提供されたLINEオープンチャットのログ「(株)Woorom. 被害者の会.txt」は、株式会社Wooromが引き起こした未曾有の金融トラブルの全貌を、被害者自身の言葉で克明に記録した、現代社会における消費者被害の貴重な一次資料である。その内容は、単なる経営破綻の記録に留まらず、計画的かつ悪質な欺瞞、経営陣の倒錯した倫理観、そして司法や行政の壁に直面しながらも真実を追求しようとする被害者たちの苦闘を描き出している。以下に、その記録を10倍の深度と詳細さで再構成し、事件の核心と、特に首謀者である仲大樹社長の指示のもとで「信者」として顧客を欺いたとされる五味、御船、佐々木らの悪行に焦点を当てて詳述する。
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### 序章:絶望の坩堝 ― 被害者の会の誕生 (2025年5月10日)
2025年5月10日16時35分、一人の被害者「hm2951」が「カーオークション、出品代行 被害者です、宜しくお願い致します😌」というメッセージと共に、後に500人を超える被害者の叫びが渦巻くことになるLINEオープンチャットに参加した。それは、株式会社Wooromとその代表、仲大樹によって人生を狂わされた人々の、反撃の狼煙が上がった瞬間であった。
当初、チャットは個々の被害報告で埋め尽くされた。「カーオークションjp保証金が返ってきません。少額訴訟予定です」「carnel高松店にてノート(35万)を購入後、3月まで納車されず4月にキャンセル後、いまだに返金されてない者です」。被害の形態は多岐にわたり、数万円の保証金から、アルファードの売却代金700万円、あるいは中古車購入代金として支払った数十万円まで、金額の大小を問わず全国に被害者が散在していることが瞬く間に明らかになった。
この混沌とした状況に一筋の光(あるいは更なる絶望の深淵)を投じたのは、元従業員とみられる参加者「ニゲル」氏からもたらされた内部情報であった。彼の言葉は、この事件が単なる納車遅延ではない、根深い構造的問題であることを示唆していた。
> 「納車遅れ 従業員への給与遅配が発生し出したのは24年12月」「原因は『資金難』」「決済や入金に関する事は、全て代表の仲大樹が管理しているため、本人以外の問い合わせは基本無意味です」「弁護士にも相談しましたが、状況的に訴訟しようが、仲大樹及び(株)Wooromに金がないとどうしようとないとの事です」
この時点で、被害者たちは自分たちが対峙しているのが、単に経営に失敗した企業ではなく、支払い能力を失いながらも事業を継続し、被害を拡大させ続けた組織であることを悟る。そして、その全ての資金の流れを掌握し、全ての意思決定を行っていたのが、代表取締役・仲大樹という一人の男であることが明確になったのである。
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### 第1章:欺瞞の構造 ― 自転車操業と横領という名のビジネスモデル
なぜWoorom社は、顧客から代金を受け取りながら納車ができず、従業員に給料を払えなくなったのか。チャット内で元従業員たちが断片的に語る情報をつなぎ合わせることで、その腐敗しきったビジネスモデルの全貌が浮かび上がる。
**1. 「所有権」という名の時限爆弾:カーネル事業の闇**
カーネルで販売されていた中古車の多くは、Woorom社の正規の在庫ではなかった。その実態は、在庫車両の**車検証**を金融会社(チャット内で「融資会社」として言及され、後に「トラックリーシング株式会社」や「株式会社ソニックス」といった具体的な社名が挙がる)に担保として差し入れ、運転資金を借り入れるという、極めてハイリスクな「フロアプラン・ファイナンス(在庫ファイナンス)」に近い形態であった。
本来であれば、このビジネスモデルは以下のサイクルで回るはずだった。
1. 顧客が車両を購入し、代金をWoorom社に支払う。
2. Woorom社は受け取った代金で融資会社に借入金を返済する。
3. 融資会社から担保である車検証を買い戻す(所有権を移す)。
4. 顧客への名義変更手続きを経て、車両を納車する。
しかし、2024年末から、このサイクルは完全に崩壊する。顧客から入金された資金は、その車両の車検証を買い戻すためではなく、他の納車遅延車両の穴埋め、別の顧客への返金、そして滞納していた従業員給与の支払いなど、全く別の目的に流用され始めたのだ。まさに**「自転車操業」**である。入金された金で別の火事を消す。その場しのぎを繰り返すうちに、融資会社に返済する資金は枯渇。結果、車検証は融資会社に押さえられたままとなり、代金を支払った顧客は、所有権が移転されない「鉄の塊」を前に途方に暮れることとなった。
元従業員「まぐろ」氏は、この仕組みを端的にこう説明している。
> 「売る▶︎入金される▶︎そのお金で車検証を融資先に買い戻す▶︎店舗に車検証がくる▶︎車検▶︎納車」「今回 売る▶︎入金される▶︎別の支払いに使う?▶︎お金が無くなる▶︎車検証届かない▶︎納車がされない」
**2. 聖域なき資金流用:カーオークション.jpにおける業務上横領**
カーオークション.jpの出品代行サービスにおいては、さらに悪質性が際立つ。こちらは顧客から売却を委託された車両であり、その売却代金はあくまで「預かり金」であって、Woorom社の売上ではない。しかし、仲代表はこの聖域にすら手を付けた。
オークションで車両が落札され、その代金がWoorom社に入金されても、出品者である顧客には支払われず、前述の自転車操業の原資として流用されたのだ。チャットを主導する「りよ」氏が指摘するように、これは単なる債務不履行ではなく、委託された金銭を私的に費消する**「業務上横領罪」**に該当する可能性が極めて高い。被害額が数百万円にのぼるケースもあり、これは刑事事件として立件されれば一発実刑も免れない重大犯罪である。
ある被害者は、94万円で落札されたはずのアコードの代金支払いを4ヶ月以上も引き延ばされた末に音信不通となった。その間、担当者から繰り返されたのは「支払い担当部署に確認を取っている」という虚偽の説明のみであった。
