研究内容

1. 低順位メスは毛づくろいのために努力する――嵐山ニホンザル餌づけ群において順位が採食と毛づくろいにあたえる影響

はじめに:毛づくろいと採食のトレードオフ

多くの霊長類は群れをつくって暮らしています。霊長類は毛づくろいを行うことで体表についた寄生虫を取り除くだけでなく、群れのメンバーと社会関係を構築し群れのまとまりを維持しています。そのため、毛づくろいは重要な活動のひとつですが、採食行動とのトレードオフがあると知られています。たとえば、1 日の活動時間は限られているので、採食に長時間を割かなくてはいけない場合、毛づくろい時間は少なくなってしまいます。また、採食競合を避けるためには他個体と距離をとるほうがよいですが、毛づくろいをするためには他個体の近くにいる必要があります。

     これまでの餌付けニホンザル研究は、毛づくろいについて多くのことを明らかにしてきました。同時に、餌付け群では質のよい食物をめぐって頻繁にケンカが起きることもよく知られています。しかし、ニホンザル餌付け群において順位が採食行動と毛づくろい行動にあたえる影響を統一的に調べた研究はありませんでした。そこで、嵐山ニホンザル餌付け群を対象とし、採食で不利な低順位メスが高順位メスと同じように毛づくろいをすることができているのか調べることにしました。

わかったこと

低順位メスは予想通り、餌から獲得できるエネルギーが少ないため、餌場から大きく離れて採食していました。そのように採食で不利な状況にあるにもかかわらず、高順位と同様に餌場周辺でたくさんの個体と毛づくろいをしていることがわかりました。とくに、餌場周辺で毛づくろいをすることが餌場での採食の副産物ではありませんでした。つまり、餌場は質のよい食物を得られるだけでなく、毛づくろいを通して他個体と社会関係を構築・維持するために重要な場所であるといえます。そのような場所で低順位メスが毛づくろいを行う努力をしているおかげで、群れのまとまりが維持されているのかもしれません。

2. 小さい群れがたくさん移動する――屋久島海岸域に生息するニホンザルにおける採食行動の群間比較 

はじめに:群れの大きさとよいこと・わるいこと

多くの動物は群れをつくって暮らしています。その中でも霊長類(サルのなかま)では、単独で暮らすオランウータンから 800 頭を超える群れで暮らすマンドリルまで、群れサイズに大きな変異があります。生態学者は、群れをつくる(もしくは大きくする)利益と損失を考えることで、動物が「なぜ群れをつくるのか」という疑問に迫ってきました。たとえば、食事の場面を考えてみましょう。大きい群れ(10 人)と小さい群れ(5 人)が群れ内でそれぞれ 1 つのケーキを分け合うとします。ひとりの取り分は、大きい群れで 1/10、小さい群れで 1/5 となり、大きい群れに属するヒトが不利です。しかし、群れ間でケーキをめぐる争いが起きるとしたらどうでしょう。大きい群れは争いに有利なので、ケーキ 2 つを独占することができます。この場合、ひとりの取り分は、大きい群れで 1/5、小さい群れで0 となり、小さい群れに属するヒトが不利です。このように群れ内外で生じる争いのバランスによって、最適な群れサイズが決まるとされています。しかし実際には、霊長類のほとんどの種では、群れが大きくなるほど不利になることが明らかになりました [Majolo et al., 2009]。大きい群れでは、ひとりの取り分が少なくなる不利さを埋め合わせるために、行動する範囲を広げたり、食事の時間を長くしたり、長い距離・時間を移動したりするなど、十分な食物を確保する努力量を大きくしています。

なぜ屋久島のニホンザル?

