……RPGの中ボスっぽい台詞を吐きながら、水無瀬は俺たちの前に立ちはだかった。
あ、もしかして『始まりの街を抜ける時に金を巻き上げようとして立ちふさがって来る兵士』だったか?
いやいや、そんなことはどうでもいい。
問題は、水無瀬の行動だ。
「おいおい、何故そんなことをするんだ? もしかしてこの先には土砂崩れがあるとか?」
「そそそ、そうなのだ! だから通行止めになっている! 行っても無駄だ!」
いやいや、ダウトだろ。車道には車が走っているし、そもそも向こう側には崖なんてありゃしない。それに、通行止めだったら水無瀬はどうやってその道を通ってきたのか、という話になる。
「んなわけねえだろ。じゃ今度こそ俺たちは行くからな」
そう言って、俺は水無瀬の横を通り過ぎようとすると。
「だから、ここは通さぬ!」
俊敏にも、俺の前に立ちふさがってきた。
素早く右にずれるも、彼女は全く同じ動きで俺の前に立ちふさがってくる。
ならば……フェイントをかけるまで!
俺は一瞬左に行くふりをすると、その直後に素早くまた右横をすり抜けようとする。
だが、水無瀬はこのフェイントにも難なくついてきていた。水無瀬って、そんなに運動神経よかったっけな……?
その動きを何度か繰り返しているうちに、不意に水無瀬がポケットから素早く折り畳まれたチラシを取り出す。
「そういえば、今日近所の総合スーパーで、牛肉のサンキュッパセールをしているのだ!」
「マジで⁉」
「今すぐ買いに行け! さもなくば無くなってしまうぞ!」
「ああ、そうだな! ……って引っかかるか!」
いや、後で行くけどさ。
水無瀬はチッと小さく舌打ちをすると、今度は俺の頭上を指して。
「おお、あんなところにUFOが!」
「マジ⁉ ってそんな手に乗るか!」
ずいぶん古典的な方法を使ってきたな……。
このままだと埒が明かない。俺は一旦動きを止めて、改めて水無瀬に問う。
「なあ、水無瀬。いったい何をしたいんだ? 俺たちに何か恨みでもあるのか?」
「……そういう訳では」
「じゃあ、何故邪魔するんだよ?」
冷静に聞いたつもりだが、ちょっとイライラして、思わず口調を強めてしまった。水無瀬はその圧力に押されたのか、一歩後ろに下がる。
「それは……」
水無瀬は俯いて小さな声を漏らす。それ以上の言葉は、何かを迷っているようで出てこなかった。
言いたいのに言えない、そんな葛藤があるように見える。
……それに、どうして水無瀬は、そんなに泣きそうな顔をしているんだ。
いったい何なんだ! 苛立ちが募っていくのを感じる。水無瀬のはっきりしない態度に、だけではない。俺の知らないところで、俺に関わることをコソコソとされているような、当事者なのに関われない、そんな疎外感みたいなものを感じる。
思わず、水無瀬に改めて強く問い詰めようとして、口を開いた、その時だった。
「ううっ……」
「だ、大丈夫か⁉」
俺の傍らで、突然五十嵐がよろけてドサッと膝をついた。