「「「「ごちそうさまでした」」」」
数分後、食卓の上に賑やかな言葉が飛び交ったまま俺たちは昼食を食べ終わる。
そして、姉ちゃんは仕切り直すようにゴホンと咳をすると。
「それで真面目な話、ちゃんと散らかした責任は取ってもらうから」
「はぁ⁉ 何故あたしむぐっ!」
五十嵐はパンッとツンデレ口上を言おうとしたミカエルの口を塞ぐと、強張った笑みを浮かべながら。
「もちろんです! わたしと彼女が責任を持って片付けます!」
「そう、ならいいわ」
そして、五十嵐はちょっとすみません、と俺たちに背を向けて何やらミカエルと二人でコソコソと話す。素早く片付けるための相談でもしているのだろうか……?
数秒の後、ミカエルだけがこっちを振り向く。
「ちょっと眠らせてしまうわね」
そう言ったミカエルの眼は、金色に輝いていた。いつぞやの五十嵐の時みたいに。
もうこれでミカエルが天使だということは確定だな。
「うん……? ふぁぁああぁぁ……ZZZ」
そして姉ちゃんは一瞬で眠りについた。某の●太くん並みの速さですね。姉ちゃん、睡眠オリンピックに出たら準決勝くらいまで進出できそうだ。
俺も、もうじき眠くなるはず……。
「よし、これでいいのよね、セラフィリ?」
「うん。ありがとう、ミカエル」
……あれ? 俺を眠らせなくてもいいのか?
「そんなに眠らせて欲しいのなら眠らせてあげるわよこのドM」
「ぐふっ」
どうやら口に出していたみたいだ。いや、天使の力を使って心を読んだのか。
それにしても、本当に口悪いな、この天使ミカエルとやら。
「ミカエルと気安く呼ばないでくれる? 呼ぶならミシェーレと呼びなさい……。どうしてもって言うなら、アリスでも良いけど」
「じゃあアリス」
「即決なのねっ!」
おっと、ツッコミとボケが逆転していますよ、アリスさん?
ミカエル……もといアリスは、ゴホンと咳ばらいをすると、俺をビシッと指さす。
「と、とにかく、あたしの正体についてはバラさないこと! 普通なら催眠をかけて忘れさせるところだけど、セラフィリに関して黙っているのもあるし、特別にかけないでおいてあげるわ。いい? あんたは特別なんだからねっ! 少しでも変なマネをしたらこのナイフでぎったぎたにしてやるんだから!」
「わわ、分かったからナイフをしまおうか……」
言ってる内容が物騒だな! しかもまだあのナイフを持っていたのかよ! いい加減消してくれ……。
それにしても、と言葉を続けて俺はリビングを見回す。
「この惨状をどうやって元に戻すんだ? 割れちゃった小物とか皿とかあるが……」
「え? そんなのあたしの手にかかればちょちょいのちょいよ。見てなさい!」
アリスは自信満々に言い切ると、再び眼を金色に輝かせ始める。
その輝きは今度は際限なく強まっていき、我が家のリビング中を、そして俺の視界をも完全な白に染めあげた――。