多くの霊長類と異なり、屋久島・西部林道にすむニホンザルでは、大きい群れほど有利(メスが多くのアカンボウを産む)になります [Suzuki et al., 1998; Takahata et al., 1998]。西部林道には日本一高密度でニホンザルの群れが生息しており、異なる群れのあいだで頻繁に攻撃交渉が起こります [Yoshihiro et al.,1999; Saito et al., 1998; Sugiura et al., 2000]。攻撃交渉の勝敗には群れサイズが影響し、大きい群れは小さい群れを追いやることができます [Sugiura et al.,2000]。このような環境では、群れどうしの攻撃交渉に勝つことが大きい群れの有利さにつながるとされてきました。しかし、その詳細なメカニズムは明らかになっていませんでした。そこで私は、西部林道にすむニホンザルの行動観察を行い、異なる大きさの群れに属する個体の採食行動を比較しました。これにより群れサイズが採食行動にあたえる影響を明らかにし、「なぜ群れをつくるのか」という疑問に迫ることができるのではないかと考えました。

わかったこと

大きい群れは行動する範囲が広く、採食にかける時間が長いことがわかりました。想定された通り、大きい群れでは採食にかける努力量を大きくしていました。一方、小さい群れは長時間・長距離移動していました。一般的には、行動圏や採食時間と同様に、大きい群れの移動時間・距離が長くなると想定されますが、それとは異なる結果でした。この移動コストの増大が小さい群れの不利さであると考えています。前述したように、西部林道では群れどうしの攻撃交渉が頻繁に起こり、大きい群れが小さい群れに対して優位です。小さい群れでは、群れどうしの攻撃交渉に負けた後に逃走しなくてはいけないという短期的な移動コストが蓄積され、日常的な移動コストとなっている可能性があります。行動観察の結果、大きい群れと小さい群れは異なる不利さをもっていることが明らかになりました。

現在はサルが摂取したエネルギー量と消費エネルギー量を推定し、行動の違いがどのようにエネルギーバランスに影響しているかどうかをしらべています。

3. 本当に小さい群れは不利なのか――屋久島海岸域に生息するニホンザルにおけるエネルギー収支の群間比較

はじめに:採食行動の結果としてのエネルギー収支

エネルギー収支とは、獲得エネルギー量と消費エネルギー量の差のことです。サルは植物や動物を食べることでエネルギーを得る一方、活動することでエネルギーを使います。エネルギー収支は森林内の食物資源量やサルの活動パターンによって変動し、獲得エネルギー量が多ければ収支はプラスに、消費エネルギー量が多ければマイナスとなります。エネルギー収支は生存や繁殖に直結するため、採食行動の結果(適応的かどうか)を評価する指標として使われます。

この研究は「2. 屋久島海岸域に生息するニホンザルにおける採食行動の群間比較 」の続きです。群れサイズによる採食行動の違いがエネルギー収支にまで反映されているかどうかを調べました。2 で行った調査に加え、西部林道周辺でサルが採食した植物や動物サンプルを収集し、霊長類研究所に持ち帰って栄養成分を定量しました。西部林道で収集した行動データから採食量を推定し、食物の栄養成分データと組み合わせて、獲得エネルギー量を推定しました。一方、消費エネルギー量の推定は行動データと既知の運動生理学的知見を組み合わせることで行いました。

わかったこと

採食にかける努力量を大きくしていた大きい群れは獲得エネルギー量が多く、移動コストが大きかった小さい群れは消費エネルギー量が多い傾向にありましたが、どちらも群間で統計的に有意な差はありませんでした。その結果、エネルギー収支は大きい群れでプラスに大きい傾向がありましたが、群間で差はみられませんでした。

     群れサイズによる採食行動の違いはありましたが、エネルギー収支までは影響していないことがわかりました。これは動物の採食行動を評価・議論するうえで、エネルギー収支や人口学的パラメータ(生存・出産など)まで調べる必要があることを示しています。また、小さい群れの不利さは日常的に蓄積されているのではなく、果実凶作年など稀に起きるイベントの際に顕著に現れるのかもしれません(森林内の食物資源量が少なくなると群れサイズによるエネルギー収支の差がより大きくなる?)。この研究は 1 年間しか行っていないのでそれを実証することはできません。それを実証するためには、非侵襲的かつ省コストでエネルギー収支を評価できる手法を用いて長期的に個体群のモニタリングを行っていく必要があると考えています。

