研究テーマ

野生動物と人間社会は様々な「かかわりあい」を有しており、問題も発生してしまいます。

なぜ「問題」が問題化してしまうのか?

どうしたら「問題」を軽減できるのか?

都市におけるヒグマ問題をテーマにこの2点を研究しています。

●都市におけるヒグマと人の関わり合いの研究

全国各地でクマ(ヒグマ・ツキノワグマ)の人里への出没が問題となっています。その一方で、農村地帯に行くとクマの出没に対してある種の寛容さを感じたりします。なぜ、都市で出没すると大騒ぎしてしまうのでしょうか?

クマの生態に着目した研究では、採食資源や人馴れ、景観の構造など様々な要因が出没の要因として考えられてきました。その一方で、クマが出てくることで不安になったり、農作物を食害されることで経済的な被害を受けるには個人や社会の営みが介在しています。そのため問題を解決するためには、ヒグマが出没することによる人間社会側の影響も明らかにする必要があります。

ヒグマの出没が社会問題となっている札幌市を対象に、人の声に耳を傾けるという泥臭い手法を用いて、クマの出没がなぜ問題化してしまうのか?何が問題なのかを検討しています。

●家庭菜園における野生動物の軋轢研究

札幌市の郊外地域には、市民が自給的に作物栽培をする家庭菜園が点在しています。そうした家庭菜園では、シカやアライグマをはじめとしたさまざまな野生動物が作物の食害をしています。また、果樹やトウモロコシなどはヒグマを誘引する可能性もあります。

しかし、趣味で行う人が大半の家庭菜園では野生動物の被害の実態はあまり明らかにされてきませんでした。そこで、家庭菜園を歩いて回りプロットしたり、アンケートを配布・聞き取りを行うことでそうした実態の解明をしようとしています。

●学生団体によるヒグマの生態調査

学生団体の北大ヒグマ研究グループ(クマ研)は1975年創立の学生団体です。幌延町にある北海道大学天塩研究林をメインに各地でヒグマのモニタリング調査を行っています。僕がヒグマと出会うきっかけを与えてくれた団体で、2017-2018年ごろまで代表をしていました。生態調査はもとより、地域の人々との関係性や北海道のヒグマ管理に与える影響など生態・社会科学の両側面から調べたりしています。


・当歳子の共食い研究(Ito et al. 2022, Ursus

メモ:北海道初の当歳子の共食い事例を報告した論文。著者全員クマ研。

●サイエンスコミュニケーション

ヒグマの被害の現場を見聞きする中で、地域住民の方々がもっている知見(伝統知や経験知)と科学的な知見をどうすり合わせてコミュニケーションを
図るかに興味が出てきました。

そんなもやもやに向き合うべく北海道大学科学技術コミュニケーター養成プログラム(CoSTEP)本科を受講し、修了しました。現在では研修科に在籍し、ヒグマ出没問題をめぐった実践的な対策を実施しています。


・第131回サイエンス・カフェ札幌「採鉱学再考~1本のマイボトルが教えてくれる鉱山開発のいま~」ポスター制作(石田さんと共同制作)