公式二次創作ストーリー「数多に奏でられる世界」は、作者の趣味により、つたない文章ながら過去・現代・未来、そしてif世界が登場する複雑なものになっています。
二次創作の際に設定を必ず取り入れなければならないということはないので、純粋な気持ちでお楽しみください。
DreamーA
2041年、人類は科学技術の粋を集め、空に浮かぶ都市や、身体をデータ空間に転移させる技術を手に入れ、数が減少した古来の怪異や妖怪に代わり、アンドロイドや地球外生命体といった新たな人外と共生していた。データ空間は人々の夢やおもいでを具現化した世界、現実世界の巨大なサーバーの中に仮想空間を構築し、肉体を微細な粒子に変換し転送する、人々は現実世界でのストレスや不安から逃れ、データ空間で理想の自分を演じたり、過去に浸ったりする、しかし、その夢は常にバグの脅威に晒されている。バグは古来の「獏」のように人々の夢を喰らう。データ空間では安定を保つため、バグを退治し、元の正しいおもいでに戻すことで人々の夢を守る。「Dream-A(ドリームアーキテクト)」の存在が不可欠となっている。Dream-A ユメはデータ空間が誕生した3年前から、数多のデータ空間でバグを退治してきた歴戦のDream-A。電撃を纏った槍を片手に、颯爽と夢を駆け抜ける彼女はさながら彗星のよう。今日もユメはデータ空間を駆け抜けバグを退治していた。そんな中、少女がぬいぐるみを抱きしめる光景を目にする。そのぬいぐるみは黒く変色しており、バグの仕業だと直感したユメはバグを退治しようとした。だがバグは予想外の動きを見せていた。黒く変色した箇所はぬいぐるみが裂けており、バグが喰らうと徐々に修繕されて行ったのだ。奇妙に感じつつもDream-Aの仕事としてバグは退治しなければならない。しかし、ずっと抱きしめられていてはユメも手が出せない状況。少女にぬいぐるみのことを問いかけてみた。少女は答える、このぬいぐるみは遠くへ行ってしまった兄妹の姿をかたどったもので、遊んでいたら腕がとれてしまったのだと。ユメは少女の夢を元に戻そうとしていたができなかった。バグは少女のつらいおもいでを忘れさせてくれているからだ。ユメはバグを退治せずデータ空間を後にする。ユメはDream-Aとしてバグを退治し人々の夢を守ることに誇りを持っていた。しかし、それは本当に人々のためになっているのだろうか?現実世界で起床したユメ。かなり長い間データ空間にいたので時間感覚が狂っている。まだ夜も明けていない。データ空間で感じた疑問が引っかかり気晴らしに散歩に出る。浮遊建築物群の間を配達ロボットや星の光が駈ける。人の姿は見えない、ただ夜だからなのか、みんなデータ空間にいるのか、そんな疑問まで浮かんでくる。技術が飛躍的に進歩した時、科学者達が見ていたものは何か。それは「夢」かもしれない。でも、その夢を実現するために見たのは…
夜明け前の静寂の中、しばらく一人佇んでいた。データ空間での出来事が脳裏を掠める。あの少女の悲しみ そしてバグがもたらす束の間の安寧。ユメは空を見上げた、東の空が明るくなり始める。現実世界はデータ空間とは違う顔を見せる。そこには少しだけれど、繋がり合う営みがあった。
路地の奥に小さなカフェがある。明かりが灯り、コーヒーの香りが漂ってくる。ユメは吸い込まれるようにカフェに入った。マスターはユメの顔を見てにこやかに微笑んだ。「いらっしゃい珍しいお客様ですね」ユメは戸惑いながらも、カウンターに座った。「…コーヒーをいただけますか」マスターは手際よくコーヒーを淹れながらユメに話しかけた。「データ空間から出てきたばかりですか?現実世界はいかがですか?」ユメは正直な気持ちを打ち明けた。「データ空間でバグを退治するDream-Aの仕事をしているんですが、バグがつらいおもいでを忘れさせてくれているところを見たら、本当に人々のためになっているのか分からなくなってきたんです」マスターは静かにユメの言葉に耳を傾け、そして言った。「Dream-Aの仕事は人々の夢を守り 元に戻すこと、つらい過去を忘れさせるバグを見て気持ちが揺らぐのも無理はありません。ですが、夢は過去だけのものではありません、未来に向かって希望を描くことも夢なのです」マスターは続けた。「データ空間は現実世界から生まれたものです。過去のおもいでや夢がデータとして具現化された世界。でも、現実は常に変化し未来へと繋がっています。Dream-Aの力は、過去の修復だけでなく、未来への希望を描くためにも使えるはずです」ユメの心に温かい光が灯った。