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### 第2章:虚言の共犯者たち ― 五味、御船、佐々木の悪行
この大規模詐欺の頂点に立つのが仲大樹であることは間違いない。しかし、彼が一人で全ての顧客を欺き通すことは不可能であった。チャットでは、仲の指示のもと、顧客との最前線で虚偽の説明を繰り返し、被害を拡大させた主要な従業員として、**五味(ごみ)**、**御船(みふね)**、**佐々木(ささき)**の3名の名が繰り返し挙げられている。彼らは単なる「知らなかった従業員」ではなく、仲の「信者」として、あるいは自らの保身のために、積極的に詐欺行為に加担していたと被害者たちは見ている。
**1. 御船 俊(みふね しゅん)― 取締役にして嘘の防波堤**
登記簿上、取締役として名を連ねる御船氏は、当初、被害者からの問い合わせ窓口となっていた。初期のチャットでは、疲弊した彼の様子から「彼もまた被害者なのではないか」と同情的な見方もあった。しかし、彼の行動は次第に矛盾を露呈していく。
* **虚偽の遅延理由:** 被害者からの問い合わせに対し、御船氏は「名義変更が終わっていない」「確認がまだだから払えない」といった、後に内部事情と全く異なることが判明する嘘の理由で支払いを引き延ばし続けた。会社の資金繰りが破綻している事実を隠蔽し、時間稼ぎをしていたことは明らかである。
* **責任放棄と逃亡:** 事態が悪化すると、御船氏は携帯電話を解約(番号保管サービスに切り替え)し、多くの被害者との連絡を一方的に絶った。取締役という重責を担いながら、説明責任を一切果たさず、雲隠れしたのである。チャット内では「御船さん携帯電話も解約してたし、やめたんですかね」と、彼の無責任な行動が報告されている。
* **経営中枢としての責任:** 彼は単なる従業員ではなく、会社の意思決定に関わる取締役である。自転車操業という異常な経営状態を知らなかったとは考えにくく、経営責任は極めて重い。
**2. 五味(ごみ)・佐々木(ささき)― カーオークション詐欺の実行部隊**
カーオークション.jpの担当者であった五味氏と佐々木氏は、顧客を直接欺く実行犯として、その悪質性を厳しく糾弾されている。
* **虚偽のオークション結果報告:** 彼らは、実際にはUSS(中古車オークション最大手)の会員資格を一時停止されるなどして入札できない状態であったにもかかわらず、顧客からの入札依頼を受け付け続けた。そして、「競り負けた」「流札した」と虚偽の報告を繰り返していた疑いが濃厚である。チャット参加者の調査により、彼らが報告した落札額や結果が、実際のオークションデータと食い違う事例が複数発覚。「3月15日以降のUSSの結果は虚偽と捉えてもらっていいと思います」と元従業員とみられる人物が証言している。
* **車両の詐取と横流し:** 最も悪質なのは、出品代行を依頼された車両をだまし取る手口である。「USS東京に出品する」と偽り、顧客から車両を引き上げた後、実際には別のオークション会場(ZIP東京など)に出品、あるいは買取業者に直接売却し、その代金を着服していた。ある被害者のTconnect(トヨタのコネクテッドサービス)のGPS記録から、五味が車両を引き取った後、USSとは全く別の方向に運び去っていたことが判明しており、これは詐欺罪および横領罪の決定的な証拠となりうる。
* **顧客への冷徹な対応:** 被害者からの問い合わせに対し、五味氏らは終始「確認します」と繰り返すだけで、誠実な対応を一切見せなかった。ある被害者は「心が痛んでる感じはとくに五味は皆無でした」とその冷酷な態度を証言している。彼らは会社の窮状を知りながら、何食わぬ顔で顧客を騙し続けていたのである。
彼ら3名は、仲大樹という首謀者の手足となり、その詐欺的スキームを末端で支える重要な役割を担っていた。被害者たちの怒りの矛先が、仲だけでなく彼らに向けられるのは当然のことであった。
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### 第3章:不在の王、仲大樹 ― 虚言と無責任の肖像
全ての元凶である仲大樹とは、一体どのような人物なのか。被害者や元従業員たちの証言から浮かび上がるのは、異常なまでの自己中心的思考と、現実から乖離した虚言を弄する人物像である。
* **コミュニケーションの異常性:** 多くの被害者が、仲氏の「異常な早口」と「人の話を聞かず一方的に話す」態度を指摘している。「ひたすら『ホントスミマセン』を連呼するだけ」「自分の言いたい事だけ自分の早いペースで話して人の話は聞かないタイプ」といった証言は、彼が対話による問題解決を放棄し、その場しのぎの謝罪と虚偽の約束で相手を煙に巻くことしか考えていなかったことを示している。
* **荒唐無稽な言い訳:** 彼の語る資金調達の話は、まさにファンタジーの世界である。「出資先の社長がICUに入ったが、3日後に退院してそのまま葬儀へ向かったため延期になった」「年商200億円の優良企業からの支援が決まった(後にその企業は完全否定)」など、およそビジネスの世界では通用しない言い訳を平然と繰り返した。
* **贅沢な私生活と金の亡者:** 登記簿から判明した新宿区の高級マンション暮らしに加え、元従業員からは「キャバクラやガールズバーによく行っていた」「アメックスで3億円分のロレックスを購入している」といった情報がもたらされた。顧客や従業員が塗炭の苦しみを味わう中、彼は騙し取った金で豪遊を続けていたのである。さらに衝撃的なのは、彼が会社の資金を**オンラインカジノ**に投じていたという疑惑だ。これが事実であれば、会社の資産を私的に蕩尽したことになり、破産法上の免責も認められない重大な背信行為である。
* **逮捕への恐怖と時間稼ぎ:** なぜ彼は逃亡しないのか。多くの被害者が抱いたこの疑問に対し、チャット内では「飛ぶと捕まるから」「刑事事件になるのを恐れている」との分析がなされた。「支払います」と言い続けることで、詐欺罪の構成要件である「当初からの欺罔(ぎもう)の意思」を否定し、単なる「民事の債務不履行」に見せかけようとしていたのである。彼の行動原理は、ただひたすらに逮捕を免れるための時間稼ぎであった。