4. あぶない場所では共に食べる――屋久島に生息するニホンザルの行動圏・食物パッチ利用の地域変異:群間採食競合の観点から

はじめに

群れで暮らす動物では、群れ内でも群れ間でも食物をめぐる競合が起こります(「2. 屋久島海岸域に生息するニホンザルにおける採食行動の群間比較」でも説明)。食物をめぐる競合を調べた研究は非常に多いですが、そのほとんどは群れ内の競合で、群れ間の競合を扱ったものは稀です。とくに、群れ間の競合によって動物の行動がどのように変化するかはよくわかっていません。その大きな理由は、群れ同士のケンカを観察する困難さにあります。群れ同士のケンカは稀にしか観察できず、いつ起きるか予測できないため、システマティックに行動を記録するのは非常にたいへんです(私も屋久島でサルの観察を始めて 6 年経ちますがそれでも厳しい……)。そこで本研究では、サルが使う「場所」に注目しました。「他群に遭遇しやすい行動圏の周縁部」と「他群に遭遇しにくい行動圏の中心部」で、場所を使う頻度に差があるか、食物パッチの使い方が異なるかを調べました。

なぜ屋久島のニホンザル?

屋久島では海岸林(西部林道)とヤクスギ林で長期調査が行われており、地域間で社会に大きな違いがあることが知られています [Hanya, 2014]。海岸林では頻繁に群れ同士のケンカが起こり [Saito et al., 1998; Sugiura et al., 2000]、大きい強い群れでは小さい弱い群れより出産率が高くなります [Suzuki et al., 1998; Takahata et al., 1998]。その一方で、ヤクスギ林では群れ同士のケンカは稀にしか起きず、群れサイズと出産率に関連はありません [Hanya et al., 2008]。この 2 地域は地理的に 7 km ほどしか離れておらず、遺伝的な影響を考える必要がありません。そこで、屋久島のニホンザルの行動を地域間で比較することで、群れ間の食物をめぐる競合が動物の行動にあたえる影響を調べることができると考えました。

わかったこと

海岸林でもヤクスギ林でも、行動圏の周縁部は利用されにくいことがわかりました。また、どちらの地域でも、食物パッチで採食する時間や周囲を見回す行動の頻度は、行動圏の周縁部と中心部で同程度でした。

     唯一違いが見られたのは、同じ食物パッチで採食する個体数でした。海岸林の小さい弱い群れは、行動圏の周縁部にある食物パッチでより多くの個体と採食していることがわかりました。この結果は、群れ同士のケンカが多い海岸林にすむ小さい弱い群れが、群れ同士のケンカに伴うリスクを軽減していることを示唆しています。たとえば、多くの個体と一緒にいれば、周りを気にする目や耳が多くなるので、他群の接近をいち早く検出して逃げられるでしょう。もし群れ同士のケンカに発展してしまったとしても、自分自身が攻撃を受ける可能性は低くなるでしょう。

    このような研究は、長距離音声や匂いづけ行動によってなわばり防衛を行う種を対象に行われてきました。しかし本研究の結果はニホンザルのように「飛び道具」をもたない種でも同じような反応(場所に付帯した群れ同士のケンカのリスクに応じた行動の変化)がみられる可能性を提示しています。

5. ひとりになった Ema と Kafka――群れサイズと構成の変化に対するニホンザルの反応:メスのグルーミング行動に注目して

はじめに

毛づくろいには衛生的な機能と社会的な機能があるとされています(「1. 低順位メスは毛づくろいのために努力する」でも説明)。その社会的な機能ゆえ、霊長類は群れサイズや構成の変化によって柔軟に毛づくろい行動を変化させます。たとえば、群れサイズが大きくなれば毛づくろい相手が増えたり、親密な毛づくろい相手が死んでしまうと他の個体が毛づくろい相手として加わったりします。

    ニホンザルは母系で血縁びいきの社会をもちます。複数のオスとメスが同じ群れで暮らしますが、メスは生まれた群れに一生とどまり、オスは性成熟すると群れを移籍します。血縁はニホンザルの社会行動に大きく影響する要素で、採食場所の共有、ケンカのサポートなどは主に血縁個体間でみられます。毛づくろいについても、オトナメスと血縁のあるオトナメス、オトナメス(母親)と自分のコドモの間でよく行われます。秋の交尾期を除くと、オトナメスとオトナオス間の毛づくろいは稀です。

