で、何かと言われてなかなか簡単には答えられないんですけれど、今の普通のコンピュータが効率的に簡単に解ける問題の中の外側に、簡単には解けない問題があるんです。例えば佐川急便の経路最適化問題とか。あれが全探索するぐらいしか計算する手法はないと。プログラムしたことある人だとバックトラックですね。バックトラックを組むようなことしかもうないもの。ていうのがあるんですが、これは普通のコンピュータ苦手です。

それとはまた別に、なんかもっと量子力学を使うと、もう少しあの簡単に解ける問題がいくつかあるんですね。それが例えば素因数分解でご存知ですかね、15を3×5に分解するあれ、あれです。あれができたり、離散対数問題、今暗号に使われているやつですね。皆さんがブラウザみる際に、アドレスバーところに鍵マークがついてるのはこれのおかげですね。あとはモンテカルロ計算、この金融で使ったりするモンテカルロ計算、他にはデータベース検索このようなものができるとされている。実際問題これらしかできないんですよ。なんで量子コンピュータは夢があるってみんな言ってるんですけど、夢なんかないんですよ。これぐらいしか無いんですよ。素因数部緩解、離散対数問題、モンテカルロ、データベース探索、終わり。そうなんです。これが事実。

日本で初めてソフトウェアを書いた人、まぁ高橋秀俊先生のお弟子さんなんですけど、何やったかっていうと同じなんです。素因数分解なんです。その次に何をやったかというと、フーリエ変換なんです。日本で初めてのソフトウェアは、本当にこんなしょうもない科学技術計算から始まったんですね。それを50年かけて、いや、間違えました70年かけて、今のところまで持ってきているんです。初めてのアイディア(計算概念)を使いこなすには、そこまで時間がかかるんですね。簡単に、今何かに使えるもの使えないもの、そんな話じゃないんです。新しい概念に出会ったときに、70年ぐらいかけて使いこなすには時間かかるんです。そのタイムスケールを持ってみると、まぁ量子コンピュータも大丈夫でしょって、そういう(私の)言い訳ですね。

こういう中で、産業に向けて何ができるんだっていろんな提案があります。日本でコンソをやっているQ-STARさんなんかは、あの、基本的には計算機能力が向上するんで、計算機に関係するとこは全部良くなるでしょう。素材・製造・インフラ・交通・金融。まぁこういうとこに必ず70年後には貢献があるはずだ。もしくはこれはJSTさんがやってるようなムーンショットの研究開発制度では、あの窒素固定の問題ですとか、こういうな植物を作ったりするの効率化する。あと、光合成に関するのことを何か解明する。メカニズムを解明することで、何か社会に貢献があるはず。ていうようなことをぶち上げてるんですけれど、本当かどうかわからない。これで何に使えるのかよく分からないんですけど、一つ興味があるのは何が起こるか分からないことなんです。

量子コンピュータは科学なのかって言われると、今は科学の領域います。いわゆる量子物理(あるいは物理ですね)と、量子情報理論という科学かつ術研究の領域にいます。あまり皆さんに馴染みがない領域で、大学の教授たちが偉そうにやってるあの領域だと思います。

その中で産業側に一回ひゅっと転化したことがあるんですね。量子アニーリングマシンと呼ばれるもので、私は量子からインスパイアされた非ノイマンと呼んでいますけれど。一瞬だけ日の目を見たことがあるんです。ああいうので、すごいことが起きるかもしれない。ちょっと今下火なんですけどね。そうこうしてるうちに、2020年代に入ってGoogleやIBMがすごい金突っ込みました。それで初期の量子計算ができてきた50キュービット。IBMは今433キュービット。こういう量子コンピュータがお金をドーンと突っ込むと何かしら出てきたと。その他にもこんな面白いことが起こって、インダストリーにいる人が、今度はまた面白い影響を学術研究のフィードバックするんです。自分たちが解いている問題って、こういうのは量子コンピュータで解けるかもしれないというので、ちょっと面白いインダストリー側の人が、今の学術側に流れ込んでるんですね。

それとはまた違う科学か工学かっていう目線で見ると、もう元々工学の中には、計算科学やソフトウェア工学という分野がそもそもありました。それの最も産業よりなのがCVとかAIとかLLMとかそういう感じですね。他に大きな分野として成り立っているのが電子工学、日本もこれにだいぶお金突っ込んでいるはずです。他の目線で見ると、電子工学の中にも、学術的研究はいくらいくらでもあります。ベル研などでは故障木解析やってたり、IBMスケーリング則(大事ですね)。これがあるから、普通の半導体コンピュータはスケールしたんです。これがなかったら、半導体の計算機をどう大きくするのか分かんなかったんです、それが可能になった。それはアカデミックの貢献ですね。他にも産業と学術の間ぐらいに計算機工学、どうやってコンピュータを作りましょうかとか。