### 第4章:被害者たちの反撃 ― 司法と世論を動かす闘い
当初は個々に途方に暮れていた被害者たちは、オープンチャットというプラットフォームを得て、次第に組織的な抵抗を開始する。
**1. 法的措置の多角的展開**
* **支払督促と少額訴訟:** 被害額が比較的少額な顧客は、弁護士を介さずに自力で支払督促や少額訴訟に踏み切った。これは金銭回収というよりも、法的な「債務名義」を獲得し、仲氏側の不誠実な対応を公的な記録として残すことに主眼が置かれていた。KARASU氏など先駆者の経験は、後に続く被害者たちの貴重な道標となった。
* **クレジットカードのチャージバック申請:** クレジットカードで保証金などを支払った被害者は、カード会社に対し「支払い停止の抗弁権(チャージバック)」を行使。一部では返金(支払い免除)が認められるケースも報告され、有効な自衛策として共有された。
* **集団での刑事告発へ:** 返金が絶望的と見るや、被害者の目標は「金銭回収」から「刑事罰」へと大きく舵を切る。「りよ」氏の呼びかけで、弁護士費用を分担して仲氏らを詐欺罪や業務上横領罪で刑事告発するためのグループが結成された。これは、仲氏が最も恐れるであろう「逮捕」という結果を現実のものとするための、最も直接的な行動であった。
**2. 世論への訴え ― メディアという武器**
被害者たちは、この事件を社会問題化させるべく、積極的にメディアへ情報を提供した。
* **報道機関へのリーク:** 朝日新聞、フジテレビ「イット!」、FRIDAYなどが次々とこの問題を取り上げた。特に「イット!」では、元従業員の証言や、仲氏本人への電話取材(「6月末までに返金する」という虚偽の発言を引き出した)が放送され、大きな反響を呼んだ。
* **インフルエンサーへの働きかけ:** 自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏や、中古車買取販売店「BUDDICA」の中野優作社長といった業界のインフルエンサーもこの問題に言及。特に中野社長は、自身のYouTubeチャンネルでWoorom社へのM&A(救済合併)を検討したものの、仲氏側の不誠実な対応(銀行口座の開示拒否、約束の反故)により断念した経緯を暴露。これにより、仲氏が自ら再建のチャンスを潰していたことが明らかになった。
これらのメディア露出は、当初「民事不介入」の姿勢だった警察の腰を上げさせる決定的な要因となった。世論という大きな圧力が、重い行政の扉をこじ開けたのである。
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### 終章:終わらない闘い ― 捜査の進展と残された課題
2025年8月時点のログの終わりでは、事件は新たな局面を迎えている。
* **警察の本格捜査:** メディア報道と多数の被害届(あるいは告訴の意思表示)を受け、警視庁麻布警察署に大規模な捜査チームが編成されたとの情報が共有されている。捜査は、車両の二重売買、オンラインカジノへの資金流用、さらには補助金の不正受給といった余罪にも及んでいると見られ、仲氏および五味、御船といった主要な共犯者の逮捕はもはや時間の問題と目されている。
* **残された被害と心の傷:** 金銭的な被害回復は依然として絶望的である。しかしそれ以上に、被害者たちが負った心の傷は深い。「人間不信になった」「家族関係が悪化した」「精神的に病んで休職に追い込まれた」といった悲痛な声は、この事件が人々の人生に与えた影響の深刻さを物語っている。
このLINEチャットの記録は、一企業の破綻劇に留まらない。それは、法と正義を信じ、悪質な犯罪に屈することなく声を上げ続けた500人以上の市民の闘いの記録である。彼らの行動がなければ、この事件は無数の「民事トラブル」として闇に葬り去られていたかもしれない。仲大樹とその共犯者たちが法廷に引きずり出されるその日まで、そして彼らが犯した罪に対する正当な罰が下されるまで、被害者たちの闘いは終わらない。この記録は、その揺るぎない決意の証左なのである。
AIにオープンチャットを要約させました
## **序章:奈落の底で灯された、反撃の狼煙**
2025年5月10日、土曜日の夕刻。日本のデジタル空間の片隅で、一つのコミュニティが静かに、しかし確かな熱量を持ってその活動を開始した。その名は「(株)Woorom. 被害者の会」。希望に満ちていたはずの自動車購入や売却の夢が、株式会社Woorom(ウーロン)という名の奈落に突き落とされた人々にとって、そこは最後の拠り所であり、反撃の狼煙を上げるための司令部であった。
同社が全国に展開する中古車販売店「CARNEL(カーネル)」、そしてインターネットを介した車両売買の窓口「カーオークション.jp」。これらのサービスを利用したことで人生の歯車を狂わされた被害者たちが、一人、また一人とこのオープンチャットの扉を叩いた。最初に悲痛な叫びを上げたのは、カーオークションで愛車の出品代行を依頼したという「ペンギン」さん。彼の「被害者です、宜しくお願い致します」という短い挨拶が、この壮絶な物語の始まりを告げた。
その呼びかけに呼応するように、日本全国から被害者たちが集結を始める。納車されるはずのファミリーカーを待ち続ける父親、老後の資金にと売却した愛車の代金を騙し取られた高齢者、信じて働いた会社から数ヶ月もの給料を支払われず、日々の生活さえ困窮する元従業員たち。彼らの被害形態は多岐にわたったが、その怒りと絶望の矛先はただ一点、代表取締役・仲大樹(なか だいじゅ)という一人の男に向けられていた。
このオープンチャットは、単なる傷の舐め合いの場では終わらなかった。それは、孤独な点でしかなかった被害者たちが互いの存在を認識し、情報を一本の強固な線として編み上げ、見えざる巨大な悪意に立ち向かうための作戦司令部へと、急速に変貌を遂げていく。本稿は、2025年5月10日から約4ヶ月間にわたり記録された、彼らの血と汗と涙の物語である。被害総額は報道によれば20億円以上、チャット参加者だけでも500名を超える人々が巻き込まれたこの事件。これは、ある企業の倫理なき崩壊の記録であると同時に、法と正義の狭間で、知恵と勇気と連帯を武器に戦った市井の人々の、壮絶な闘いのクロニクルである。
