XENON実験への参画

大型暗黒物質直接探索

宇宙線研究所では、古くから暗黒物質直接探索実験を進めて来ました。XMASS実験では、1トンの液体キセノンを用いて探索を行いましたが、感度が十分でなく、暗黒物質の証拠を見つける事ができませんでした。2017年に、XMASSメンバーがXENON実験グループに参加を開始し、これまでの経験と知識を活かして暗黒物質の発見や、太陽アクシオン、ニュートリノの特殊な性質等、これまで分野を切り開いてきた実績を踏まえて物理学の発展を推進してゆきたいと考えています。暗黒物質の証拠の兆候が見られれば、さらに大型の装置を建設し、存在の証拠のみならず、性質の解明を行っていきたいと考えています。日本の独自技術を用いて神岡でそういった研究を発展できることを目指しています。

XMASS実験からXENON実験へ
XMASSでは暗黒物質のみならず様々な物理現象の探索を行ってきました(2013年出版)。たとえばアクシオンと呼ばれる粒子の探索を行ってきました。アクシオンとは、標準理論に残された問題の一つを解決する未発見の粒子です。これが太陽で発生し降り注いでいるものを、初めて暗黒物質探索用大型液体キセノン検出器で捉えようとしたのです。残念ながら有意な信号はありませんでしたが、世界中の暗黒物質探索の研究者が興味を持って探索をはじめました。上の4つの図は、異なるアクシオンの質量の対して許される信号の最大値を調べた例です。
XENON1T実験で見られた電子反跳現象の期待値からの超過。これは太陽アクシオンの証拠かもしれませんが、単なるノイズだったのかもしれません。XENONnT実験で証拠を掴もうとしています。解析を進めていますが、結果が待ち遠しいです。

XMASSでは暗黒物質のみならず様々な物理現象の探索を行ってきました。世界最高感度の装置を用いると、暗黒物質の信号のみならず、様々な世界最高感度の現象の探索を行うことができます。知りたいことがあれば自らデータ解析を提案し進めることができます。

XENON実験の状況

現在、日本グループからは約14名の研究者が参加しています。宇宙線研4名、カブリIPMU3名、名古屋大学3名、神戸大学4名(2023/2/28現在)。

とりわけ東大からは中性子バックグラウンド低減のために、スーパーカミオカンデのために開発された技術を借りて、暗黒物質の信号の兆候がみられたときに確定的な証拠であることを示す切り札を用意してきました。

また、液体キセノンの純化に関しても専門家が揃っており、世界最高純度の液体キセノンの実現を果たしてきています。

2023年2月現在、XENON実験は観測を続けています。