今やっとですね、量子コンピュータをどう作ろうかっていう研究がアカデミックとインダストリーの何か真ん中のあのあたりで、ちょうど立ち上がろうとしている。こういう状況に今あります。

量子コンピュータは今どれぐらいできていて、実在するのかっていうと、あります、IBMさん(利用権を)売ってますね。IBMさんは433量子ビットと言われる量子コンピュータを売ってたり、皆さんアメリカの動きはよく知ってると思うんでGoogleさんですとか。中国が最近すごいですね。中国ものすごいお金のあの加速を受けて、あの大きな量子コンピュータ作ってます。あと理研はビット数で言うと64ですね。あとはヨーロッパ関係、スイス連邦工科大ですとかデルフト工科大なんかがこういう超伝導の量子コンピュータを作ってるような最中です。下三つは大学で私たちもアカデミックで、上二つが企業さんということになります。

こういう中で、今の量子コンピュータはどれぐらいパワフルなのかっていう気になると思うんですけど、今はですね、本当にプロタイプです。言い訳なんですけど。回路の雑音が大きすぎて、誤りが回路規模に対してすごい大きいんですね。あの典型的には計算始めるときには、レジスターと呼ばれる、なんですかねプログラムでいう変数を用意するんですけれど、それの変数を縦に書くとします。その後に足し算引き算掛け算割り算という四則演算みたいなものを横軸に時間方向に計算していくんですけど、やればやるほど誤ります。なぜかというとかいう回路雑音が大きいから、やればやるほど結果が得られなくなるんですね。

それも大きければ大きいほど、量子コンピュータが大きければ大きいほど、より誤るので、今のGoogleのマシンは(他社のマシンもそうですが)。正解がどれぐらい得られるかっていう確率を書くと、大体100万分の1ですね。ほとんど乱数です。なので私達がよく冗談で言うのはちょっと当たりが出やすい乱数発生器って言ってます。ほとんどサイコロ投げたら乱数なんです。でも100万分の1ぐらいだけ当たりが出やすいっていうのが今の量子コンピュータパワーになっています。

皆さんこういうので教育をやったり、こういう回路の作り方を勉強したりっていうことを今やってる段階ですね。ま、そういう意味で利活用ってなんじゃいっていう話をしていこうかなと思います。

なぜ私達は役に立たない量子コンピュータ作ってるのかっていうと、やっぱりどう作ればいいのかわかんないから、作ってます。どう作ればいいか分からないっていうのは実現手法が何もないんですよ。なんかどういう電子回路を作れば量子コンピュータになるのかっていうのは、2016年当時はもう全く(今わかったんですけど)、やるまでは何も分からなかったんです。設計手法ないです。プログラミング言語ないです。シミュレーターないです。もう全てが無い。理論しかない、数式だけがあって。何かどうすればいいのかも全然わからない。そこからのスタートが研究です。

こういう量子コンピュータを活用という意味では、今私達は新しい64キュービットというマシンを作って、そのマシンを作って使い倒して評価しまくってまた新しいあの解決法大きな量子コンピュータするという研究を今ずっとサイクルを回せる状況です。

活用法でいうと、(さっき言った通り)知られている素因数分解とかモンテカルロとか少し前までは本当にごくわずかでした。生活に役に立つ量子コンピュータどうか分からないんです。逆に考えると、この量子コンピュータの真のパワーがどれぐらいかって分からないんですよ。これがすごく脅威になっていて、それは特に安全保障関係ですね、暗号が解ける、そんなことなったらすぐことが起きてしまうんです。分からないことが脅威なんで、アメリカなんかすごいお金を突っ込んでます。大体年間XXXX(自主規制)ぐらいすね(日本はそのXX分の1(自主規制)ぐらい頑張ってるんすけど)。それぐらいのお金をどんどん突っ込まないと他国に負けるっていうので、すごく多くのお金が投入されてます。

とはいえ、この量子コンピュータって今から何が起こるか分かんないんですね。僕たちが夢がないんです。何か社会課題を解決する、そんなもん何もないんです。ただ、それが今から見ると、その先がどうなるか分かんないって世界が広がっていて、それはある意味で技術的特異点なんです。シンギュラリティですね。そ何が起こるかわかんないって世界の向こう側を見に行こうとすると、今から何が起こるか分かんない。だから夢がないんですね。

僕たちが何か楽しいなと思うのは、そういう世界がどういう世界なのか分からないので、その向こう側を見ようとするために頑張って量子コンピュータ作っている。それが一番面白いとこです。社会課題が解決する、知らない。そんなことは僕はわかんない、けど、計算能力は理論的にやばいことになるとは知られていて、これから先何が起こるかわかんないっていうことを逆に楽しんでるっていう状況ですね。なで私達は作ることで研究し、その作り方を使ってさらに大きくする。このサイクルをずっと回してるような感じです。