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### **第1章: 悪夢の構造 ― 明かされる「自転車操業」という名の地獄**
チャット開設直後から、参加者たちは堰を切ったように自らの被害状況を吐露し始めた。その一つ一つの告白は、仲大樹が築き上げた詐欺的ビジネスモデルがいかに巧妙で、そしていかに多くの人々の人生を破壊したかを物語る、巨大で陰鬱なパズルを組み立てるピースとなっていった。
#### **被害の類型:三つの悲劇**
被害は大きく三つのカテゴリーに分類された。
1. **「カーネル」における車両未納・未返金**: 全国の「カーネル」店舗で車両を購入し、代金を全額支払ったにもかかわらず、約束の納期を過ぎても車が届かない、あるいはキャンセルしても代金が返ってこないという被害。家族のためのミニバン、仕事で使う軽トラック、初めてのマイカー。それぞれの夢や生活を乗せるはずだった車は、決して彼らの元へ届くことはなかった。
2. **「カーオークション.jp」における保証金・売却代金の詐取**: インターネットオークション代行サービスでは、より悪質な金銭被害が多発していた。オークション参加のための保証金(多くは49,000円や99,000円)が返金されないという少額被害から、出品代行を依頼した愛車が売却されたにもかかわらず、その売却代金数百万円が丸ごと着服されるという巨額の横領事件まで、被害の深刻さは青天井だった。
3. **従業員への給与未払い**: 顧客だけでなく、会社のために身を粉にして働いてきた従業員たちもまた、深刻な被害者であった。2024年末から給与の遅配が始まり、2025年に入ると数ヶ月にわたって完全に支払いがストップ。生活の糧を断たれ、路頭に迷う元従業員が続出した。
#### **内部告発によって暴かれたカラクリ**
この混沌とした状況に一筋の光を差し込んだのは、同じく被害者である元従業員たちの存在だった。彼らは自らの給与未払いに苦しみながらも、顧客たちを救いたい一心で、チャット内で内部情報の提供を始めた。その証言によって、この事件の核心にある恐るべきシステム、**「自転車操業」**の実態が白日の下に晒されたのである。
元従業員である「ペンギン」さんや「マグロ」さんが語ったその仕組みは、こうだ。
**【Woorom社の破滅的ビジネスモデル】**
1. **所有権なき販売**: まず大前提として、カーネルの店頭に並んでいた展示車両の実に9割は、Woorom社の所有物ではなかった。その真の所有者は、「トラックリーシング株式会社」や栃木県の「株式会社ソニックス」といった、Woorom社に運転資金を融資している金融会社(融資会社)であった。Woorom社は、オークションで仕入れた車両の車検証をこれらの融資会社に担保として預けることで、資金を借り入れていたのだ。つまり、店頭の車は事実上の「金融車」状態にあった。
2. **顧客からの入金**: 顧客がカーネルで車を購入し、車両代金をWoorom社の指定口座に振り込む。
3. **顧客資金の不正流用**: 本来、この入金された資金は、即座に融資会社への返済に充てられ、担保となっている車検証を買い戻すために使われるべきであった。車検証がなければ、顧客への名義変更(移転登録)ができず、納車は不可能だからだ。しかし、代表の仲大樹はこの鉄則を破った。彼は、顧客から入金された虎の子の資金を、別の顧客への返金(それもごく一部の、声高に催促する者へのアリバイ作りのような返金)や、滞納していた店舗の家賃、従業員の給料(これも遅延を重ねた末の焼け石に水のような支払い)、そして何より自身の贅沢な生活費や遊興費へと、意図的に流用し始めたのである。
4. **納車不能の連鎖地獄**: 結果として、融資会社へ返済する金はなくなり、車検証は戻ってこない。当然、納車は不可能となる。そして、この遅延をごまかすために、新たに契約した顧客から入金された金を、前の顧客のトラブル処理に充てるという、破滅的な連鎖が始まった。これはもはやビジネスではなく、破綻が約束された詐欺そのものであった。
「私が契約した高松店の店長曰く、私が入金したお金は他顧客への返金に充てられた可能性が高い、とのことです」という「ペンギン」さんの告白は、このシステムの非情さを物語っていた。顧客から騙し取った金で、別の顧客の怒りを一時的に宥める。それは、被害者を無限に再生産し続ける、悪魔のサイクルだった。
#### **独裁者・仲大樹という存在**
この破滅的なシステムを一人で回していたのが、代表取締役・仲大樹その人であった。元従業員たちの証言によれば、会社の金銭に関わる決済はすべて仲が独断で管理しており、他の役員や従業員は全く関与できない状態だったという。
「決済や入金に関する事は、全て代表の仲大樹が管理しているため、本人以外の問い合わせは基本無意味です。現状を把握していない従業員すらいる状態です」と「ペンギン」さんは語る。
この権力集中が、不正の温床となった。従業員たちは、会社の危機的状況を薄々感じながらも、具体的な金の流れを知ることができず、ただ仲の「資金調達の目処が立った」という虚偽の言葉を信じて、顧客に納車の遅延を詫び続けるしかなかった。
さらに被害者たちの怒りに火を注いだのが、会社の危機的状況とは裏腹な仲の贅沢な暮らしぶりだった。チャット開設早々に、管理人の「キツネ」さんが会社の登記簿謄本を取得し、仲の住所が新宿区神楽坂にある家賃30万円超の高級マンション「パークハウス山吹神楽坂」であることを突き止めた。「家賃35万の家に住む前にワンルームに引っ越して家賃と敷金を返済に回して欲しいですよね」という「キツネ」さんの皮肉のこもった投稿は、多くの被害者の共感を呼んだ。
顧客や従業員が日々の生活に困窮する一方で、その金で贅沢な暮らしを続ける代表取締役。この強烈なコントラストは、被害者たちに「単なる経営の失敗ではない、これは意図的な搾取であり、犯罪だ」と確信させるのに十分だった。こうして、チャットに集った人々は、単なる債権者から、巨悪を告発する当事者へと、その意識を変えていったのである。
