37. Sasaki, H., Miyashita, T., Minamikawa, S., Kanaji, Y. (in press) Abundances of Baird’s beaked whales (Beradius bairdii) in the eastern part of the Sea of Japan estimated using line transect sampling data in 2008 and 2018. Mammal Study.
36. 三品佳乃子, 大泉 宏, 廣瀬慎美子, 前田ひかり, 佐々木裕子, 南川真吾, 金治 佑 (in press) ハクジラ類の消化管内における海洋ゴミの出現実態:文献レビューと漁獲物記録の再分析に基づく現状評価. 水産海洋研究
Mishina. K., Ohizumi, H., Hirose, M., Maeda, H., Sasaki, H., Minamikawa, S., Kanaji, Y. (in presss) The research status and trend on marine debris digested by toothed whales: an attempt based on literature review and stomach contents reanalysis. Bulletin of the Japanese Society of Fisheries Oceanography.
35. Kanaji, Y., Furumaki, S., Sasaki, H. (in press) Seasonal and multidecadal changes in the distribution of small cetaceans inhabiting the western North Pacific under a changing ocean environment, inferred from species distribution models. Diversity and Distributions.
34. Funasaka, N., Sasaki, H., Inamori, D., Aoki, K., Kanaji, Y. (2025) Connectivity of common bottlenose dolphin habitats between the Kuroshio Current and its adjacent waters, as evidenced by extended-term satellite tracking. Marine Mammal Science, 42, e70089
https://doi.org/10.1111/mms.70089
33. Irie, A., Maeda, H., Tanabe, A., Sahara, H., Nozaki, R., Kondo, H., Kanaji, Y., Kanda, N., Murase, H. (2025) Inter-population variability in DNA methylation-based chronological age estimation model described from common bottlenose dolphin Tursiops truncatus. Fisheries Science, 91, 1203–1215.
https://doi.org/10.1007/s12562-025-01907-0
32. Kanaji, Y., Maeda, H., Sasaki, H. (2025) Recovering or still depleted? Updated population assessment of Tappanaga, a northern local population of short-finned
pilot whales (Globicephala macrorhynchus) off the coast of Japan. Aquatic Conservation: Marine and Freshwater Ecosystems, 35, e70051 .
https://doi.org/10.1002/aqc.70051
『回復中か、依然として枯渇しているのか?日本沿岸のコビレゴンドウ地域個体群タッパナガの個体群状況の再評価』
コビレゴンドウ北方型(タッパナガ)は黒潮親潮移行域に生息する地域個体群で、過去の捕鯨により大幅に個体数が減少したと考えられています。1980年代に初めて捕獲枠に基づく管理が導入され、2007年以降は長らく自主的な捕獲停止が続いていました。本研究では、専用目視調査のデータに基づいて最近の個体数を推定するとともに、1985~2006年に推定された過去の個体数推定値に、単純な個体群動態モデルを当てはめて個体群の動向を推定しました。2007年、2021年、2022年の推定資源量はそれぞれ1659(変動係数、CV = 0.79)、2634(0.93)、759(0.64)でした。個体群動態モデルからは、過去の捕鯨によって個体数が減少し、捕鯨の自主的な停止後も明確な回復傾向が見られなかったことを示しました。推定された環境収容量と比較しても、現在の個体数は依然枯渇状態にあると考えられます。保全管理策を改善するため、捕獲停止にも関わらず個体群が回復しない原因を特定する努力が必要です。
31. Kanaji, Y., Sasaki, H. (2024) Partial abundances of three fishery-targeted species of Delphinidae cetaceans (false filler whale, striped dolphin, and Pacific white-sided dolphin) off the Pacific coast of Japan, estimated by the conventional line-transect approach. Fisheries Science, 90, 871–880.
