なんと、湯崎の姉が生徒会の副会長であることが判明した。
そういえば、確か副会長の名前も『湯崎』だったよなぁ……。今まで何故気づかなかったんだろう。
「雨宮……慧君ですよね」
「あ、はい」
「花音がいつもすみません」
「え」
そう言うと、副会長は突然頭を下げた。どど、どうしたんですか、副会長! 俺、何か謝られることしましたっけ⁉︎
「どうしたの姉貴、突然?」
「あなたのことだから、いつも雨宮君をからかっているでしょう」
まさにその通りだった。その証拠に、湯崎がギクっとなっている。流石は姉妹、そういうこともエスパーできちゃうのか!
一方、姉ちゃんは副会長の妹が俺と一緒に放送しているとは知らなかったらしく、好奇心を覗かせている。
「へ〜、妹ちゃん、慧と一緒に放送していたのね」
「そうですよー」
「というか、放送中って、放送室はほぼ密室で二人っきりになるわよね? 何かハプニングとか起こらなかった? 例えば、秘密の関係になっちゃったりとか! でも、慧にはひかりちゃんというフィアンセがいるからイケナイ関係になるのはダメだぞ☆」
「やかましい」
「あうっ」
副会長がバシーンと姉ちゃんの頭を丸めたノートで引っ叩いた。完璧なタイミングでのツッコミであった。
そして、俺の隣の湯崎は姉ちゃんの猛攻に、あはは〜と若干引き気味の苦笑を浮かべていた。
「ところで、姉ちゃんは生徒会室で何を……?」
「んー? 明日の卒業式についての話をしていたのよ! 何せ、在校生代表として先輩方に素晴らしい式辞を読まなければならないから!」
「……どうせ、副会長先輩に添削してもらっていたんじゃないか?」
「な、なんでそれを……慧、もしかして生徒会室に忍び込んでた?」
「やっぱりな……」
姉ちゃん一人で素晴らしい式辞を書くなんてできっこないから、どうせしっかり者の副会長に見てもらっていたんじゃないかと思ったらその通りだった。
「副会長、うちの姉がいつも無茶苦茶ですみません……」
「いえ、もう慣れました」
「無茶苦茶⁉︎」
姉ちゃん、そんな驚くふりはやめてくれ。自分でも分かってるだろ。
しかし、ここで副会長が『でも、』と続ける。
「会長のカリスマはピカイチですよ。そうでなければここまでついてきませんよ」
「いいこと言ってくれるじゃな〜い!」
「…………」
姉ちゃんが副会長に抱きついている。百合百合しい……。そして、抱きつかれた副会長の表情が呆れを通り越して『無』になっている。
ここで、チャイムが鳴った。五時間目開始の五分前の予鈴。急がなければ授業に遅れてしまう。
俺たちは、それぞれの姉と別れて、それぞれの教室へ向かうのだった。