「それでは今年度の放送を終わります」
「この放送は、一年C組の雨宮と、一年D組の湯崎がお送りしました。一年間ありがとうございました」
マイクを切ると、肩の荷が一気に降りた気がした。
今日で、俺たちが担当するお昼の放送は最終回、そして、放送委員会全体でもお昼の放送は今年度最終回だ。最終回だからといって何か特別な出来事は起らず、当たり障りのない内容を放送して終了した。
肩の荷が降りたと感じたのは湯崎も同じようだった。はー、とため息をつくと、彼女は背もたれに寄りかかる。
「いやー、お疲れ様、雨宮」
「お疲れ様」
「それにしても、昨日は悔しかったー!」
「あー……接戦だったもんな」
「五十嵐ちゃんには勝ちたかった! バレーボール部として!」
「あいつはある種のチートみたいなものだからな」
相手が悪かったとしか言いようがない。もし五十嵐がいなかったら、確実に湯崎のクラスは勝利していただろう。
「それにしても」
すると、湯崎は一転してニヤニヤしながらこちらにズイっと身を乗り出してくる。俺は何か嫌な予感がした。
「雨宮は、『俺がこの試合に勝ったら付き合ってくれ!』みたいなことやってないの?」
「してない!」
めちゃくちゃベタなやつだなそれ! その発想は全く頭の中に無かった。
「え〜つまんないの」
「人の恋をコンテンツ化しないでくれ」
「いいじゃん別にー」
恋愛の虫はぶすっと膨れっ面になった。
そのまま昼食を食べ終わると、俺たちは片付けを終えて、同時に放送室を出る。
「お〜い、慧〜」
「姉ちゃん……」
すると、俺に声をかけてくる人物。声のする方を見ると、ちょうど姉ちゃんがこちらに小走りで向かってきていた。そして、姉ちゃんの後ろからは副会長が歩いてきた。
放送室と生徒会室は、同じ建物の同じフロアにある。二人の歩いてきた方向には生徒会室があるはずだから、二人で何か生徒会関連の打ち合わせでもしていたのだろう。
と、湯崎がここで予想外の発言をした。
「お、姉貴だ」
「花音……ここで何をしているの?」
それに、副会長が眉を少し上げて反応する。
んん⁉︎ 『姉貴』? 今、湯崎は副会長にそう言ったんだよな。俺の姉ちゃんである会長をそう呼ぶはずがない。まさか、副会長と湯崎って……。
「え、湯崎って……」
「あれ、雨宮には言ってなかったっけ? 私の姉貴、副生徒会長だよ」
「……どうも、花音がいつもお世話になっています」
副会長が俺に会釈をする。
ここにきて、意外な繋がりが発覚した。