https://doi.org/10.1007/s12562-024-01813-x
『従来型ライントランセクト法によって推定された日本の太平洋沿岸域におけるオキゴンドウ、スジイルカ、カマイルカの部分的生息個体数』
本研究で取り上げた3種は、日本沿岸のいるか漁業対象種となっていますが、一方専門の資源調査(目視調査)が長らく行われてきませんでした。そこでハンドウイルカなどを主目的とした過去の調査データを再解析することで、これらの過去~近年の個体数推定を試みました。オキゴンドウ、スジイルカ、カマイルカの分布域は日本の近海から外洋域まで広く分布しているため、主に経済水域のみを対象とした調査データからは部分的な生息個体数しか得られません。それでも、オキゴンドウ約4100頭、スジイルカ84,000頭、カマイルカ28,000頭が調査時域の初夏に、日本沿岸域に来遊してると推定されました。
30. Kanaji, Y., Williams, R., Zerbini, A. N., Branch, T. A. (2024) Density dependence only affects increase rates in baleen whale populations at high abundance levels. Journal of Applied Ecology, 61, 2258-2269
https://doi.org/10.1111/1365-2664.14744
『密度効果は高い資源水準のときのみヒゲクジラ類の個体群増加率に影響する』
ロジスティックモデルは個体数がゼロ近くから初期状態まで回復する過程をS字カーブで表現したもので、様々な野生動物や水産資源の管理・保全に利用されています。長寿命の鯨類では密度効果が遅れて個体群増加に現れるため 、従来環境収容力(初期状態の個体数、Kで表される)の60%レベルで最大の個体群増加率を示すとされてきました。この60%Kは世界的に用いられる管理目標としても重要です。本研究ではシミュレーションデータと、世界のヒゲクジラ個体群の時系列個体数データを用いてロジスティックモデルの再解析を試みたところ、最大の個体群増加率は60%Kよりも高いところで現れ、平均80%Kまで指数関数的に増加することが分かりました。
29. Kanaji, Y., Sasaki, H., Ikuta, S., Azuma, N., Kobayashi, M. (2024) Temperature-related movement and habitat utilization patterns of Dall’s porpoises, small cetaceans seasonally
migrating into the subarctic Pacific. Frontiers in Marine Science, 11, 1429358.
https://doi.org/10.3389/fmars.2024.1429358
『水温に関係したイシイルカの移動と生息地利用パターン』
初夏に北海道羅臼沿岸に来遊するいイシイルカ計8個体に電子タグを装着し、その後の移動を追跡しました。移動パターンは大きく2つに分かれ、追跡期間中オホーツク海内に留まったのが4個体、千島列島を越えて太平洋側に移動したのが4個体でした。太平洋側に南下した個体はいずれも、表面水温17度の等温線に近づくと遊泳方向を変え、やがてオホーツク海に戻る移動パターンを示しました。またそのうち1個体は10月~11月にかけて宗谷海峡を越えて日本海側へ入り、大陸沿岸を南下する移動を示しました。本種の移動・回遊が水温分布に影響を受けること、また秋以降の越冬回遊は宗谷海峡を経由する可能性が示されました。
28. Tashiro, K., Segawa, Y., Suzuki, M., Kanaji, Y., Maeda, H., Itou, T. (2024). Cultivation of primary cells derived from three organs of a striped dolphin (Stenella coeruleoalba) using a simple culture method. In vitro cellular & developmental biology-Animal.
https://doi.org/10.1007/s11626-024-00939-7
『簡便な培養法を用いたスジイルカ(Stenella coeruleoalba)の3つの臓器を由来とした初代培養細胞の培養』
スジイルカの腎臓、腸、肺の組織から、簡便な組織片培養法を用いて初代培養細胞を作製した研究です。標本採取に関して協力を行いました。
27. 金治 佑,服部 薫,佐々木裕子,中村 玄 (2024) 海産哺乳類と漁業と生態系の関わり. 水産海洋研究, 88, 18–29.
水産海洋学会の地域研究集会シリーズ「海と漁業と生態系に関する研究集会」の第6回として海産哺乳類をテーマとしたシンポジウムを開催しました。水産海洋学会では1962年の設立当初「鯨漁場座談会」と称した研究集会が活発に行われていました。捕鯨産業の縮小とともに、鯨類研究の位置づけも変化してきましたが、資源評価・資源管理のための研究は依然として重要であり、また混獲や漁業被害、希少性評価、認証制度、気候変動への対応といった新たな研究ニーズも生まれています。本シンポジウムでは、海産哺乳類を取り巻くこれらの諸問題を取り上げ、水産海洋学としての今後の研究展開について議論しました。
26. 金治 佑 (2024) 小型鯨類の保全管理と海洋生態系:長期データから学んだこと. 哺乳類科学, 64, 137-141.
