海産無脊椎動物の多くは幼生期に海の中を移動し、「好適」な生息場所を選択していることが知られています。この過程は、ヒトに例えると“家探し”に近いかもしれません。皆さんも長く住む家を決める際は、価格や間取り、通勤・通学場所への距離等、様々な条件を頼りに「好適」な家を選択するはずです。私は大学院生の時に小さな幼生が広大な海の中で巧みに“家探し”をしていることに感動し、これまで研究を続けてきました。具体的には、フジツボを対象に幼生の形態観察や幼生誘引フェロモンの遺伝子解析、捕食者の匂いの影響を調べるための野外実験などを行っています。このような研究は、フジツボのような付着性生物が船舶等の人工物に着かないようにするための技術開発にも繋がる事が期待されます。
また、関連して外来種の侵入・定着機構に関する実験生態学的研究や様々な分類群(サンゴ、ヤシガニ等)を対象にした遺伝的多様性に関する共同研究を展開しています。
フジツボのキプリス幼生が着生場所を探索する様子(探索行動)
外来フジツボを対象とした野外加入実験の様子。場所は北海道大学・厚岸臨海実験所。
ヤシガニなどの遺伝的多様性や集団構造の研究も行っています。