研究内容

キーワード:光学センサ,合成開口レーダ,都市環境,自然災害,GIS

(a) Detected 2-D displacement vectors in each sub-area plotted on one pre-event TerraSAR-X image from three different paths (the top, middle, and bottom vectors represent the results from paths A, B, and C respectively).

(b–d) Estimated displacement vectors in each sub-area from the pairs of paths A and B, A and C, and B and C, plotted on the pre-event TSX image.

(1) 多時期の衛星合成開口レーダ画像を用いた地盤変状と地殻変動の把握

2011年東北地方太平洋沖地震,2015年ネパール地震,2016年熊本地震や2018年北海道胆振東部地震など,近年大規模な地震災害が多発している。地震に伴う地殻変動をモニタリングするには,衛星画像を用いた面的把握が有効と考えられる。そこで,広域の地殻変動が発生した東北地方太平洋沖地震においては,地震前後に得られた高解像度TerraSAR-X 衛星画像から,無被害建物の地震前後の位置ずれに注目して地殻変動を検出する手法を提案した。この手法を宮城県と福島県の沿岸部を撮影した多時期の画像に適用し,高精度で地殻変動量の面的な検出に成功した。また,ネパール地震や熊本地震においては,日本のALOS-2 PALSAR-2画像を用いて干渉処理より地殻変動量を検出し,断層の推定を行った。 地震による地殻変動以外に,多時期のALOS PALSAR画像を用いて中国ウイグルにおける石油の汲み上げるによる地盤変状をモニタリングした。さらに,ERS-1/-2,ALOS PALSARとALOS-2 PALSAR-2を併用して,千葉県浦安市における1993年から2017年までの地盤沈下量を算出した。

(2) 高解像度リモートセンシング画像を用いた都市モデル構築と人工物の観測

高さや面積を含む建物情報と都市開発による建替えなどの変化は,都市計画や環境マネジメントなどにおいて不可欠なものである。最近の衛星画像の高解像度と撮影の特性を利用して,建物輪郭から正確な高さを推定する手法を提案した。2011年東北地方太平洋沖地震前のTerraSAR-X画像における建物の倒れ込み長さを検出し,建物の高さを再現することができた。また,米国サンフランシスコ市やペルー・リマ市の建物形状の自動抽出にも適用した。さらにSARセンサの斜め観測の特性を用いて,津波で建物側面に受けた被害を把握し,実データにより検証した。建物以外にも,橋梁における後方散乱特性を把握し,2011年東北地方太平洋沖地震・津波による被害橋梁の抽出を行った。SAR画像は天候に影響されず定期的に観測できるため,提案した手法は都市データベースの更新や地震による被害把握に有効と考えられる。光学センサ画像においても,建物の影を利用した高さの推定手法を地震前後の衛星画像に適用したほか,光学画像では観測しにくい中間層崩壊を日影やレーダ影の変化より検出した。また,日影の補正手法を提案し,影なしの土地被覆分類が可能となった。



Backscattering model for a high rise building in the intensity (a) and the phase (b) images

Two-temporal Lidar data around the Futagawa Fault in Kumamoto Prefecture

(3) 高解像度マルチセンサを用いた自然災害による被害把握

地震・津波のほか,台風,豪雨,火山噴火などの自然災害によって,広域な浸水,斜面崩壊,建物倒壊など多くの被害が発生する。現地調査が困難な地域において,リモートセンシング技術による被害把握は有効である。2011年東北地方太平洋沖地震では,TerraSAR-X画像と光学衛星のそれぞれを用いた津波浸水域の推定手法を提案した。また,高解像SAR画像を用いて,津波や高潮によって流失した建物の抽出を行った。多時期に異なる撮影条件で得られたALOS-2 PALSAR-2画像から,口永良部島とハワイ島キラウエア火山の火山活動による噴火前後の地盤変状を推定し,噴火による火砕流の範囲を特定した。2016年熊本地震においては,本震前後に撮影された航空レーザ計測データとPALSAR-2画像から倒壊建物の抽出を行った。2015年関東・東北豪雨と2018年7月西日本豪雨では,多次期のLバンドのPALSAR-2画像を用いた浸水範囲を特定し,現地調査との比較を行った。2018年北海道胆振東部地震において,地震前後のコヒーレンスを算出し,都市域における液状化現象の発生箇所を検出した。