https://doi.org/10.11238/mammalianscience.64.137
日本哺乳類学会から2022年度奨励賞をいただき、受賞研究の紹介として学会誌に記事を掲載していただきました。私が鯨類研究を始めたいきさつや研究の概要などをつづっています。
25. Kanaji, Y., Murase, H., Yonezaki, S. (2023). What makes Sanriku waters the southernmost habitat of northern fur seals? Winter–spring habitat use in relation to oceanographic environments. PLOS ONE, 18, e0287010.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0287010
『何が要因で三陸海域がキタオットセイの南限となっているのか?海洋環境に関連した冬⁻春季の生息地利用』
北太平洋西部のなかでも、三陸沖(本州北東部)は冬から春にかけて、キタオットセイの最南端の生息地となっています。この海域は、南向きの親潮寒流と北向きの黒潮暖流が混合することで、高い生産性を持ちます。キタオットセイは繁殖地から餌を求めてこの海域に移動しますが、彼らの生息域の南縁の位置は年によって異なることがしれれてきました。「なぜ」「どのように」この海域を最南端の生息地として利用するのかを理解するため、標準的なライントランセクト法と生息地モデリングを組み合わせて、キタオットセイの密度と個体数を推定しました。本種の分布パターンを、7つの静的・動的環境変数を用いて、一般化加法モデルにより解析しました。推定モデルからは、オットセイが調査海域に広く分布している一方、等深線100mと200mの間では遭遇率が低いという分布パターンが示されました。これらの空間的に分離した生息環境は、陸棚縁辺と沖合の前線域がオットセイの餌場として重要な役割を担っていることを示唆しています。一方、海面水温は14℃までオットセイの密度と正の相関を示しており、さらに暖かい海域が温度バリアとして働き、オットセイが適温域の端に集中したことを示している可能性があります。
24. Kanaji, Y., Sasaki, H., Hakamada, T., Okamura, H. (2023) Hierarchical modelling approach to estimate the abundance of data-limited cetacean
species and its application to fishery-targeted and rarely seen delphinid species off Japan. ICES Journal of Marine Science, 80, 1643-1657.
https://doi.org/10.1093/icesjms/fsad091
『データが限られる鯨種の個体数推定のための階層的モデリングアプローチとその漁業対象種・希少性種への適用』
海棲哺乳類のうち、とくに漁業対象種や希少性種の個体数推定および資源トレンド評価は保全・管理のために重要ですが、鯨類の場合広域に分布するため一度の調査で十分なデータが得られないことも多くあります。2019-2021年に実施された小型鯨類専門の目視調査(第III期調査)も一例で、5つの調査海域を3年かけてカバーしています。小型鯨類の多くは群れで観察されるため、発見頭数自体が多くても、発見群数自体は一桁程度に留まる種もありました。そこでベイズ法を用いて同種または生物特性の類似する種の関連情報を事前分布に用いることで、限られたデータで個体数推定を可能にする方法を提案しました。また分布の年変動をランダム効果で表現した指数型個体群動態モデルを推定し、各種の資源トレンドを評価しました。漁業対象6種と希少性2種のうち、ハンドウイルカのみが減少傾向を示しました。本手法は資源管理の過去の合意を活かしつつ最新の資源情報にアップデートでき、保全優先種の特定や個体数の長期モニタリングにも繋がると考えられます。
23. Sasaki, H., Kanaji, Y., Hakamada, T., Matsuoka, K., Miyashita, T., Minamikawa, S. (2023) Estimating the abundance of Baird’s beaked whales in waters off the Pacific coast of Japan using line transect data (2008–2017). Fisheries Science, 89, 439-447.
https://doi.org/10.1007/s12562-023-01698-2
『2008-2017年のライントランセクトデータを用いた日本太平洋岸のツチクジラ個体数推定』
ツチクジラは太平洋沿岸海域において小型捕鯨業(現、基地式捕鯨業)の主要な対象種となっています。2008年からツチクジラ専門の資源調査(目視調査)が実施されており、本研究では一連の調査で得られたデータをライントランセクト法により解析し、長期時系列の個体数推定値を得ました。最新の個体数推定値は今後の資源管理に活用されることになります。
22. Kanaji, Y., Murase, H., Nagashima, H., Minami, K., Matsukura, R., Setou, T., Sasaki, H., Yonezaki, S. (2023). Bayesian estimation of the abundance of northern fur seals Callorhinus ursinus in the wintering and feeding ground off Sanriku on the Pacific coast of northern Japan. Fisheries Science, 89, 289-299.
https://doi.org/10.1007/s12562-023-01672-y
『越冬・摂餌場である三陸沖でのキタオットセイ個体数のベイズ推定』
通常のライントランセクト法を用いた個体数推定を行う場合、事前にいくつかの調査ブロックを設計し、ブロックごとにトラックラインを配置します。個体数推定値もブロックごとに計算されることになりますが、発見が一つもないブロックがあった場合、個体数推定値がゼロとなるだけでなく、推定値の分散もゼロと計算されます。つまり、100%の確信をもって個体数がゼロであるという推定結果となりますが、それは現実的ではありません。個体数が小さく遭遇率が低いため調査では見逃してしまったか、あるは環境要因でブロック外に移動しているかもしれません。この場合、むしろ分散(=不確実性)は高いと考えるべきでしょう。そこで調査ブロックをランダム効果に置いたベイズ型ライントランセクトモデルを開発し、キタオットセイの個体数推定に適用しました。
21. Kanaji, Y., Funasaka, N., Sasaki, H. (2022). Mesoscale movement patterns of common bottlenose dolphins along Kuroshio Current and its bifurcation. Fisheries Oceanography, 31, 429-442.