そうだ、私はDream-Aとして人々の過去を守るだけでなく、未来への希望を照らすことができる。ユメはマスターに感謝を告げカフェを後にした。空はすっかり明るくなっている。ユメは深呼吸をした。データ空間に戻り 少女の元へ向かった。そして、少女に優しく語りかけた。「あなたの兄妹は今もどこかで元気に暮らしている。つらい記憶を忘れることもできるけれど、それを乗り越えることで、あなたはもっと強くなれる」少女はユメの言葉に涙を流した。そして小さな声で言った。「ありがとう」ユメは少女の夢を修復した。ぬいぐるみの腕は元に戻り取れそうになっている。だが少女の顔には笑顔があった。「頑張って直すね!」ユメは再び空を見上げた。現実世界とデータ空間
二つの世界は繋がっている。過去と未来もまた、繋がっている。Dream-A ユメは人々のおもいでを正しく戻し、まだ見ぬ夢へ繋げる。それが彼女の新たな使命だ。
過去から現代、未来を通して、割合に変化はあるものの一貫して人間と人外が存在している
過去において、人間は少数で竜族が多数派。しかしお互いに何かするということは無く平和。各地の村では度々やってくる彗星に関連した儀式が行われていることが多い。
現代では人間が増え竜族は減少、妖怪等も含めた様々な人外が存在し、生物多様性に富んだ社会になっている。社会生活に溶け込む人外も居れば従来の怪異のように振る舞うものもおり、街中で戦闘が発生することも時にはある。良くも悪くも様々なお話が展開される時代。
未来世界になると目覚ましい技術の発展が生じている。浮遊する建造物やデータ空間の中への移動など、そこにあるのは人類の"夢"そのもの。日本古来の怪異や妖怪のような人外は数を減らしているが、地球外生命体やロボットなどの所謂「SF」チックな人外が増えている。
第一節
郊外に住む1人の少女がいた
5歳の時に両親を亡くしひとりで勉強ばかりしている
18歳のある日
普段通りの生活の中で始まるいつも通りの朝
体が少し軽いことに気づく
カレンダーやスマホでよく確認すると2年前を表している
記憶は確かにあるのに
現実と一致しないことに混乱するも数日様子を見た後夢ではないと確信する時間や巻き戻しにまつわる文献を調べていくうちにまた18歳のあの日が訪れる
目覚めたとき体や身の回りの環境は16歳のころに戻っている
少女は研究をはじめできることを次から次へと試した
ループを繰り返している中で研究所に参加し危険な薬品なども扱い始めた
研究所に参加してから初めてのループが起きる日
ループすることをわかった上で研究を続ける
警報が鳴り響いた
近くで人外同士の戦いが起きていると知らされる
そしてまもなく建物内に爆発音が響くその瞬間ループが起こる
どうやらループの原因はこの研究所にあったらしい
研究所はそれぞれが独立した研究を行っていてどの研究が原因なのかを知ることは不可能に近かった
それでも少女は諦めずループの脱出法を模索し 過去に戻ることでループから抜け出すことができると導き出した
もう何度ループしたかわからない
そんな中ついに薬を完成させることができた
早速服用した少女は地面に倒れこみ意識を失った
少女が次に目を覚ますとそこは同じ研究室だった
数分しかたっていなさそうだ
精神と体が分離したらしく自らはフォルテとなっていた
この体ならループ過去へ戻れるかもしれないと少女はエネルギーを一点に集めてタイムホールを作成する
力が不安定でうまくコントロールできていなかったがループから離脱するには十分だった
覚悟を決めた少女はさっと床を蹴りタイムホールに飛び込んだ
第二節
フォルテは、タイムホールから飛び出し、見慣れない風景に目を瞠った。木造で特徴的な構造を持つ建物、人々の装い。先程までいた現代にはほとんど残っていない姿ばかりだ。清流を湛えた村を訪れたフォルテは、村の長の御前に通された。もの珍しさから村で面倒を見てもらえることになったフォルテは、その夜、夜空に輝く大きな彗星が目に入った。村の高台で彗星の光を浴びると、体内に力がみなぎり一時的に覚醒する。一瞬のことだったが、この力をコントロール出来れば現代に帰ることが出来ると直感したフォルテはこの夜のできごとを心に刻み込んだ。
フォルテは、村で暮らす中、【聖流の巫女ペグ】と出会う。不思議な力を持つフォルテに興味を抱いたペグはどこから来たのかなどを熱心に質問した。フォルテは自身の素性を話し、現代に戻るために彗星のことを詳しく知りたいと伝えた。ペグはフォルテの話を信じ、共に現代に戻る方法を探し始めた。村に古く伝わる言い伝えを調べ、彗星が村に現れる度に、特別な儀式が行われていたことを知ったペグは、フォルテや村のみんなに内容を伝える。その儀式では、巫女が琵琶を奏で、村人たちが歌を歌う。そして、彗星の光を浴びたものが行く末を示す道を開くという。
