「終わったわー……」
「腰が痛いー……」
アリスが機関銃を乱射して突入してきてから約四十分後。俺たち三人は廊下やリビングに散らかった大豆をようやく全て拾い集めた。もちろん、拾い集めた大豆は即ゴミ箱行きだ。あー、もったいない。
ふと、俺は廊下にへたり込んでいるアリスに尋ねる。
「そういえば、その機関銃どうやって手に入れたんだ? 日本ではこんなもの普通手に入らないぞ?」
「はぁ? アンタ馬鹿なの? こんなの創ったに決まっているじゃない!」
天使の力を使ったのか。んまあ、予想通りっちゃ予想通りだが。
それでも、まだ疑問は残る。
「だったら、何故わざわざ大豆を発射できるようにしたんだ? 鬼を倒すんだったら普通に機関銃の弾を詰めればよかったんじゃねえの?」
「え? 鬼を追っ払うには大豆が効くんでしょ? そんなのも知らないなんて、頭のネジがぶっ飛んでるんじゃないの?」
「いや節分に鬼が実在すると思って、機関銃を持って乗り込んで来るお前の方が頭のネジがぶっ飛んでると思うんですがねぇ!」
それにしても、機関銃にしては威力が弱かったなあ。それに、そもそも大豆を機関銃で発射できるとも思えない。大豆が詰まって爆発してしまうんじゃないか?
「あたしが機関銃の中の構造を知っているとでも思っているの?」
「……ビックリした。思考を読むなよ」
「あのねぇ、機関銃なんて外面だけよ。中は大豆が次々と発射されるように天使の力で調節しているだけよ」
なるほど、見た目は機関銃、中身は天使の力、ということなのか。
そんなことを言い合っていると、突然廊下にギュルルル~、となんとも間の抜けた音が響く。その音の主は顔を瞬時に赤くすると、素早く自分の腹を押さえた。
「べ、別に夕食を食べたけどまだ足りな」
「はいはいそうですかー早く大豆でも食っとけ」
「ちゃんと最後まで聞きなさいよ⁉」
アリスは俺にそう嚙みつきつつも、自身の三大欲求の一つには逆らえないのか、大豆を貰いにリビングへ向かう。
「片付け、終わったかしら?」
「は、はいぃ! 完了でございます、舞様!」
「よろしい。ではこの大豆を食べるのを許可する」
「ありがたき幸せ!」
お前ら何時代の人だよ……戦前の軍隊? それとも戦国時代?
ともかく、アリスはこうして無事(?)に大豆にありつけたのだった。
「いただきます!」
彼女はそう言うと、袋に手を交互に突っ込んで、猛烈な勢いで食べ始める。
そんなに食べてもいいのか? 明らかにオーバーすぎる気がする。
「なあ、アリス。節分ってのは、自分の年齢の数だけ豆を食べるんだが……」
「ならまだまだ余裕よ!」
え? まだまだ余裕?
既に百個以上食べているように見受けられるのだが。
つまり、それって……。
「慧、天使に年齢を聞くのは禁物だよ?」
「お、おう」
横から五十嵐がニコニコと咎めてきたので、俺はこれ以上考えるのを止めた。