https://doi.org/10.1111/fog.12593
『黒潮流域とその分枝におけるハンドウイルカの中規模移動パターン』
生息域とその変動は個体群構造を理解し管理・保全へ導くために重要な情報となります。特に日本沿岸では黒潮・黒潮分枝流の流路が日々変化し、それが海域の物理・生物環境に大きな影響を与えています。本研究ではハンドウイルカに装着したARGOS衛星標識によって、その生息地利用の時空間変動を調べました。ベイズ状態空間モデルにより行動状態が摂餌様と直線移動様の2つのモードに判別し、さらにそれらを海洋環境との関連で分析しました。標識を装着した12個体のうち、黒潮内側域に留まった個体は頻繁に摂餌様モードを示す一方、黒潮を超えて沖合に移動した個体は摂餌様モードをほとんど示しませんでした。前者は黒潮内側の高栄養塩、低水温海域に一致する一方、後者は時計回りの黒潮分枝流によく対応していました。本種は黒潮内側域に主要な分布域を持ち、海流によって一時的に沖合域に流出することがあると考えられます。
20. Kanaji, Y., Maeda, H., Okamura, H., Punt, A. E., Branch, T. (2021). Multiple-model stock assessment frameworks for precautionary management and conservation on fishery-targeted coastal dolphin populations off Japan. Journal of Applied Ecology, 58, 2479–2492.
https://doi.org/10.1111/1365-2664.13982
『日本沿岸で漁業対象となっているイルカ個体群の予防的管理・保全に向けた複数モデル資源評価アプローチ』
日本沿岸で漁業対象となっているマイルカ科鯨類の多くの種で、長期時系列の資源個体数情報や生物学的情報が限られてきました。本研究ではベイズ法を用いてロジスティック型の余剰生産モデルと齢構成モデルを推定しました。近年の資源調査から得られた長期個体数推定値と漁業者から提出された操業記録に基づく資源指数値をモデルに当てはめるとともに、既往の生物学的情報を事前分布に用いています。環境変動や種間競合が資源動態に与える影響を調べるため、状態空間モデルと種間競合モデルによる推定も併せて開発しました。通常の単一種モデルでは1800年代から近年までの資源減少率が中央値基準で4.0%(ハナゴンドウ)から8.4%(ハンドウイルカ)と推定されました。一方、一部の種では状態空間モデルや種間競合モデルにより減少リスクがより大きく評価されています。
19. Kanaji, Y., Miyashita, T. (2021). Habitat use and habitat overlap of Delphinidae species revealed by mixed-species group occurrence in the North Pacific Ocean. Marine Mammal Science. 37, 1128-1138.
https://doi.org/10.1111/mms.12794
『混群形成から明らかにする北太平洋でのマイルカ科鯨類の生息地利用とそのオーバーラップ』
マイルカ科の異なる種の群れ同士が交じり合って観察されることがしばしばあります。こうした混群の利点として、餌を見つけやすくする、捕食者から逃げやすくする、異種間の社会行動の3つが挙げられています。目視観察のみでこれらの要因を特定することはできませんが、同時、同所的に生息地を共有しているという事実は、生態的ニッチの重複を示す重要な指標と考えられます。本研究では種間の混群比率を多次元尺度構成法(NMDS)により分析しました。種間の共通性はNMDSの二次元配置上に再現され、カマイルカとセミイルカ、ハンドウイルカとコビレゴンドウ、スジイルカとマイルカは最も高い頻繁で混群を作る種の組合せでした。実際これらの種はそれぞれ北太平洋の移行領域、亜熱帯領域、亜寒帯境界域で主要分布域が重複しています。一方、二次元配置図上では、小型種とゴンドウ類とで共通性が少ないことや、スジイルカ属の3種が近接して配置されるなど、混群の形成は地理分布の重複を単に再現するだけでなく、社会的、生態的な類似性をも示している可能性があります。
18. Kanaji, Y., Yoshida, H., Sasaki, H., Okazaki, M., Kobayashi, M. (2020). Distribution and abundance of dalli-type Dall’s porpoises Phocoenoides dalli migrating into waters off southeastern Hokkaido, Japan, during summer: results of 2014–2016 aerial surveys. Fisheries Science, 86, 287–298.