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### **第2章: 虚言の王、仲大樹 ― その悪辣なる手口と人物像**
オープンチャットでの情報交換が深化するにつれ、代表取締役・仲大樹の人物像と、彼が駆使した悪辣な手口が、より鮮明に浮かび上がってきた。それは、単に経営能力を欠いた無能な経営者というだけでは説明がつかない、計画性と悪意に満ちた、まさに「詐欺師」と呼ぶにふさわしいものであった。
#### **手口1: 無限ループする虚偽の約束 ― 「来週」という名の地平線**
仲の最も基本的な、そして被害者を最も疲弊させた手口は、実現するつもりのない約束を際限なく繰り返すことだった。彼の言葉は、決して到達することのできない地平線のように、常に被害者の希望を弄び続けた。
「今週中には必ず」「来週には資金調達が完了します」「月末までには全額返金します」――。これらの言葉は、彼と接触したほぼ全ての被害者と従業員が耳にした呪文である。チャット参加者の「ハムスター」さんは、実に13回も返済日を延期された記録を共有し、他の参加者たちも同様の経験を次々と報告した。この「引き延ばし」は、単なるその場しのぎではなかった。それは、被害者が法的措置に踏み切る気力を削ぎ、問題を時間の中に埋没させようとする、計算された心理戦術であった。
約束が破られるたびに彼が口にする言い訳もまた、常軌を逸していた。元従業員の「カメレオン」さんが暴露した仲の言葉は、その異常性を象徴している。
> 「融資先の社長がICU(集中治療室)に搬送されたのですが、3日後には無事退院し、そのまま親族の葬儀に参列されたため、入金が延期になりました」
このあまりに突飛な物語は、彼が被害者を人間として見ておらず、いかに愚弄しているかの証左であった。彼はこの話を複数の相手に使い回しており、チャット内でその矛盾が露呈することもあった。彼の口から発せられる言葉に、真実のかけらは存在しなかった。それはただ、時間を稼ぎ、自らの破滅を先延ばしにするための、空虚な音の羅列に過ぎなかった。
#### **手口2: 感情に訴えかける芝居と、計算されたアリバイ作り**
仲は、ただ嘘をつくだけではない。時には被害者の感情に訴えかけ、同情を誘うような芝居を打つこともあった。
「複数のトラブル(詐欺)に巻き込まれた」「自分も被害者だ」――。一部の被害者には、あたかも自らが不運な悲劇の主人公であるかのように語り、同情を引こうとした。しかし、その裏では家賃30万円超のマンションに住み、贅沢な生活を送っている。その乖離は、彼の言葉がすべて偽りであることを物語っていた。
また、彼の行動は常に「詐欺罪での立件回避」を念頭に置いた、計算高いものであった。
* **「返済の意思」のアピール**: 彼は決して「返せません」とは言わなかった。常に「返済の意思はあります」「必ず責任を取ります」と繰り返した。これは、詐欺罪の構成要件である「当初からの騙す意図」を否定するための、巧妙なアリバイ作りである。警察が当初「民事不介入」の姿勢を崩さなかったのも、この「返済意思のアピール」に惑わされた側面が大きい。
* **ごく少額の返金**: 7月初旬、一部の少額被害者に対して、突如として数万円の返金が行われた。これもまた、メディアの追求が厳しくなる中で、「返済を始めている」という既成事実を作るためのパフォーマンスであった可能性が高い。被害総額が20億円とも言われる中で、数十万円の返済は、焼け石に水ですらない。それは、法廷闘争を見据えた、悪質な証拠作りであった。
#### **手口3: 代理人弁護士という名の煙幕**
被害者からの追及が激しくなると、仲は「代理人弁護士」という名の煙幕を張り、直接の対話を遮断しようと試みた。しかし、その手法もまた、彼の不誠実さを露呈させる結果となった。
* **謎の弁護士、渡邊一彰**: 5月中旬、仲はクレミエール法律事務所の渡邊一彰弁護士を代理人に立てたと通知した。しかし、この弁護士は実態が極めて不透明だった。事務所の電話は繋がらず、メールの返信もない。被害者の一人が事務所とされる世田谷区のアパートを訪れたが、表札もなく、生活感のない部屋があるだけだった。
さらに不可解なことに、この渡邊弁護士は当初、「一度相談を受けただけで、正式に受任した事実はない」と回答していたにもかかわらず、後日「受任する方向で最終調整中」と前言を翻し、最終的には「仲が言うことを聞かないから」という理由で一方的に辞任を通知した。被害者からは、これは仲が時間稼ぎのために雇った、あるいは名前だけを利用した「偽物の弁護士」ではないかという強い疑念が持たれた。
* **懲戒処分歴のある弁護士、藤井鉄平**: 渡邊弁護士の辞任後、仲は新たに藤井鉄平弁護士を立てると通知した。しかし、この弁護士は過去に複数回の懲戒処分を受けた経歴のある人物であることがすぐに判明。さらに、この藤井弁護士も「着手金が支払われていないため、正式には動けない」と証言し、結局、仲には実質的に代理人がいない状態が続いた。
これらの行動は、仲が真摯に問題解決を図る意思が皆無であり、ただひたすらに時間稼ぎと責任逃れに終始していることを明確に示していた。
#### **人物像:プライドが高く、共感性を欠いたペテン師**
チャットでの証言を総合すると、仲大樹という人物像が浮かび上がってくる。
* **コミュニケーション能力の欠如**: 元従業員「服部半蔵」さんは、「自分の言いたい事だけ自分の早いペースで話して人の話は聞かないタイプ。こちらから話をしている最中に話を被せてきて、自分のタイミングで話を終わらせる」と語る。彼の早口と一方的な会話は、多くの被害者が経験しており、相手と真摯に向き合うことを徹底的に避ける彼の姿勢を物語っている。
* **歪んだプライドと自己顕示欲**: 会社の資金が枯渇する中でも、家賃の高いマンションに住み続け、忘年会を借金してまで開催し、従業員に高額な自己啓発セミナーを受けさせるなど、彼の行動には常に他者からの評価を気にする歪んだ自己顕示欲が見え隠れする。元従業員「ニゲル」さんは、彼を「プライドが高いバカ」と評した。
* **共感性の欠如**: 数百人の人生を破綻させながら、その苦悩に寄り添う言葉は一切なく、ただ自らの「資金調達」という虚構の物語を繰り返す。被害者が「生活ができない」と訴えても、「耐えられるから大丈夫」と平然と返すその姿は、他人の痛みに対する共感性が著しく欠如していることを示している。