フォルテと巫女は、彗星が再び現れるのを心待ちにした。村の収穫祭や年越しを2人で過ごし、家族のように時を過ごす。そして、その日が来た。ペグが言い伝えに従い琵琶を奏で始める。【流奏の儀式】流れる星と村の清流、そして時間の流れが旋律により調和し重なる。彗星はその全てがフォルテの身体へと注がれる。フォルテの体内には力がみなぎり、白き翼が浮かび上がった。【流奏天スフォルツァンド】として再び覚醒した力で安定したタイムホールを開いたフォルテは最後に、ペグとずっと親友であり続ける約束をし、村のみんなに手を振って光の中へ進んで行った。
眩い光の中を通り抜け、フォルテは現代に戻ってきた。夕暮れの公園、そこには5歳の頃の自分自身が遊んでいた。フォルテは幼い自分に接触する。この世界の自身を脅威から守るために。
第三節
人間と人外が共生する街
そこでは多様な種族のものが酒を共に飲み明かしたり
デスクに向かって仕事をしたり
夜の座敷で住民を怖がらせたり
上空でバトルを繰り広げたり
良くも悪くも退屈しない街だった
遙か1000年ほど前この街に落下した彗星
その欠片を採取し研究している研究所があった
調査が順調に進めば技術が飛躍的に発展するかもしれない
そんな期待を胸に科学者達は研究を続けた
そんなある日
不運なことに研究施設の近くで大規模な戦闘が発生する
付近の住民は避難したものの その区域の建物は大きく損傷した
研究施設の一角で保管されていた彗星の欠片は天井の崩落に巻き込まれ開放される
そして秘められた力が暴走
世界を過去へと回帰させ
その力は時空を超えパラレルワールドにも及んでいく…
第四節
・世界線の交錯
世界線Aに研究所があった場所は、この世界線ではただの何もない空間のはずだった。しかし、何の変哲もない街並みに、突如として過去へと塗り替える波紋が広がった。その波紋は数メートルを包み込み止まったが、フォルテにとって、それは十分すぎるほどの危機感をもたらした。
(一体、何が起きているんだ…あれは間違いなく過去化が起きている…!この世界の私をループから守ると誓ったのに、どうすればいいのか、原因も対処法もわからない…!)
この一大事に、フォルテは焦燥に駆られ、この世界の自分を守らなければと強く思った。どうすればいいのか、途方に暮れるばかりだった。
そんな思考を巡らせながら家に戻ると、この世界の暮日無音と、その恋人である屑星れいにが、楽しそうにおしゃべりをしていた。
「ねーれいにちゃん、今度の休みどこ行くー? 遊園地とかどうかなー?」暮日無音はれいにに満面の笑みで尋ねた。
「遊園地…? うーん、ぼくは、無音ちゃんが行きたいところなら、どこでもいいよ…」れいにが少し照れたように答える。
他愛のない会話。だが、それがフォルテには、何よりも尊く感じられた。
その時、庭の上空に裂け目が生じた。
(ここでも過去化が…!)
そう思ったが、予想は外れた。裂け目から現れたのは、未来の技術が詰まった探査機「停刻中枢アッチェレランド」と、その傍らに立つ子供だった。
「むおーママとおんぷさんを助けに来たのー!」その子供は探査機から降りると、フォルテに向かって元気いっぱいに叫んだ。
「え? なになになに? おんぷさんって、フォルテのこと?」暮日無音が目を丸くして尋ねる。
「行くよー!」子供は半ば強引にフォルテたち4人を探査機の中へと連れ込んだ。
探査機の内部で、子供は自己紹介を始めた。
「ボクは笛月マータ! 未来かーら来たんだー!」マータは胸を張り、得意げに言った。
「み、未来…?」れいにが小さくつぶやく。
「おんぷさーん」マータはフォルテに向き直り、尋ねた。「過去化っていうのが起きてーるの知ってるー?」
「知ってる、って…一体、どういうことなの?」暮日無音が困惑したように言う。
「おんぷさんと、むおーママと力をひとつーにして、この探査機ーで原因をどうにかしに行こー」
(聞いていて話はよく分からなかった。しかし、過去化の状況はフォルテ自身も知る事実であることは確か。ここはひとつ、信用してみる価値があるかもしれない。)
「力をひとつにって…そんな簡単にできるのかな?」
「このメロディを聞けばできーると思うよー!」ポロロン
(過去で聞いた流奏の儀式…!)