https://doi.org/10.1007/s12562-019-01382-4
『北海道南東海域に来遊するイシイルカ型イシイルカの分布と個体数:2014-2016年に実施された航空目視調査の結果』
2014-2016年の各年、釧路空港を拠点に航空機を用いた鯨類目視調査を実施しました。この調査で記録されたイシイルカのデータを用いて、ライントランセクト法により個体数推定を行いました。同海域における過去の発見情報からロジスティックモデルによりイシイルカ型を検出することで、個体群単位の個体数推定を可能にしています。イシイルカは2015年と2016年には比較的沿岸寄りに分布していたのに対し、2014年は沖合に分布している傾向が見られました。
17. Kanaji, Y., Gerrodette, T. (2020). Estimating abundance of Risso’s dolphins using a hierarchical Bayesian habitat model: A framework for monitoring stocks of animals inhabiting a dynamic ocean environment. Deep-Sea Research Part II: Topical Studies in Oceanography, 175, article104699.
https://doi.org/10.1016/j.dsr2.2019.104699
『階層的ベイズハビタットモデルを用いたハナゴンドウの個体数推定:変動する海洋環境に生息する動物個体群のモニタリングのためのフレームワーク』
ライントランセクトデータをハビタットモデルに応用する場合、分布密度を推定する線形関数、距離に応じた発見確率を推定する発見関数、平均群れサイズを推定する関数から構成され、それらが相互に相関する階層構造を持ちます。ベイズMCMCを用いることで、こうした複雑な階層構造を持つモデルも柔軟に推定することが可能になります。この研究では、ハナゴンドウのデータを用いて、ハビタットモデルの開発を行い、空間分布の推定を行いました。本種は黒潮内側域に特に高密度に分布し、流路変動によって分布域が変わる可能性が示唆されました。また近年は本種の個体数が増加傾向にあることが示されました。
16. Watari, S., Murase, H., Yonezaki, S., Okazaki, M., Kiyofuji, H., Tamura, T., Hakamada, T., Kanaji, Y., Kitakado, T. (2019). Ecosystem modeling in the western North Pacific using Ecopath, with a focus on small pelagic fishes. Marine Ecology Progress Series, 617–618, 295–305.
https://doi.org/10.3354/meps12508
『Ecopathによる小型浮魚類に着目した北西太平洋での生態系モデリング』
生態系の食う-食われるの関係をバイオマスの方程式から再現する生態系モデルの一種、Ecopathを用いて、北西太平洋の生態系構造を親潮沿岸域、黒潮沿岸域、沖合域の3海域で分析しました。このモデルから漁業の与える生態系への影響を評価しています。私は鯨類のバイオマス推定の部分を担当しています。
15. 金治 佑, 袴田 高志, 服部 薫, 小林 万里, 北門 利英, 加藤 秀弘(2018)海棲哺乳類の個体数推定手法―現状と将来課題―.哺乳類科学, 58, 83-84.
https://doi.org/10.11238/mammalianscience.58.83
富山大学において行われた日本哺乳類学会2017年度大会で、個体数推定手法に関するシンポジウムを開催しました。私から国内資源として管理されている小型鯨類の個体数調査を紹介し、続いて国際共同調査としての大型鯨類資源調査、トドの頭数管理を目的とした航空目視調査、上陸個体観察によるゼニガタアザラシの個体数推定に関して話題提供いただきました。個体数解析上の問題点や個体数推定値を管理へ応用するための解析アプローチについてコメント・議論がありました。
14. Kanaji, Y., Miyashita, T., Minamikawa, S., Yoshida, H. (2018). Abundance estimates of six species of Delphinidae cetaceans off the Pacific coast of Japan between 1985 and 2015. Marine Mammal Science, 34, 1034–1058.
https://doi.org/10.1111/mms.12502
『日本の太平洋岸に分布するマイルカ科6種の1985-2015年の個体数推定値』
ハンドウイルカやコビレゴンドウなどの小型鯨類は追込み漁業や小型捕鯨業などで漁獲されています。しかし、捕獲枠の根拠となる個体数推定値は1990年代以降更新されていませんでした。2006年と2007年に小型鯨類専門の目視調査が実施され(第Ⅰ期調査)、さらに2014年と2015年には第2期調査が計画され、これらの調査に参加することになりました。本研究では一連のデータを標準的なライントランセクト法により解析し、ハンドイルカ、南方型コビレゴンドウ(マゴンドウ)、ハナゴンドウ、マダライルカ、シワハイルカ、カズハイルカの個体数を推定しました。
13. Kanaji, Y., Yoshida, H., Okazaki, M. (2017). Spatiotemporal variations in habitat utilization patterns of four Delphinidae species in the western North Pacific, inferred from carbon and nitrogen stable isotope ratios. Marine Biology, 164, article 65.