実際にこんな量子コンピュータ作り方わかんないんですけど、よくよく見ると、皆さん結構馴染みのある技術が中にたくさん使われています。従来の半導体製造装置で作らないと量子ビット作れないんで、(よく知ってる方はご存知かもしれませんが)、私達の量子ビットはシリコン基板の上にあります。シリコンと聞いてぱっとご存じか分からないんですけど、シリコンは今の半導体中の王様ですね。これがないと始まらない。そのシリコン基板の上に回路を書きます。回路はちょっと違って、普通は銅とかアルミなんですけど、 それが超伝導体できているので超伝導の量子コンピュータと呼ばれてます。それが例えば量子ビットはこういう丸のパターンで書いたりですとか、読み出し共振器はうねうね(蛇行電極)で書いたりとか、こういうパターンを、あれこれあれこれ設計します。

ただサイズを見てもらうと、あの丸の大きさが大体600から800ミクロンなんで、1ミリぐらいですね。1ミリぐらいの量子ビットになってます。なのでどこにナノの部分があるかといいますと、ナノの部分はこの回路の矢印の部分、一つだけにすごくナノ構造があって、その接合の部分が大体200ナノ、0.2マイクロメートルですね。0.2マイクロ×0.2マイクロンの部分がナノ構造なっていて、ここで量子力学的な力を発揮する。まぁそれ以外はただの電極ですね。これがどんなふうにできてるのかというと、いろんなシリコンの形成技術術を使っていて、例えば穴を開けたりですとか、これMEMSとNEMSとかで使われる技術です。このちなみにこの電極のキラキラしたこの金色なんですけれど、金色はチタンナイトライド、窒化チタンでして金色のスプーンに蒸着しているようなあれですね。技術は大体ほとんど普通の半導体製造装置と同じです。高抵抗シリコンにレーザーでリソをやって、細かいところは電子線でリソをやって。こういうのは普通の半導体製造装置やっている人だとよくあるよねって言われる技術で大体のことが、こと足りると。

それがこれが私達の作った量64量子ビットチップなんです。作り方は分からなかったににしろ、何かしら7年ぐらい研究すればここまで持っていけるっていうことが今んとこわかった。今からこれをさらに良くしていって、さらに大きくしてってのが、今からの研究課題になってます。

それだけではなくて、量子コンピュータは冷やさなければならないんで、超伝導体にするためにちょっと冷凍機の中に入れるんですけどその冷凍機の中に、大体ですね1000リッターぐらいの冷凍機なんで、冷蔵庫でいうと何ですかね、大型の冷蔵庫が2,3台ぐらいの大きさです。なんかすごい大きい冷凍機を使っていて、その中に配線をたくさん入れます。量子ビットの数だけ配線を入れるんです。量子ビットはですね銀色の缶缶の中に入ってるんですけれど、そこから大体今100本弱ですか。100本弱の線を一つずつ配線してですね、量子コンピュータを制御するために作ってるんです。

よくよく見ると、これ皆さん馴染めないかもしれませんけれど、どこにでもあるケーブルです。あの特に特殊じゃないんですね。特に特殊なくてどこにでもあるケーブルですし、どこにでもある金属ですし、そのどこでもある金属を削って作って、量子コンピュータはスーパーなんですけど、意外に使っている技術は大したことないんですよ。なんか、ちょっとやったらやれそうぐらいな技術でだいたい量子コンピュータはできてると。大した技術で作ってるわけじゃなくて結構身の回りにあるもので大体構成されてます。

その他に、制御装置なんかも量子コンピュータを動かすためには、チップだけはただ実は駄目で、チップの周りなんか制御する回路が必要なんです。それは普通の電子回路でできてます。あの皆さんがよく使う(使いますかね?)普通のボードですね。(ラズパイじゃないんですけど)もう少し高度なFPGAの基板と高速シリアルのDACとADCをつけて制御をします。ちょっと、ちょっと特殊ですね。ちょっと特殊ですけど、特殊すぎないレベルです。普通の(普通かどうか分からないですけど)アナログの信号を送受する通信機器を作ってるの感じで制御装置を作っていて、もうこちらなんかは第1世代は、三鷹にある会社にお願いして、第二世代は(どこだったかな)東京の中央線沿いの、そこにある小さな会社にお願いして、こういうのを作れませんかね、本当に見て下さい。手作り感満載でしょ。(適当に…いや適当ではなく)頑張って作っていたんですけど、基板を起こして基板の上にスイッチつけたりアンプつけたり、ミリ波の回路なんですけど頑張って作ってもらって。