気づいた時には【停刻のムオン】として覚醒しなんと時間軸をも超えるタイムホールを作り出していた
「すごーい! これがフォルテが作ってたタイムホールってやつだね! なんか、ワクワクするじゃん!」暮日無音は目を輝かせた。
「ぼく、ちょっとドキドキするけど…フォルテさん、無音ちゃん、頑張ろうね!」れいにがそっと手を握りしめる。
・過去に囚われた世界
タイムホールを抜けた先、世界線Aのループのその後。この世界は完全に過去へと塗り替えられていた。ただ過去の景色が広がっているのではない。そこに住んでいたはずの人々や怪異までもが、彗星の欠片の力によって恐ろしい怪物へと変貌していたのだ。街の中心地には、妖しく光る彗星の欠片が鎮座し、度々、制御不能な力が溢れ出していた。このままでは、制御する前に全てが飲み込まれてしまうだろう。
次々と凶暴に襲いかかってくる怪物たちを、アッチェレランドの武装や、笛月マータが操る「停刻機」による攻撃、さらにはれいにの泡魔法で動きを封じながら、一同は彗星の欠片へと近づいて行った。
「これ、全部昔の景色かな?人は怪物になっちゃってるけど…」暮日無音が叫ぶ。
「みんな、気を付けてー! 強いのが来るー!」マータが警告する。
「ぼくの泡で、動きを止められるかな…!」れいにが必死に魔法を繰り出す。
数多の怪物を退け、ついに彗星の欠片の前にたどり着いた停刻。制御のため、アッチェレランドでキャプチャーを試みるものの…
「させない」その言葉を放ったのは、見知らぬ少女だった。
いや――
フォルテは知っていた。
(あれは、紛れもなく「私の」この世界の身体だ。)
憎悪に包まれたその身体は、姿を変えてゆく。彗星の力を分け与えられ、暴走した自我がその名を名乗る。【クラ・スター】と。
「この体は、お前たちのものじゃない!」クラ・スターは、自身の身長と同じほどの巨大な剣を出現させ、フォルテたちに斬りかかってきた。その攻撃を確かに避けたはずだったが、身体に強い衝撃が走る。斬りかかってきたはずのクラ・スターは既に前方にはおらず、攻撃は背後から放たれていた。彗星の力により、彼女もまた時間に干渉できていたのだ。
「むおーママ!クラ・スターも時間をいじってるー!」マータが焦りの声を上げる。
すぐに振り返り反撃を試みるも、フォルテたちの攻撃は大きく外れる。クラ・スターは既に横に回り込んでいた。(…まるで未来が見えているかのように回避されている…!)
(彼女が時間に干渉する限り、反応速度で劣るこちらの攻撃は通じない。未来を見ることはできないのかと絶望しかけた時、「二人で…!」誰かの声がした。いや――これは、自分自身の声だ。)
・調停の刻
ムオンがクラ・スターの前方からエネルギー弾で薙ぎ払う。
「それーっ!」
クラ・スターは避けた
はずだったが、(フォルティッシモ!)
その背後からフォルテの一撃を受けていた。
ムオンとフォルテはひとつであり、二人でもある。
【調停刻’ムオン&フォルテ】が誕生した瞬間だった
停刻内で最高の威力を誇るその攻撃は、彗星の欠片をも刺激する。煌々と光を放つ欠片。
「この体は…彗星の力で…復活…!」クラ・スターは攻撃で、意識が朦朧とする中、彗星に手を伸ばす、が、過去化に飲み込まれてしまった。その光景は、吸い込まれるというよりも、景色が塗り替えられるのに近かった。
「むおーママこーれに乗って!」
マータが探査機のレバーを操作する。
アッチェレランドの一部が【停刻機アルモニカ】として分離し、そこに調停刻’ムオン&フォルテが乗り込む。そして、過去化の速度を超える速さで突進した。
その結果、彗星の欠片はアルモニカに取り込まれ、過去化された時間は解放され、元に戻っていく。
アッチェレランドからその様子を見ていたマータは誇らしげな顔をしていたが、れいには少し恥ずかしそうだった。
「やったねーフォルテ!れいにちゃん!マータ!これで、みんな助かったってことだよねー!」無音ちゃんが嬉しそうに言う。
「うん、ぼくも、頑張ったかな…?」れいにが少しはにかんで答える。
フォルテは少し複雑な心境になりつつも脅威が去ったことに安堵する
世界線Aから離脱し、世界線Bへと帰還する停刻の4人。世界線Aの人々は、何が起きたのか知る由もない。だが、確かに存在するのは、街が救われたという事実だけだった。