https://doi.org/10.1007/s00227-017-3107-z
『北西太平洋に生息するマイルカ科4種について炭素・窒素安定同位体比から推測された生息地利用様式の時空間変動』
水産研究・教育機構が前身の水産庁時代から実施している鯨類目視調査では、目視観察のみならず、非致死的手法により皮膚片のバイオプシー採集を行ってきました。本研究はこれらバイオプシー標本コレクションから、ハンドウイルカ、マダライルカ、スジイルカ、マイルカの炭素(C)・窒素(N)安定同位体比を分析しました。4種のC-Nマップ上にベイズ標準楕円を推定した結果、スジイルカとマイルカはともに亜寒帯境界域に分布のオーバーラップが知られている一方、安定同位体比には明瞭な違いが見られ、競合を避けるニッチ分割の存在が示唆されました。GLMMによる時空間解析からは、南北および沿岸・沖合間で安定同位体比に違いが見られました。
12. Kanaji, Y., Okazaki, M., Miyashita, T. (2017). Spatial patterns of distribution, abundance, and species diversity of small odontocetes estimated using density surface modeling with line transect sampling. Deep-Sea Research Part II: Topical Studies in Oceanography, 140, 151–162.
https://doi.org/10.1016/j.dsr2.2016.05.014
『ライントランセクト法と密度面モデリングを用いて推定された小型ハクジラ類の空間分、個体数、種多様性』
1983~2006年までの鯨類目視調査アーカイブデータをハビタットモデルとライントランセクトモデルを組み合わせることで定量的に解析し、個体数を空間的に推定しました。例えばマダライルカは北太平洋の亜熱帯循環域に広く分布し、180万頭の個体数推定値が得られ、またシャチは亜寒帯域を中心に19千頭の個体数推定値が得られました。さらにこれら分布密度マップを重ね合わせることで、種多様度マップを作成しました。種多様度は亜熱帯から亜寒帯の移行域に高くなる傾向が見られ、これは暖水を好む種と冷水を好む種が移行域付近で混合するためと考えられました。
11. Kanaji, Y., Okazaki, M., Watanabe, H., Miyashita, T. (2016). Biogeography of small odontocetes in relation to wide-scale oceanographic structure in the North Pacific Ocean. Fisheries Oceanography, 25, 119–132.
https://doi.org/10.1111/fog.12140
『北太平洋における大規模海洋構造に関連した小型鯨類の生物地理』
水産研究・教育機構が水産庁研究所時代から実施している鯨類目視調査は、1983年に本格開始され、2006年までに555,600kmを調査し、ハンドウイルカなど小型ハクジラ14種について7000群の発見が記録されています。これら過去のアーカイブデータをレビューし、種ごとの分布海域を整理・報告しました。カズハゴンドウやシワハイルカは黒潮・黒潮続以南の亜熱帯域に、マイルカは亜寒帯境界以南に、カマイルカやセミイルカは亜寒帯フロント以南に、イシイルカは亜寒帯フロント以北に主に分布し、これらの海域に跨って分布する種も見られました。北太平洋の海洋構造が、小型ハクジラの分布域や種構成に強く関係していることが分かりました。
10. 加藤 秀弘, 安田 直人, 大泰司 紀之, 小林 万里, 北門 利英, 金治 佑, 服部 薫(2015)海生哺乳類の管理を考える~ゼニガタアザラシとジュゴンについて~. 哺乳類科学, 55, 77-78.
https://doi.org/10.11238/mammalianscience.55.77
私が委員を務めている日本哺乳類学会保護管理専門委員会・海生哺乳類部会が主催したシンポジウムの記録です。喫緊の保護・管理対策が必要な2種を取り上げ、現状と課題を整理するとともに、今後の管理措置について議論を行いました。
9. Kanaji, Y., Miyashita, T., Yoshida, H., Okazaki, M., Kishiro, T. (2015). Abundance estimates of dalli-type and truei-type of Dall’s porpoise Phocoenoides dalli in the western central part of the Sea of Okhotsk, July–September between 1990 and 2010. Fisheries Science, 81, 611–619.
https://doi.org/10.1007/s12562-015-0887-2
『1990-2010年の7-9月、オホーツク海中西部におけるイシイルカ型イシイルカとリクゼンイルカ型イシイルカの個体数推定』
2009年と2010年にオホーツク海中西部において鯨類目視調査が行われ、その一部に首席調査員として参加する機会を得ました。このデータに加え、1990年以降に同海域で行われた調査データを再解析することで、イシイルカ2体色型(イシイルカ型・リクゼンイルカ型)の個体数推定を行いました。2つの体色型は体側部の白斑形状から目視により識別できるものの、発見状況によっては識別が困難な場合があり、型不明と記録されます。本研究ではブロック別の型比率をブートストラップにより推定することで、型別の個体数を得ることができました。同海域へ来遊する個体数は年変動があるものの明瞭なトレンドが検出されなかった一方、2010年にリクゼン型の来週が少なかったのはオホーツク南西部の水温が比較的高かったことが原因の可能性があります。
8. Kanaji, Y., Okazaki, M., Kishiro, T., Miyashita, T. (2015). Estimation of habitat suitability for the southern form of the short-finned pilot whale (Globicephala macrorhynchus) in the North Pacific. Fisheries Oceanography, 24, 14–25.
