研究テーマ

樹木の大量枯死が枯死木の分解に与える影響

地球規模の気候変動やヒトの移動に伴う病原菌・害虫の移入により、世界中で樹木の大量枯死が頻発しています。大量の枯死木は、分解に伴いCO2を放出し、温暖化を促進するかもしれません。大量枯死すると、枯死木の分解やそれに関わる菌類群集は健全林の場合とどう違うのか、日本国内や海外で調べています。

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木材腐朽菌と枯死木分解の生物地理

枯死木内部に生息する菌類群集が地理的にどう異なるか、そしてそれが枯死木の分解にどう影響しているのか、気候との関係を研究しています。日本のアカマツの枯死木では、緯度に応じた分解の勾配が見られました。南ほどリグニンが分解されずに残り、褐色腐朽の頻度が大きくなります。リグニンの蓄積は土壌への炭素の蓄積量を左右するので、この研究は気候による土壌炭素蓄積への影響を理解する上で重要です。現在、ユーラシア大陸と北米のトウヒ林を広く対象としたプロジェクトが進行中です。

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枯死木をめぐる樹木の更新や生物間相互作用

倒木を分解する木材腐朽菌の種が違うと分解過程が異なり、樹木実生やコケ、変形菌など、倒木に生息するさまざまな生物群集に影響します。つまり、多様な菌類が枯死木分解に関わると森林の生物多様性が高まると考えられます。亜高山帯針葉樹林では、リグニンが蓄積した褐色腐朽の枯死木とそれを好むコケ、トウヒ実生の絶妙な関係性を発見しました。

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枯死木内部の菌類群集の発達メカニズム

枯死木の内部では多種の菌類が空間獲得競争を繰り広げています。どんな環境条件でどんな性質を持った菌類が優占し、結果としてどんな分解が起こるのか、野外での観察や実験、室内での培養実験、木材成分の化学分析、コンピュータシミュレーションなど、さまざまなアプローチでそのメカニズムを研究しています。

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菌類の知能

脳や神経系を持たない菌類の菌糸体に記憶や決断の能力があることを発見しました。培養した菌糸体に様々な課題を与えることで、菌類にさらにどんな知能があるのかを探っていきます。

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菌類の多様性と分解機能

植物では種数が多いと生産性が高まることが知られていますが、枯死木分解に関わる菌類の種数が多いと分解は促進されるのか、あるいは阻害されるのか。野外調査や培養実験を使って研究しています。

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菌類の電気的な活性とシグナル伝達

菌類にも電気的な活性が検出されています。菌糸体の内部で電気的なシグナル伝達が行われているのか?シグナルに情報や機能は含まれているのか?野外に発生したキノコや室内の培養系での電気的な活性を測定しています。

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