Methods & Facilities

主に有機地球化学や同位体地球化学の手法を様々に用いて研究しています。自分のラボにある機器のほか、多くの共同研究者の方の協力を得ながら、研究を進めています。

1. 有機分子バイオマーカー分析

DOMやPOMなど環境中有機物の起源(細菌由来成分の寄与度など)や質(分解性など)を、様々な有機分子バイオマーカー(D-アミノ酸、アミノ糖など)の濃度や組成から推定しています。

(1) HPLC(高速液体クロマトグラフ)

蛍光検出器(FLD)とダイオードアレイ検出器(DAD)を接続したAgilent 1260システムと、可変波長検出器(VWD)と荷電化粒子検出器(CAD: Thermo Scientific Corona Veo RS)、フラクションコレクタを接続したAgilent 1100システムの二つのシステムを、琵環研のラボに保有しています。前者は主に有機分子組成定量に、後者は同位体比等の分析に向けた有機分子の精製分取に用いています。

(2) GC-qMS(ガスクロマトグラフ四重極型質量分析計)

D-アミノ酸等の有機分子組成定量に用います。近隣の共同研究者(地球研京大生態研)が持つ機器を使用させてもらっています。

2. 有機物特性分析

環境中有機物の動態を理解するため、化学特性・物理特性(光学特性、分子量分布、官能基組成など)を分析しています。今後、近隣の共同研究者の助けも借りて、Py-GC-MS(熱分解GC-MS)、FTICR-MS(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計)、NMR(核磁気共鳴装置)、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)などを用いた分析も検討しています。

(1) 三次元蛍光測定装置

堀場製作所のAqualogを、琵環研のラボに保有しています。多波長励起‐蛍光マトリックス(EEM)測定やPARAFAC解析を用いて、溶存有機物の蛍光成分組成(タンパク様蛍光、腐植様蛍光など)を迅速に定量できます。

(2) HPSEC-TOC(高速サイズ排除クロマトグラフ-全有機炭素計)

HPSEC、脱気ユニット、紫外線酸化ユニット、TOC計を接続した、高感度かつ定量的なDOMの分子サイズ分布測定装置で、国環研琵琶湖分室と島津製作所の共同開発による特注機器です。国環研琵琶湖分室と共有している琵環研のラボ内に設置されおり、私も使用させてもらっています。

3. 有機物の同位体比分析

同位体の天然存在比(15N/14N比、13C/12C比など)は、環境中有機物の起源や動態、生態系の食物網構造などを解明するための強力な指標になります。私は特に、アミノ酸など有機分子の化合物レベル同位体比を用いて研究を進めています。さらに現在、15Nなど同位体トレーサーを人工的に添加して、D-アミノ酸など有機分子バイオマーカーへの取り込みを追跡する技術の開発も進めています。

(1) GC-IRMS(ガスクロマトグラフ同位体比質量分析計)

アミノ酸の化合物レベル窒素同位体比分析などに用いています。近隣の共同研究者(地球研京大生態研)が持つ機器を使用させてもらっています。

(2) PT-GC-IRMS(パージ&トラップGC-IRMS)

脱窒菌法を用いた微量窒素同位体比分析に用いる機器で、近隣の共同研究者(京大生態研)が持つ機器を使用させてもらっています。

(3) GC-qMS

DOM中のD-アミノ酸への15Nトレーサー取り込みを迅速定量する手法の開発を検討しています。近隣の共同研究者(京大生態研)が持つ、トレーサー専用機器を使用させてもらっています。

4. 環境中有機物の分画濃縮

環境水試料から様々なサイズの有機物(DOMとPOMの両方)を分画して濃縮する技術の開発を進めています。

(1) 限外濾過システム

平膜(膜面積60cm2)をセットできる卓上型の小規模システム(1Lスケール)と、1812サイズのSpiral Wound型の膜エレメント(膜面積0.25m2)をセットできる中規模システム(数十Lスケール)を、琵環研でそれぞれ自作して、限外濾過膜の性能評価を進めています。現在、2540サイズの膜エレメント(膜面積2.23m2)をセットできる大規模システム(数百Lスケール)の作成も進めています。限外濾過(ultrafiltration)以外にも、精密濾過(microfiltration)やナノ濾過(nanofiltration)、逆浸透(reverse osmosis)の膜性能評価も進めています。

(2) 固相抽出システム

Bond Elute PPLなどの固相抽出樹脂を用いたDOM濃縮法について、カートリッジを用いた1Lスケールのシステムで性能評価を進めています。10L~100Lスケールへのスケールアップも検討しています。

(3) 電気透析装置

湖水・海水などの環境水試料から無機塩を除去できる機器で、国環研琵琶湖分室の機器を使用させてもらっています。

5. 生物地球化学分析

琵環研のラボには、様々な生物地球化学的分析に用いる機器が設置されています。

(1) TOC計

島津製作所のTOC-Lを、DOC濃度のルーチン分析に用いています。

(2) イオンクロマトグラフ

Themo Scientific DionixのIntegrion2台を、陽イオンと陰イオンそれぞれの定量に用いています。陰イオン用システムは、濃縮カラムを用いた高感度リン酸塩分析にも用いています。

(3) 元素分析計

Themo ScientificのFLASH EA 1112を、POC・PN濃度のルーチン分析に用いています。

(4) 分光光度計

(5) 栄養塩自動分析装置

(6) 高速フラッシュ励起蛍光光度計

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6. 試料採取・室内実験

琵環研では、試料採取や室内実験のための様々な設備を保有しています。

(1) 調査船「びわかぜ」

月1回程度のシップタイムを使って、琵琶湖での採水・採泥作業を行っています。

(2) 多筒採水器

5Lのニスキン採水器が10本設置され、様々な水深から湖水を採取できます。

(3) GoFlo採水器

湖水の大量採取に用いる、大容量採水器(100L)です。

(4) 不撹乱採泥器

湖底の表層堆積物試料(20cm程度)を採取できます。コアカッターを用いて、船上で深度別に分割しています。

(5) 恒温室&振とう機

20℃の恒温室(暗条件)には、大型振とう機(最大荷重75kg)が3台設置され、有機物分解実験に日常的に用いています。琵琶湖深水層の現場温度の低温恒温室(現在は9℃設定・暗条件)にも、小型振とう機を複数台設置し、深水層試料の有機物分解実験を進めています。そのほか、小型振とう機を設置できるインキュベーターも数台保有しています。

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