第三世代になってくると、いろんなことをもっと大きくしなきゃいけなくなり大阪大学にお願いして、大阪大学中の大学内ベンチャーが一つ建ってハードウェア作っていただいている(こっち左の方が社長さんですね)。こういう装置を今頑張って作ってもらってる。ところでよく見たら何かできそうな感じがしませんか。ケーブル並べてヒートシンク並べてFPGA書いてって。何か意外にできそうなものでだいたいできてるのが、今の量子コンピュータです。やりたいことはすごいんですけど、できない仕方がないんで、できそうなもので何とか組み合わせてやっていくというとこですね。

この量子コンピュータを使いこなせないといけないっていうのでいろんなコンソーシアムが立ち上がってます。QPARCと呼ばれるコンソーシアムですとか、大阪大の周辺のコンソーシアム、これ最近なんですけど、ある企業さんが立ち上げたコンソーシアムですとか、大学をやってるコンソーシアムなどいろんなコンソーシアムを立ち上がっていろんな研究ができてます。(ちょっと時間が今ないんで焦ってるんですけど)、こういうですねバンド計算ができたり、バンド計算っていうとさっきの15=3x5よりも遥かに優れてるんですね。はるかにすごい計算がやっとできていて、でもまだそれでも量子コンピュータができたから5年とかなんです。もっともっと使いこなすには、多分時間がかかるんですけれど、やっとこのあたりの小さな系の計算のやり方が見つかった。というレベルで、(皆さんの生活に役に立つようになるには)ちょっともう70年ぐらいないと使いこなすのは難しいかなと思います。

ざっと見せると量子コンピュータどれぐらいできたのかというと、僕たちのゴールからすると、大体ですね、量子コンピュータの完成を大阪府の面積とすると、だいたい阪急の梅田と大阪駅に合わせたぐらいの面積しかできてないす。パーセンテージで言うたら大体0.032%、やっと完成したと。なぜあとはなんしか99.9何とか%ぐらい頑張れば、量子コンピュータはできます。ちょっともう少し技術的にブレークスルーが何個もいるんですけれど頑張ればできるはず。

課題がたくさんあって、量子コンピュータの数が10万倍必要ですとか、直径300mmのシリコンウエハ上にできるかどうかとか、微細化は難しいけどMEMSとか後工程のプロセスは生きてくるんじゃないか、ですとか、体育館サイズになるのかとか、すごいたくさん課題があって、本当にできるかどうかはまだわかんないんですけど作り方を考えないとできないんで、これからそういう作り方を考えていく。生活に役立つ計算機になるのかどうかはまだわからない。すごい期待感あるけれどそれに対する有効な解がないってのは本当の正直なとこです。

量子コンピュータがなぜ異分野のかっていうのをちょっとぱっと説明すると、結構あのモノづくりが究極のものが多くてですね。身近に簡単そうにできるものなんですけど、こういうケーブルとかはこれ北海道の工場を作ってもらっていて、ういうコネクタの加工とかですね(スライドには日経新聞が「量子コンピュータを支える職人技」てこれを見たら面白いと思うんですけれど)、本当に町工場の方がですね、いろんなこういうピンの切削ですとか、それは品川の会社にお願いしたいですとか、大阪の八尾の方にもお願いしたことあります。こういう小さなやつをいろいろ作って本当に産業にも関わっていかないといけないですし、物理だけじゃなくて応物から電気から計算機、ソフトウェアの応用分野で言ったらもう化学・生物・金融と全部はこれから巻き込まれていくはずです。ただそれがいつになるかもわかんないですけど、そのうちどんどん巻き込まれていかないと面白いことは起きないだろうと思ってます。

時間がないんですけどすいません)これが最後のスライドです。

やっぱり量子コンピュータって面白いのは、夢があるから面白いんじゃないんですよ。何が起こるかわかんないからが一番面白くて。本当に先が全くわからないんですね。私の研究と皆さんの研究ちょっと毛色が違うなと、さっきちょっと感じたんですけど、共通項だけ挙げさせてください。

研究は必ず遊びの中にあります。面白くないと面白いこと起こらないですよね。一歩先が何も見えないから、研究しがいがあるんですよ。んな、わかってたら開発です。やればまぁできる。そんなことなんか研究する価値がない。でも、何もないからも逆に面白いってのは、あの、皆さんと共通するかなと。

失敗はめちゃくちゃあります。でも間違は一個も無いんですよ。だって自分たちが一番最初なんで。もう、自分たちがやったこと間違いは一つもないんですけど、失敗はたくさんいます。毎日失敗しかないんですけどね。

もっと面白いのは官僚とか産業の人がものすごいなんか面倒くさいこといっぱい言ってきます。ピュアアカデミックだけでいられないってのも、逆にちょっと面白くて。俺たちは偉いんだっていうなんか学者ではいられずに、産業の方がこうだとか官僚の方がこうだっていう、ああだこうだ含めて対話してるのもまるっと含めれば面白いと思ってます。

今日はですねちょっとメッセージこの学会の成功を願ってます。ご清聴ありがとうございました