* **確信犯としての側面**: 法の抜け道を熟知し、「返済の意思」を見せ続ければ詐欺罪に問われにくいことを理解した上で、計画的に行動している節がある。彼は単なる無能な経営者ではない。自らの利益のためならば、他人を騙し、法を悪用することも厭わない、冷徹な計算高さを持った「確信犯」としての側面が強く疑われる。
チャット内で共有された仲の顔写真は、どこか掴みどころのない、胡散臭い印象を与えるものだった。元従業員は「又吉直樹にイラストの顔を入れた感じ」「カレー、濃いインド人顔」と様々に表現したが、その誰もが、彼の人間性の底知れなさに戦慄していた。彼は、自らが作り出した虚構の世界に生き、現実から目を背け、最後まで被害者と向き合うことから逃げ続けたのである。
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### **第3章: 法の剣を研ぐ ― 被害者たちの長く険しい闘争**
仲大樹の鉄壁の不誠実さを前に、被害者たちは法という武器を手に取ることを決意する。しかし、それは専門知識も経験もない一般市民にとって、あまりにも険しく、遠い道のりだった。オープンチャットは、彼らが法律という難解な迷宮を、互いに手を取り合って進むための羅針盤となった。ここでは、彼らが試みた様々な法的アプローチとその過程で直面した困難、そして見出した光明を詳細に記述する。
#### **第一幕: 民事の闘い ― 金銭回収という高き壁**
当初の目的は、当然ながら騙し取られた金銭の回収であった。そのために、被害者たちは様々な民事上の手続きを模索し、実行に移していった。
##### **初動:立ちはだかる「民事不介入」の厚き壁**
多くの被害者が最初に頼ったのは、警察と国民生活センターであった。しかし、彼らの期待は早々に打ち砕かれる。
* **警察署での門前払い**:
「契約上のトラブルだから、民事不介入です」
「相手に返済の意思がある以上、現時点では詐欺とは言えません」
全国各地の警察署で、被害者たちは同じ言葉を繰り返された。「なお」さん、「ひな」さん、「🐣(ひよこ)」さんなど、チャット参加者の多くがこの悔しい経験を共有した。これは、詐欺罪の立証に「当初からの騙す意図(欺罔行為)」という高いハードルがあるためだ。仲が電話に出ること、そして「返します」という空虚な言葉を繰り返すことが、皮肉にも彼を刑事事件化から守る盾となっていた。警察は、この段階では事件を個別の金銭トラブルとしか見なせず、組織的な大規模詐欺事件としての全体像を把握できていなかった。
* **国民生活センターの限界**:
国民生活センターは、親身に相談に乗ってくれるものの、法的強制力を持たないため、その役割は助言やあっせんに留まった。「ローンで購入した場合、『支払い停止の抗弁権』が主張できる可能性がある」といった有益な情報は得られたものの、仲のような確信犯に対しては、決定的な解決策とはなり得なかった。
##### **法廷闘争へ:自力で進める民事訴訟とその現実**
公的機関の動きが鈍い中、被害者たちは自らの手で法廷の扉を叩き始める。チャットでは、素人でも実行可能な手続きについて、経験者からの具体的なアドバイスが共有された。
* **内容証明郵便**:
多くの被害者が、まず弁護士に依頼、あるいは自力で作成した内容証明郵便をWoorom社に送付した。これは、法的な強制力はないものの、「いつ、どのような内容の請求を行ったか」を郵便局が公的に証明するものであり、後の裁判で重要な証拠となる。しかし、仲はこの内容証明をことごとく無視。さらに、事件が進行すると、六本木の本社事務所はもぬけの殻となり、郵便物が「宛先不明」で返送される事態も発生し、この手法の効果は限定的であった。
* **支払督促**:
裁判所に申し立て、債務者へ金銭の支払いを命じてもらう手続き。相手が2週間以内に異議を申し立てなければ、仮執行宣言を得て強制執行が可能となる。裁判に比べて費用が安く、手続きが書面のみで完結するため、自力で行う被害者もいた。しかし、これも仲側が「異議あり」と一枚の紙を返送するだけで通常訴訟に移行してしまうため、時間稼ぎに利用されるリスクがあった。
* **少額訴訟**:
被害額60万円以下の金銭トラブルを対象とする簡易的な裁判。「カラス」さんは、約50万円の被害に対し、この少額訴訟を提起した。彼はチャットでその経験を共有し、「弁護士に頼むと着手金や成功報酬で費用倒れになる可能性が高い。少額訴訟は自分で行うしかない」と、その現実を語った。費用は約2万円程度で済むが、訴状の作成、証拠の収集、会社登記簿の取得など、全てを自力で行う必要があった。
* **通常訴訟と欠席判決**:
被害額が数百万円に上る「MM」さんや「おっぴろげー」さんなどは、弁護士に依頼して通常訴訟に踏み切った。しかし、彼らの裁判で待っていたのは、被告である仲大樹の完全な無視であった。仲本人も、代理人弁護士も法廷に姿を現さず、反論の書面である答弁書すら提出しなかった。
この場合、裁判は原告(被害者)の主張を全面的に認める形で、「欠席判決」として終結する。被害者たちは勝訴はしたものの、その心境は複雑だった。判決は、あくまで「支払いを命じる」という法的なお墨付きを得たに過ぎない。相手がそれを無視すれば、絵に描いた餅である。
##### **最終手段:強制執行と財産開示請求という茨の道**
勝訴判決という「債務名義」を手にした被害者たちが次に向かうのは、相手の財産を強制的に差し押さえる**`強制執行`**の手続きである。「KARASU」さんは、この手続きの過酷さをチャットで吐露した。
> 「判決でても、口座を差し押さえるための書類が手間がかかるし、金がかかりすぎて、泣きそう…この国の制度・法律はアホすぎる」
彼が語った現実は、被害者に追い打ちをかけるものだった。
まず、差し押さえるべき銀行口座を特定する必要がある。チャット内で共有された15以上の銀行口座に対し、1行ごとに登記簿(1通600円)を取り寄せ、裁判所に手数料(1件4000円)と郵便切手代(1件約1300円)を納めなければならない。さらに、口座に残高がいくらあるか不明なため、請求額を各銀行に自分で割り振って申請する必要がある。