https://doi.org/10.1111/fog.12074
『北太平洋におけるコビレゴンドウ南方型の生息地適度推定』
鯨類目視調査ではトラックライン上での発見(一次発見)のほか、発見群への接近中や漂泊中などにも二次発見が記録されますが、ライントランセクト法を用いた個体数推定では通常これら二次発見のデータは利用できません。この研究ではpresence-only型ハビタットモデルの一種ENFAにより、二次発見データを活用して鯨類の種分布域を推定するアプローチについて検討しました。別途presence-absence型のGLMを用いた分布域推定も行いました。これら2つのモデルから南方型コビレゴンドウ(通称、マゴンドウ)の分布域を推定した結果、ENFAは分布好適域を広く推定する一方、GLMは主要分布域のコントラストを強調する推定結果となりました。いずれによる分布推定域も亜熱帯循環域に一致し、黒潮流軸の指標として用いられる200m深水温がとくに分布推定に強く寄与していました。日本近海では黒潮流路変動が本種の分布に影響を与えることが示唆されました。本論文は2016年度水産海洋学会論文賞を受賞しました。
7. Kanaji, Y., Okazaki, M., Miyashita, T. (2014). Habitat utilization by small cetaceans in summer in the North Pacific. Bulletin of Fisheries Research Agency, 38, 111–113.
『小型鯨類による夏季の北太平洋における生息地利用』
2011年9月に遠洋水産研究所(現、水産研究・教育機構水産資源研究所)において、CLIOTOP(気候変動と海洋高次捕食者に関する国際研究計画)ワークショップが開催されました。この本会合の記録集に記載された論文の一つで、北太平洋で1980年代から実施されている鯨類目視調査で記録された鯨類各種の分布状況について紹介しました。
6. 土光 智子, 金治 佑, 村瀬 弘人, 佐々木 裕子, 望月 翔太(2013) ハビタット解析って何? : ハビタットモデルを用いた分布域推定の最新手法. 哺乳類科学 53, 197-199.
https://doi.org/10.11238/mammalianscience.53.197
麻布大学で行われた日本哺乳類学会2012年大会で、ハビタットモデルの基本理論と解析方法を解説する研究集会を開催しました。海棲哺乳類から3題、陸棲哺乳類から2題、ハビタットモデルの適用例を紹介し、解析上の問題点や保全・管理への応用について議論しました。集会報告として、学会誌に掲載されています。
5. Kanaji, Y., Tanabe, T., Watanabe, H., Oshima, T., Okazaki, M. (2012). Variability in reproductive investment of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) in relation to the ocean-climate dynamics in the tropical eastern Indian Ocean. Marine and Freshwater Research, 63, 695–707.
https://doi.org/10.1071/MF11146
『東部熱帯インド洋で漁獲されるカツオの海洋-気候変動に関連した繁殖投資変動性』
熱帯東部インド洋で巻き網船により漁獲されたカツオから生殖腺と耳石を採集し、繁殖投資の季節的な変化を調べました。生殖腺体指数(GSI)は北東モンスーン期の1⁻2月に高く、耳石輪紋から推定された孵化時期にも一致していました。この時期、南赤道海流が熱帯東部インド洋流入し亜表層に冷水域が形成されます。GSIと水温の関係をGLMにより解析結果した結果、50m深水温24⁻26℃でモードを示し、カツオ産卵の季節性は、モンスーンとそれに伴う海流の変化が関係していると考えられます。
4. Kanaji, Y., Okamura, H., Miyashita, T. (2011). Long-term abundance trends of the northern form of the short-finned pilot whale (Globicephala macrorhynchus) along the Pacific coast of Japan. Marine Mammal Science, 27, 477–492.
https://doi.org/10.1111/j.1748-7692.2010.00410.x
『太平洋沿岸におけるコビレゴンドウ北方型の長期個体数トレンド』
三陸~道南沖に生息するコビレゴンドウはタッパナガと呼ばれ、北太平洋に広く分布する個体群(通称マゴンドウ)とは遺伝的に異なる地域個体群と考えられています。本個体群は背部の白色斑から目視観察でも容易に識別が可能となっています。また三陸沖で小型捕鯨船により捕獲対象となってきました。本個体群の最新生息状況を把握するため、2006年に初めての専門目視調査が実施されました。本研究では、この専門調査のデータをライントランセクト法により解析するとともに、過去に三陸~道南沖で行われた他目的の調査データを再解析することで、長期時系列の個体数推定を行っています。群れサイズ推定に幾つかのシナリオを仮定した結果、いずれのケースでも1980年代に6~8千頭程度生息していた本個体群が、近年は2~3千頭台に留まっていると推定されました。
3. Kishida, M., Kanaji, Y., Xie, S., Watanabe, Y., Kawamura, T., Masuda, R., & Yamashita, Y. (2011). Ecomorphological dimorphism of juvenile Trachurus japonicus in Wakasa Bay, Japan. Environmental Biology of Fishes, 90, 301–315.
