え⁉ ちょっ⁉ まっ⁉
何か言葉を出す間もなく、金髪残念系ポンコツ天使アリスは機関銃を乱射してきた。
機関銃をどこで手に入れたんだ⁉ そもそも五十嵐は鬼に襲われていないぞ! とかツッコみたいことは一瞬で色々出てきた。だが、それをツッコむ間もなく、俺の人生はあとコンマゼロうん秒で銃弾に撃ち抜かれて終わる。
ああ……俺は結局天使に殺されるのか……。
そう思った直後、俺は機関銃に蜂の巣にされて、この十六年の短い人生を終えた。そして、神の取り計らいで異世界に勇者として転生し、苦難の末に魔王を倒して新国王となり、ハーレムを作って余生を遊んで暮らしたのだった……
……となるとでも思ったか⁉ 現実はそう甘くないし、異世界転生なんて起こるはずがない! そもそも俺は死ななかった!
「痛ぇ!」
アリスが機関銃を乱射し始めると同時に、俺の体のあちこちに痛みが走る。俺は咄嗟にアリスに背を向けて蹲った。それでも何発かはなおも背中に当たり、その度に痛みが走る。
……あれ? 俺、死んでないぞ?
普通ここまで機関銃で打たれたら、人って死ぬよな? じゃあ何故俺は死んでいないんだ?
すると、俺の視界の中に、向こう側から何かが転がってきたのが見えた。それは、コロコロと床を転がり、俺の目の前でピタリと止まった。思わずそれに手を伸ばして、拾い上げる。
「これは……大豆?」
俺の目の前に転がってきたのは、豆まき用の大豆だった。
もしかして、アリスが撃ってきている機関銃の弾丸って大豆……? だから俺は死なないのか……?
いやいや、大豆が機関銃の弾代わりになるわけがないだろう。見た感じあれは多分ガチの銃だと思う。そんなものに大豆が入るわけがない。
それに、五十嵐や姉ちゃんがばらまいた大豆が偶然こっちに転がってきているという可能性もある。
だが、その可能性を打ち消すように、大豆がこちらに転がってきた。しかも、一個ではない。二個も三個も。ダダダダという発射音に合わせて。
……マジでアリスは機関銃で大豆を撃ってきているのか⁉ しかし、そうとしか考えられない。
そんなことを考えている間にも、アリスは機関銃を連射しながら俺の脇を通り過ぎる。そして、彼女はいよいよ目的の五十嵐がいるリビングへと……。
「ひかり! 助けに来たよって……アレ?」
「アリス? どうしてここに……っていうか手に持っているのは何?」
「ええっ……? 鬼に襲われているんじゃないの……?」
「えっ?」
どうやら双方に認識の相違が生じているようだ。
などと冷静にリポートしてみるが、俺は内心ひやひやしていた。何故なら、この後、彼女に雷が落ちるのは確実だから……。
そして数秒後。俺の予測した通りの出来事が起きた。
ぎりっ、と歯ぎしりの音が、廊下からでも聞こえた。
「アリスちゃん……貴女は、どうして私の家をぶっ壊しに来たのかしら……?」
「ひ、ひいっ!」
そして、雷が落ちた。