当然、仲は口座を空にしているか、資産を別の場所に移している可能性が高い。強制執行が空振りに終わった場合、被害者は次の手段、**`財産開示手続`**へと進むことになる。これは、債務者本人を裁判所に呼び出し、宣誓の上で自らの財産リストを提出させる制度である。この呼び出しを正当な理由なく無視したり、虚偽の財産目録を提出したりすれば、**`刑事罰(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)`**が科される。
多くの被害者にとって、民事での金銭回収は絶望的であった。しかし、彼らは諦めなかった。勝訴判決を取り、強制執行をかけ、そして財産開示手続へと駒を進める。その一つ一つの手続きは、仲を法的に追い詰め、彼の逃げ道を塞いでいくための、執念の積み重ねであった。それは、金銭を取り戻すためというよりは、法の下で正義を実現するための、意地と誇りをかけた戦いであった。
#### **第二幕: 刑事の闘い ― 「金より罰を」という民意**
民事での回収が困難を極める中、チャット内の空気は徐々に変化していく。「金が返ってこなくてもいい。ただ、あの男に罪を償わせたい」。その強い意志が、被害者たちを**`刑事告訴`**という、より困難で、しかしより根本的な解決を目指す道へと突き動かした。
##### **集団での刑事告訴へ ― 怒りのカンパ**
この流れを主導したのは、管理人の「キツネ」さんだった。
> 「訴訟してもお金は戻ってこないと思うので、それよりも警察を動かして仲社長を刑務所に入れたいですね。被害額4桁万円は一発実刑かと思います」
彼のこの呼びかけに、「感情論に従った少し大人気ない考えにはなりますが、箱にブチ込めるのなら喜んで出します」と「ニゲル」さんが応じるなど、多くの被害者が賛同の意を示した。
「キツネ」さんは、弁護士に刑事告訴を依頼するための費用として約45万円を見積もり、「1口1万円で45人以上の賛同者がいれば進めます」とアンケートを実施。すると、「おっぴろげー」さんや「hm2951」さんが5万円の出資を申し出るなど、瞬く間に目標額に迫る賛同が集まった。これは、被害者たちが私財を投げ打ってでも、仲大樹に法的な制裁を与えたいという、燃え盛る民意の表れであった。
##### **罪状の再検討 ― 立件への突破口を探して**
刑事告訴を進めるにあたり、チャットではどの罪状で立件を目指すべきか、より専門的で具体的な議論が交わされた。弁護士からの助言も共有され、被害者たちは次第に法的知識を深めていった。
* **`詐欺罪`の壁と、それを打ち破る証拠**:
当初から壁となっていた「当初からの騙す意図」の立証。しかし、チャットでの情報集約により、その壁を打ち破るための強力な武器が次々と発見された。
1. **虚偽のオークション報告**: 被害者が依頼した金額よりも安く落札しておきながら、「競り負けた」と嘘の報告をしていた事実は、顧客を騙してサービスを継続させようとした明確な**`詐欺罪`**の証拠となり得た。
2. **USS会員資格の喪失**: 元従業員の証言から、Woorom社が主要オークション会場であるUSSの会員資格を、会費未払いを理由に一時停止されていた時期があったことが判明。その期間中も、何食わぬ顔で顧客からオークション代行の依頼を受け続けていたとすれば、それは「実行不可能なサービスを提供すると偽って金銭を受け取った」ことになり、詐欺罪が成立する可能性が極めて高い。
3. **販売済み車両のスクラップ化**: 最も決定的だったのが、「ぬこ」さんのケースである。彼女が代金を支払った車が、納車されることなく解体業者に引き渡され、スクラップにされていた。これは、もはや納車する意思が微塵もなかったことの動かぬ証拠であり、警察も「犯罪の線がとても濃い」と重大な関心を示した。
* **`業務上横領罪`という確実な一手**:
詐欺罪の立証が複雑なケースでも、**`業務上横領罪`**はより適用しやすいと考えられた。
1. **売却代金の着服**: カーオークション.jpで顧客の車を売却し、その代金を着服した行為は、業務上横領罪の典型例である。「ゾウ」さんをはじめとする高額被害者のケースは、この罪状での立件が有力視された。
2. **別会場への無断出品**: 元従業員の「しゅう」さんの告発は衝撃的だった。彼が出品代行を依頼した車は、約束のUSSオークションではなく、担当の五味氏によって別のオークション会場に持ち込まれ、売却後、海外へ転売されていた。これは、顧客から預かった資産を権限なく処分した横領行為そのものであった。
* **浮かび上がる共犯者たち**:
捜査の焦点は、仲大樹一人だけではなく、彼の指示の下で、あるいは積極的に協力して不正行為に手を染めたとされる従業員たちにも向けられ始めた。カーオークション.jpの担当者であった**五味氏**、**佐々木氏**、そして取締役でもあった**御船氏**。彼らは、資金繰りが破綻していることを知りながら、顧客に虚偽の説明を繰り返し、被害を拡大させた共犯者として、逮捕の可能性が濃厚となっていった。
##### **警察の覚醒と捜査の本格化**
被害者たちの粘り強い働きかけと、それを後押しするメディアの報道、そしてオンラインカジノへの資金流用疑惑という決定的なスキャンダルは、ついに重い警察の腰を上げさせた。
* **全国警察の連携**: 栃木県警が捜査の口火を切ると、他の都道府県警も追随し始めた。「りよ」さんが設置したGoogleフォームを通じ、全国の被害者がどの警察署に相談したかの情報が集約され、警察内部での情報共有が促進された。
* **警視庁の専従捜査班**: そして、ついに本丸である警視庁麻布警察署が、本件を単なる地方のトラブルではなく、全国規模の大型詐欺事件と認定。大規模な専従の捜査チームを編成し、本格的な捜査に乗り出したことがチャット内で報告された。刑事からは「捜査は進んでいる」という言葉も聞かれ、仲とその一味の逮捕は、もはや時間の問題となった。