    屋久島で研究を続けるうちに、対象群の 1 つが単雌群になりました。それまでは 4 個体のオトナメスが群れにいたのですが、私が 1 ヶ月屋久島を離れている間に 3 個体のメスがいなくなっていました。つまりわずか 1 ヶ月の間に急激な社会変化が起きたことになります。その後、他の研究者が長年調査していた群れも同じく単雌群になったことを知り、equal contribution で事例報告をすることにしました。それぞれの群れで最後に残ったメスの Ema と Kafka という名前がたくさん出てきます。

わかったこと

それまで主要な毛づくろい相手であったオトナメスを失った Ema と Kafka は、自分のコドモや非血縁のコドモと頻繁に毛づくろいを行っていました。また、全体の毛づくろい時間と毛づくろい相手の多様性が増加していました。これは毛づくろい相手を失った短期的なストレス、群れが小さくなり群れ間の競合に不利になったという長期的なストレス、群れ内の社会関係が不安定になったことと関連しているのではないかと考察しました。

    ニホンザルのオトナメスは単雌群という「ふつうでない」社会条件において、血縁びいきの毛づくろいを続けるだけでなく、非血縁コドモとの毛づくろいを増やしていました。これまでのニホンザル研究の多くはオトナ個体間の毛づくろいに注目してきましたが、本研究は毛づくろい相手としてのコドモ個体の重要性を示唆しています。また、霊長類が急激な社会変化に対してどのように反応するかという知見は、霊長類の社会を理解するうえで重要ですが、仮説検証型のアプローチのもとに狙って観察できるものではありません。もちろん基礎的なデータを長期的に蓄積するのが理想的ですが、現実的な方法としてこつこつ事例報告を積み重ねていく必要があると考えています。

6. 南の島にすむサルも冬はつらい――暖温帯林にすむニホンザルのエネルギー収支の季節変化

はじめに

霊長類は主に熱帯に分布しており、温帯のみに分布するのはわずか数種です。ニホンザルはそのなかの一種で、2 つの戦略により、季節変化の大きい温帯の食物環境に適応してきたと考えられています。ニホンザルは主に果実を食べますが、果実の少ない時期には他の食物(成熟葉、冬芽や樹皮など)に切り替えたり、果実の多い時期に得た余剰エネルギーを脂肪として蓄えて、果実の少ない時期に分解して使ったり(脂肪蓄積能)しています。

     これまで行われてきたニホンザルのエネルギー戦略研究は、宮城県・金華山島や青森県・下北半島など冷温帯林で行われていました。宮崎県・幸島や鹿児島県・屋久島海岸域など暖温帯林での研究例もありますが、一部の期間に餌付けが行われていたり、行動データが不足していたりしました。

     そこで、私は鹿児島県・屋久島海岸域で、採食行動の観察、食物の栄養成分分析、ホルモン分析(尿中 C ペプチド)を組み合わせ、亜熱帯要素をふくむ暖温帯林にすむニホンザルのエネルギー収支の季節変化を明らかにしました。C ペプチドは、体内のインスリン量を反映しており、インスリンはエネルギー収支がプラス(獲得エネルギー>消費エネルギー)のときにたくさん分泌されます。C ペプチドは尿として排泄されるため、非侵襲的に野生個体のエネルギー状態を評価することが可能です。

わかったこと

エネルギー収支は、果実種子を食べる秋に最もプラスが大きく、次いで若葉を食べる春、キノコを食べる夏や成熟葉を食べる冬にはマイナスであると推定されました。また、獲得エネルギーを構成する要素である、採食速度(単位時間あたりの採食量)・食物のエネルギー含有量・採食時間のうち、採食速度が最も重要であることがわかりました。

     本研究の結果は、屋久島のニホンザルが、採食速度の大きい果実種子を秋にたくさん食べて、余剰エネルギーを脂肪として蓄えておくことで、冬を生き延びていることが示唆しています。つまり、ニホンザル分布の南限であり、最も食物が豊かであると考えられている屋久島の暖温帯林でも、温帯適応としての脂肪蓄積能が有効であると考えられるでしょう。

