アフリカ熱帯林における地域住民主体のブッシュミート共同管理に関する研究
アフリカの熱帯林では、ブッシュミート(野生動物の肉)が人びとの暮らしを支える大切な資源です。日々のタンパク質源や現金収入の手段になるだけでなく、伝統医療や儀礼に結びついた文化的な価値もあります。さらに、動物たちは葉を食べたり種子を運んだりすることで森の再生を助け、健全な生態系を保つ役割も担っています。つまり、ブッシュミートとなる動物は「森」にとっても「人」にとっても欠かせない存在なのです。一方で、近年は都市人口の増加や銃器の普及により狩猟の圧力が高まり、地域によっては野生動物の数が急激に減ったり、姿を消してしまったりする報告が出ています。こうした状況のもとで、アフリカ各地で野生動物を保全するために森林のゾーニングにより一律の狩猟規制する取り組みが実施されてきましたが、地域の暮らしとの両立や実際の現場での運用という観点からその限界が指摘されています。 私は、このようなゾーニングに基づく保全の取り組みが抱える課題の解決策を見いだすために、カメルーン東南部のブンバベック国立公園とその周辺地域を対象に、地域住民や保全組織、その他関係アクターによるブッシュミートの共同管理について研究しています。地域の文化や暮らしを尊重しながら、どのようなルールづくりや合意形成がうまく機能するのか、協働の成立条件や乗り越えるべき課題、そして政策づくりへの示唆を明らかにしていきます。
キーワード:中部アフリカ熱帯雨林、カメルーン東南部、狩猟採集民バカ、野生動物マネジメント、ブッシュミート危機、シリアスゲーム、コモンズ管理
1.カメルーン東南部に生息する野生動物に対する狩猟活動の影響評価
森林内に設けた複数の観察路(ライン・トランセクト法)を用い、目視による野生動物のカウント調査を実施し、ブッシュミート動物の在・不在や個体数密度の推定を行っています。とくに、狩猟などの人為的かく乱に対して脆弱な種を特定し、その要因を明らかにすることは、優先的に保全すべき対象種の選定や、生息地の管理方針を検討する上で重要です。定量的なデータに基づく種ごとの影響評価を通じて、科学的根拠に基づく持続可能な狩猟の在り方を提示することを目指しています。
ゴリラの食痕
2.地域住民の狩猟活動およびブッシュミート利用実態の理解
ブッシュミート動物の保全においては、動物側の生態理解と同時に、狩猟を日常的に行っている地域住民側の実態把握も欠かせません。本研究では、調査村落における聞き取り調査を通じて、狩猟の頻度、使用する道具、捕獲対象種、獲物の用途(自家消費・販売など)といった情報を収集しています。これにより、地域におけるブッシュミート利用の全体像を明らかにし、地域住民の生計や文化を尊重した保全策の構築に資する知見を得ることを目的としています。
即席の燻製台で燻製にされるブッシュミート
3.ゲームを活用した地域住民主体のブッシュミート動物管理の実証実験
アフリカ熱帯林では一般的な野生動物保全の取り組みとして、森林内に設置された国立公園をエコガードがパトロールし、地域住民の狩猟活動を取り締まっています。しかし、このようなトップダウン型の保全政策は、しばしば地域住民とエコガードの間の暴力的な衝突を引き起こしています。そこで本研究では、地域住民が主体的に野生動物を管理する仕組みの構築を目指し、調査地の実情を反映したシリアスゲーム(アナログ形式)を開発・実施しています。ゲームを通じて、参加者の認識変化や対話の促進、共同管理の可能性について検討し、持続的な資源利用の実現に向けた新たなアプローチを模索しています。
ゲームに使用する道具
4.持続的な狩猟のための協働支援型シリアスゲームの開発と実装
Comming soon...