XENONnTによる暗黒物質直接探索実験

世界最高の感度を持つ装置を用いた研究

上の写真はXENON1T検出器の本体部


宇宙の謎の解明に向けて 暗黒物質の直接検出を目指す

現在の宇宙には大きな謎があります。それは宇宙の大きなスケールの構造から小さなスケールの構造にわたり、原子や分子と思われる物質だけでは説明のつかない物質の存在が示唆されていることです。それらは暗黒物質、またはダークマターと呼ばれていて、正体がわかっていません。実際、最大のスケールである宇宙背景輻射の分析からは、原子や分子と違って電磁場と相互作用をしない暗黒物質の存在が明確に示されています。ところが一種類の未知の素粒子を仮定することで、そのすべての辻褄が合い、宇宙の発生から現在の姿まで説明できる可能性があるといわれています。この未知の素粒子の発見へ向けて、探索が世界中で行われています。

他方、素粒子物理学の標準理論も、完璧ではないことがわかっており、未知の素粒子の存在が期待されています。実はその一つが暗黒物質の正体かもしれません。もしそうであれば暗黒物質粒子の発見は、素粒子物理学へ大きな飛躍を与えるものです。

本研究では、世界最高感度を持つ XENONnT実験装置を用いて、その未知なる物質暗黒物質を直接検出する研究を進めています。暗黒物質がXENONnT検出器の液体キセノンターゲットに衝突する瞬間を捉えることができれば、暗黒物質が未知の素粒子の一つであることが示せますし、性質の研究、ひいてはその粒子を取り巻く新しい物理学への扉を開く事ができるかもしれません。

これらの研究は世界12カ国、27機関、総勢180名の国際的なメンバーとともに進めています。実験装置はイタリア・グランサッソ研究所に設置されており、すでに運転が開始されています。特に若い研究者が半分程度を占める特徴的なグループです。


東大グループの研究テーマ

液体キセノンの純化

本研究では、約10トンの液体キセノンに暗黒物質が衝突する現象を探索します。高感度探索には液体キセノンを高純度に保つ必要があります。

中性子バックグラウンド低減

液体キセノンに暗黒物質が衝突した信号と間違いやすい信号があります。それが中性子が衝突したときの信号です。暗黒物質の信号らしきものがみられた際に中性子が存在したかどうかを記録する装置を運転しています。

データ解析と信号の発見

約10トンの液体キセノンを約5年間以上観測を続け、そこに暗黒物質が衝突した現象がみられたかどうかデータ解析を行います。装置のお守りをしながらデータ解析を進めるのが重要です。

シミュレーションの構築

液体キセノンに衝突する粒子は暗黒物質だけではなく、装置に含まれる放射性不純物から放出されるガンマ線等が与える信号がノイズになります。それらがどのような現象を引き起こすのかを正確にシミュレーションすることが大事です。

 大学院進学を検討中の方へ

2024年5月25日には宇宙線研究所の大学院入試ガイダンスが本郷キャンパスやZoomにて開催されます。

https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/event/14995/

また、2024年6月1日には宇宙線研の大学院進学のための交流会が柏キャンパスにて開催されます。研究生活や研究内容、進学後の生活や仲間たち、研究の進め方等気になる点についてより詳しくお話することができると思います。


本研究を進めてきた大学院生の修士論文、博士論文、受賞歴等に興味がある方はここを御覧ください。

お問い合わせ

本研究に参加されたい学生やPDのかたは、お気軽にメールで御連絡ください。Zoomでのやりとりや、実際に神岡施設への訪問も歓迎します。