被害者たちの法的闘争は、当初の孤独な戦いから、メディアや警察をも巻き込んだ、社会的な悪を糾弾する大きなうねりへと発展した。それは、金銭的な救済という目的を超え、法の下の正義を実現し、二度とこのような悲劇を繰り返させないという、彼らの強い決意の表れであった。仲大樹が築き上げた虚構の城は、外堀を埋められ、内堀も干上がり、天守閣に火の手が上がるのを待つばかりとなっていた。
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### **終章: 帝国の崩壊と、残されたもの**
2025年8月、夏の盛りとともに、株式会社Wooromという砂上の楼閣は、音を立てて崩れ落ちた。仲大樹が繰り返した「来週には」という約束は、ついに果たされることなく、彼の帝国は完全な沈黙に包まれた。
#### **Woorom社の物理的消滅**
全国に点在したカーネルの店舗は、その痕跡を消し始めた。
* **もぬけの殻となった店舗**: 岡山、新潟、静岡、北九州…。各地の被害者から、店舗の車両が忽然と姿を消したという報告が相次いだ。それは、Woorom社が自ら整理したのではなく、債権者である融資会社(トラックリーシング社やソニックス社)が、担保としていた車両を強制的に回収し始めた結果であった。店舗の敷地には、数台の代車と、風に舞う契約書の紙切れだけが残された。
* **更地への回帰**: やがて、事務所として使われていたプレハブは解体され、カーネルの赤い看板も撤去された。かつて夢を求めて人々が集った場所は、何事もなかったかのように、ただの更地へと還っていった。
* **本社機能の停止**: 六本木のデュープレックスM'sにあった本社事務所も、家賃滞納により強制退去させられたと見られ、郵便物は「宛先不明」で返送されるようになった。電話は不通となり、ウェブサイトは閉鎖。株式会社Wooromは、社会的にその存在を抹消された。
#### **仲大樹の完全沈黙と、最後の虚言**
会社の崩壊と時を同じくして、仲大樹からの連絡も完全に途絶えた。
8月1日、彼は最後の力を振り絞るかのように、多くの被害者に対して「資金確保のめどはつきました。少しお時間を頂きますが、お振込の準備が出来次第ご連絡させて頂きます」という、これまでと何ら変わらないコピペのショートメールを一斉送信した。これが、彼が公に向けた最後の言葉となった。
その後、彼の携帯電話は電源が入ったままで、iMessageが「配信済」になることから国内に潜伏していると推測されるが、被害者からのいかなる連絡にも、彼は一切応答しなくなった。メディアで公言した「6月中の返金」も、その後の「7月中旬までの返金」も、すべてが嘘だったことが確定した瞬間だった。
#### **残された者たちの今**
チャットには、500名を超える被害者たちが取り残された。
* **絶望的な金銭被害**: 7月初旬に行われた、ごく一部の少額被害者へのアリバイ作りの返済を除き、ほとんどの被害者は1円の回収もできていない。被害総額は20億円とも言われ、そのほとんどが回収不能となることが確実視されている。多くの被害者が、新たなローンを組んだり、貯金を切り崩したりして、生活の再建を余儀なくされている。その精神的、経済的苦痛は計り知れない。
* **癒えぬ心の傷**: 金銭的な損失以上に、被害者たちの心を深く傷つけたのは、人間としての信頼を踏みにじられたという事実である。「人生で初めてこんな目に遭った」「人間不信になった」という言葉が、チャットには溢れている。特に、親身に対応してくれたと思っていた店舗の従業員が、実は会社の危機的状況を知りながら販売を続けていたかもしれないという疑念は、彼らの心をさらに苛んだ。
* **それでも消えない闘志**: しかし、彼らは諦めてはいない。民事裁判で勝訴した「KARASU」さんや「MM」さんは、財産開示手続に向けて着々と準備を進めている。多くの被害者が、警察の捜査に全面的に協力し、証拠を提供し続けている。彼らの目的は、もはや金銭の回収ではない。仲大樹とその共犯者たちが、法廷でその罪を裁かれ、刑務所という名の「箱」の中で、自らの犯した罪の重さと向き合うこと。それこそが、彼らにとっての唯一の救いであり、真の解決なのである。
#### **この事件が社会に突きつけたもの**
株式会社Woorom事件は、単なる一企業の破綻劇では済まされない、現代日本社会が抱える深刻な問題を浮き彫りにした。
1. **消費者保護システムの脆弱性**: 中古車業界における、所有権が留保されたまま高額な前金を要求する取引慣行の危険性が露呈した。また、グーネットやカーセンサーといった大手ポータルサイトが、広告掲載料を得る一方で、掲載企業の信用調査やトラブル発生時の責任について、極めて消極的であるという実態も明らかになった。
2. **法の執行における課題**: 「民事不介入」を盾に、初期対応が遅れがちな警察の体質。そして、詐欺罪の立証要件の厳格さが、加害者に時間稼ぎと証拠隠滅の猶予を与えてしまうという、法の構造的な欠陥。被害者が正義を求めるためには、あまりにも多くの時間と費用、そして精神的なエネルギーを自ら投じなければならないという厳しい現実を突きつけた。
3. **デジタル時代の新たな連帯**: しかし、この絶望的な状況の中で、一条の光もあった。それは、LINEオープンチャットという、現代ならではのツールが可能にした、被害者たちの迅速かつ強固な連帯である。もしこのチャットがなければ、全国に散らばる500名以上の被害者たちが結びつき、元従業員からの内部情報を得て、メディアや警察を動かすほどの大きな力となることは不可能だっただろう。これは、デジタル・ネットワークが、社会的弱者が巨悪に立ち向かうための強力な武器となり得ることを証明した、画期的な事例であった。
2025年8月末、仲大樹はまだ自由の身である。しかし、警視庁の捜査の網は着実に彼を追い詰め、逮捕の日は刻一刻と近づいている。彼が顧客や従業員から騙し取った金で築いた虚構の城は、跡形もなく崩れ去った。
「(株)Woorom. 被害者の会」のチャットは、今も静かに、しかし熱く燃え続けている。それは、失われた金銭を取り戻すためだけではない。踏みにじられた尊厳を回復し、法の下の正義を実現するため。そして何より、第二、第三の仲大樹を生み出さないために。彼らの戦いは、この社会に生きる我々すべてに対する、痛烈な問いかけであり続けている。