7. 敵が来たら黙ってきょろきょろ――他群に対するニホンザルの反応:野外での音声プレイバック実験による検証

はじめに

群れどうしの争いには利益だけでなく、コストもあります。そのため、動物は自群が不利だったり得られるものが小さかったりする場合、戦わずに争いを避けることがあります。テナガザルのラウドコールのように遠くまで届く音声やマングースやキツネザルでみられる匂いづけ行動などは、群れどうし相まみえることなく、争いを回避するのに役立つ手段として有名です。一方で、長距離音声や匂いづけ行動のような「飛び道具」を持たない種が、他群の接近に対してどのように反応するのかはよくわかっていませんでした。

 ニホンザルは「飛び道具」を持っていませんが、屋久島海岸域にすむサルは日常的に他群と遭遇します(他群との遭遇を群間エンカウンターと呼びます)。つまり、「飛び道具」を持たない種が他群の接近に対してどのように反応するのかをしらべるのに、理想的な研究対象でした。

 そこで、私は野外で音声プレイバック実験を行い、再現された群間エンカウンターに対するニホンザルの反応を調べました。音声プレイバック実験とは、あらかじめ録音した動物の音声をスピーカーで流し、それに対する動物の反応を記録する手法です。群間エンカウンターのように、いつ起きるか予測できない行動はシステマティックに記録するのが非常に難しいですが、音声プレイバック実験を実施することでその困難を克服することができます。

わかったこと

サルは他群の音声を聞くと、採食行動を中断し、急いで木を下りてくるという反応を示しました。また、サルは鳴くことが減り、周囲を見回す行動が増えました。とくに小さい群れは大きい群れよりも強い反応を示しました。これらの反応は、他群への警戒度を高め、その後に起こりうる群間攻撃交渉で戦うか逃げるか、迅速に判断するのに役立つと考えられます。

 本研究の結果は、長距離音声や匂いづけ行動のような「飛び道具」を持たないニホンザルのような種も、接近中の他群の情報を手がかりとして、その後に起こりうる交渉に備えることを示唆しています。群れで暮らす動物で広くみられる群間競合を理解するためには、「飛び道具」をもたない種の研究も推進する必要があるでしょう。

 これまで私は、屋久島海岸林にすむニホンザルでみられる、群れサイズと繁殖成功の関係を明らかにしようと研究を進めてきましたが、本研究では、相手の音声が聞こえるという群間エンカウンターの初期段階においても、群れサイズが行動に影響を及ぼすことを明らかにしました。屋久島海岸林にすむニホンザルにおいて、群間攻撃交渉で優位な大きい群れが繁殖に有利になるメカニズムの解明に一歩近づく結果ではないかと考えています。

8. 屋久島海岸域におけるニホンザルの腸内細菌叢の季節的応答と宿主の特異性

9. ヤクシカの死体を食べる外来タヌキ

屋久島上部域での個体数調査

2009 年以降、毎年 8 月に屋久島上部域で行われる個体数調査に参加しています(2018 年よりおやすみ中)。およそ 1 週間、電気もガスも水道もない場所でキャンプを設営し、群れの構成をしらべています。私がいつも調査している海岸域(標高 0-300 m)とは異なり、上部域(標高 1000 m)ではサルの密度が低く、葉が主要な食物であり、群れどうしの関係が攻撃的でないと知られています [Hanya, 2004; Hanya et al., 2004; Hanya et al., 2008]。

青森県下北半島での個体数調査

2009 年以降、毎年 12 月に青森県下北半島で行われる個体数調査に参加しています(2018 年・2023 年は不参加、2020-2021 年は中止)。こちらは農作物被害対策のためにサルの個体数および群れの分布を把握することが目的です。雪山を歩いてサルを直接観察したりサルの痕跡(足跡や糞、食痕)をさがしたりします。

静岡県中西部での哺乳類相調査

浜松市天竜区・川根本町にある静岡大学演習林周辺に生息している哺乳類相の基礎データを収集しています。2018 年から自動撮影カメラを用いた調査をこつこつ続けていて、2023 年からは浜松市天竜区の演習林でカメラ台数を増やして生息密度の推定にも取り組んでいます。さいきんこれまでのデータをまとめた報告論文が公表されたら追記します。