https://doi.org/10.1007/s10641-010-9743-5
『若狭湾におけるマアジ稚魚の形態学的二型』
2003年9月~2004年8月の間、栗田湾(若狭湾南西部)でマアジ稚魚を採集し、体長組成追跡から5つの孵化群を検出しました。これら孵化群間で、体高、体幅、胸鰭長、尾鰭長などを比較した結果、稚魚期の特に体長50–70 mmで形態変異が大きいことが分かりました。このうち流線形型の稚魚はカタクチイワシ稚魚などを捕食するのに適し、扁平型の稚魚はクラゲに伴って回遊する場合に適した形態を考えられ、稚魚期の形態変異は孵化時期や孵化場所とその後の輸送過程に関連すると示唆されました。
2. Kanaji, Y., Kishida, M., Watanabe, Y., Kawamura, T., Xie, S., Yamashita, Y., Sassa, C., Tsukamoto, Y. (2010). Variations in otolith patterns, sizes and body morphometrics of jack mackerel Trachurus japonicus juveniles. Journal of Fish Biology, 77, 1325–1342.
https://doi.org/10.1111/j.1095-8649.2010.02752.x
『マアジ稚魚の耳石形態、サイズ、外部形態の変異』
若狭湾で採集されたマアジ稚魚の耳石を光学顕微鏡下で観察すると、表面全体が不透明の耳石(不透明タイプ)と、縁辺部が透明に見える耳石(透明タイプ)の2つが存在することが分かりました。一方、五島灘で採集されたマアジ稚魚からは不透明タイプの耳石のみが観察されました。頭長、胸鰭長、尾鰭長などの外部形態の比較からは五島灘と若狭湾の不透明タイプの耳石を持つ稚魚が類似の形態をもつことが示されました。孵化日と推定される孵化海域から、透明タイプを持つ耳石は、孵化後早期に沿岸域に着底し、成長様式が変わったことで外部形態に変化をもたらしたと考えられました。
Kanaji, Y., Watanabe, Y., Kawamura, T., Xie, S., Yamashita, Y., Sassa, C., Tsukamoto, Y. (2009). Multiple cohorts of juvenile jack mackerel Trachurus japonicus in waters along the Tsushima Warm Current. Fisheries Research, 95, 139–145.
https://doi.org/10.1016/j.fishres.2008.08.004
『対馬暖流域におけるマアジ稚魚の複数孵化群』
2005年6月~2006年6月の期間、若狭湾南西に位置する栗田湾でマアジ稚魚を周年採集し、耳石輪紋の観察を行いました。年間通して稚魚の来遊が見られ、孵化日組成から7つの孵化群が検出されました。さらに、東シナ海南部、中部、北部、日本海南部、舞鶴湾で採集されたマアジ稚魚の耳石についても同様に輪紋観察を行い、これらの孵化日や成長履歴との比較を行いました。これらの結果から、栗田湾に来遊するマアジ稚魚は東シナ海南部由来ではなく、日本沿岸で孵化したものを主体とすると推定されました。
6. 村瀬弘人, 北門利英, 服部 薫, 田村 力, 金治 佑 (2023). 海棲哺乳類の管理と保全のための調査・解析手法. 生物研究社 (ISBN: 9784909119391)
5 村瀬弘人, 金治 佑, 佐々木裕子 (2018). 海棲哺乳類の保全・管理のための調査・解析手法 (11) 空間モデル. 海洋と生物, 40, 255‐264. 【雑誌連載企画】
4. 金治 佑 (2017). 海棲哺乳類の保全・管理のための調査・解析手法 (9) 個体数推定. 海洋と生物, 39, 512‐522. 【雑誌連載企画】
3. 村瀬弘人, 北門利英, 服部 薫, 田村 力, 金治 佑 (2016). 海棲哺乳類の保全・管理のための調査・解析手法 連載によせて. 海洋と生物, 38, 191‐192. 【雑誌連載企画】
2. 金治佑, 岡崎誠 (2014). 海洋生物の地理分布モデリング, 鯨類を対象とした生息地モデリング. 海洋と生物, 36, 453-460
1. 金治 佑, 渡邊 良朗 (2007). 対馬暖流域におけるマアジの初期生態, マアジ仔稚魚の初期生態と日本沿岸への輸送機構. 月刊海洋, 39, 561-565.