環境適応講習会とは

~山梨から全国へ発展した講習会~

私たちの運動行動は、『個人』『環境』『課題』の相互的な適応関係の上に成り立っており、空間内の移動から道具の使用、何気ない仕草まで、私たちを取り巻く様々な環境からの手がかりを、無意識のうちに取り込みながら行っています。

また、私たちの運動行動は、密接に関連を持つ多数のシステム群の協調関係によって維持されています。姿勢の制御には、固有感覚系や前庭系だけでなく、感覚入力を情報化するための能動的な運動など、出力系との協調が必要となります。また、動くことにより、視覚系の周辺視野における光学的流動が自己を定位する重要な情報源となると同時に、情動系や記憶系の関与も姿勢の制御に反映されています。

このように、さまざまなシステムが重なり合い、協調関係を保つことで、環境への適応が成立していると考えます。環境と個体内におけるシステムの間で相互依存関係となり、無意識下の中で自律的に必要な感覚情報を収集する知覚探索課程により、私たちの運動行動は構成されていると考えます。

しかし、片麻痺患者は、突然の脳損傷に伴い、身体内部の力学的均衡に歪みを生じると同時に、外部環境との関係にも整合性を失い、姿勢と運動の正常な制御が難しくなります。それにより、日常動作をはじめとした様々な動作は、質的な部分で本来の動作とは異なる為に、非効率で努力的な不適応状態に陥っていると考えます。






各コースについて

Aコース 『平面・移動空間への適応』

『平面への適応 ~臥位姿勢・寝返り動作などの床上動作~』

片麻痺者の臥位姿勢は、運動麻痺や感覚障害などによる不安定感から、身体の緊張を高めている状態が見られます。四肢や体幹をベッドに押し付けるだけでなく、ベッド柵にしがみついたり、身体が捻じれているなどの様子がみられます。また、その状態からの寝返りや起き上がり等の動作は、より一層難しくなっています。

『移動空間への適応』

片麻痺者は、移動すること自体に余裕がなく、身体の緊張が高まると同時に、視覚情報を十分取り込むことが難しくなります。その為、空間や構造物に対して身体を上手く合わせていくことが難しく、非効率な移動動作となっています。

本コースでは、片麻痺者特有の姿勢と平面・移動空間との適応について、『視覚』『体性感覚』に焦点をおいて紹介しています。

受講定員数:100名前後

Bコース 『治療実践』

他受講生とグループを作り、片麻痺者の評価から治療までを実践するコースです。A・C・D・E全コースを含めた環境適応の視点から、評価・治療を行います。職種の枠を超えた意見交換を通して、評価や治療場面の新しい発見や、各職種の専門性を追求する事が出来ます。

※5コースの中で最も実践的であるため、A・C・D・Eコースの受講終了後にご参加いただく事をお勧めします。

受講定員数:30名前後

Cコース 『洗体・更衣動作』

私たちの皮膚は、伸張性や粘弾性があり、艶がありますが、片麻痺者の皮膚は、伸張性や粘弾性に乏しく、自己身体のメンテナンスでは、十分に反応しているとは言えない状態です。

その問題は、更衣場面にも影響を与える為、手数が多く大変そうであったり、衣服を着たあとに捻じれているなどの様子が見られ、衣服を身にまとい、身体と一体化させる事が難しくなります。

本コースでは洗体・更衣動作時における重要な要素として『皮膚』に着目し、皮膚の特徴である【自律反応】をテーマに、ADL場面での治療的な応用を紹介いたします。

受講定員数:100名前後

Dコース 『食事』

食事が自立していても、食べこぼしが多く、机や衣服を汚していたり、周囲の方の声掛けにも気付かず、食事を次々と詰め込んでいる方を見たことがあると思います。箸やスプーンの持ち方や操作も拙劣で、適切な一口量を掬えず、表情にも余裕が無いように見えます。

本コースは、食事場面の中でも、主に先行期(準備期)に焦点を当てたコースとなっております。

受講定員数:100名前後

Eコース『Activity』

リハビリ室には沢山の治療道具がありますが、私たちはそれらの特性を理解し、患者様に合わせて使いこなす必要があります。

患者様がActivityに注目し、『能動性』を引き出す事が出来れば、患者様の上肢機能は向上します。また、同じ道具でも様々な使い方で介入する事で、治療の幅はより一層広がり、患者様の本来持っている潜在能力は、発揮しやすくなります。

本コースでは、様々な治療道具の特性や使用時の注意点、そして患者様の『能動性』を引き出す治療展開などを学ぶ事が出来ます。

受講定員数:100名前後

上級者コース『A・C・D・E』

 山梨環境適応講習会において2020年度より上級者コースを開催致します。

 内容は、各コースで取り上げてきた平面適応・移動空間への適応、洗体・更衣動作、食事動作、Activityにおける実技を再度取り上げます。それぞれの実技項目に関連する多様な動作課題に対する応用展開を紹介致します。また、関連する徒手的な治療手技を取り上げ、実技練習を通じて環境適応への理解を深めて頂きます。

 オンライン上級者コースは、講習会の中で提案している環境適応の視点や実技の解釈を柏木先生とディスカッションしながらさらに深めて頂きます。

受講定員数:10名前後(オンラインは30名前後)

※より実践的な内容となりますので、参加条件があります。よくある質問事項に記載してありますので、ご確認下さい。


オンラインインフォメーションコース『A・C・D・E』


 2021年より対面式での講習会が開催できるようになるまでの間、オンラインインフォメーションコースを開催致します。

 オンラインインフォメーションコースは、「平面・移動空間への適応」「洗体・更衣動作」「食事」「Activity」の各コースに即し、環境適応の視点から患者様に起きている問題を分析し、オンラインで紹介できる範囲で実技の提案を致します。

 今までの本コースやインフォメーションコースと異なる内容になりますので、初めて受講される方も、再受講の方も大歓迎です!!

受講定員数:30~50名前後